CES2026 DAY2 South Hall / West Hall
― 見えたのは、未来像ではなく、現実的な生存戦略でした ―

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※本稿は、公式発表や統計データを整理したレポートではありません。
私自身が、2年に一度、10年にわたりCESを現場で見続けてきた中で、
DAY2(South Hall / West Hall)を歩きながら感じた、個人的な違和感や気づきを整理したものです。
結論は、あくまで私自身の視座からの所感です。

■DAY2:South Hall / West Hall

― 勝ちに行く展示ではなく、「生き残る」を設計する展示が並んでいました ―

DAY1では、Central / North Hallを回り、

各国・各社の「必死さ」が、これでもかというほど可視化されていました。

DAY2で回ったSouth HallとWest Hallでは、空気が少し違っていました。

ここで見えたのは、勝ちに行くための展示ではなく、生き残るための分岐と横断の設計です。

■South Hallは、正直かなり雑多でした

まず率直に書いておきます。

South Hallは、正直かなり雑多でした。

完成度の高い展示や、これは取るべきだと感じるものは、

現時点では多くありませんでした。

ただ、その雑多さ自体が、このエリアがまだ淘汰前であることを示しているようにも感じました。

アイデア、試行錯誤、方向性が定まりきっていない技術。

South Hallは、何かを掴む場所というより、まだ何も定まっていないことを確認する場所だった、という印象です。

 

もう一つ、South Hallで気になったのは、開場時間である9時の時点で、

ブースの展示準備だけでなく、そもそも担当者がまだ来ていないブースが少なくなかったことです。

印象としては、その多くが中国企業でした。

一方で、韓国企業のブースは、開場と同時に担当者が立ち、すでに来場者を迎えられる状態が整っていました。

私が言いたいのは、優劣の話ではありません。

South Hallに並んでいた技術や事業が、まだ試行錯誤のフェーズにあることを示すと同時に、

展示会という場に対する「勝ち方の思想」の違いが、行動レベルで表れていたように感じました。

 

中国企業は、

「人が集まる時間帯で勝てばいい」

「まず反応を見てから動く」 という効率重視の戦い方を選んでいるように見えました。

一方で韓国企業は、開場の一瞬目から信用を取りに行く

初動完成度重視の戦い方を取っているように感じました。

どう勝つかという視点で、文化や思想の違いが表れている点は、個人的にも大きな学びでした。

■中国企業が「カンボジア工場」を持つ理由

DAY2で気になったのは、中国企業のいくつかが、

カンボジア工場や東南アジアの存在を明示していたことです。

一見すると、単なる生産拠点分散に見えます。

しかし、これはコストの話だけではありません。

・原産地リスクの分散
・地政学的リスクへの備え
・中国一国に依存しない量産構造

 

中国企業は、生産国そのものを分散させるフェーズに入っています。

国籍で勝負するのではなく、構造で生き残る。

その冷静さと必死さが、ここにも表れていました。

■PETロボットが増えている理由

DAY2では、PETロボット(ペット型ロボット)が明らかに増えていました。

これは娯楽ではありません。

感情AIの実証実験場だと感じました。

・人型より心理的ハードルが低い
・失敗が許される
・「目」「音」「距離感」のテストができる

DAY1で書いた、

「次は、目(表情)が重要になる」という感覚は、ここで確信に変わりました。

人と共存するロボットは、まずペットから始まる。

これは合理的な順序です。(もっと合理的な方法はありますが、あまり書けない内容なので割愛します)

■AIグラスが多すぎるという違和感

AIグラスは、正直に言って、多すぎました

どのブースも、

・似た形 ・似た機能 ・似たコンセプト、差が分からないレベルまで来ています。

これは失敗ではありません。

全員が、スマートフォンの次を同時に探している状態です。

2000年代後半のスマートフォン黎明期と、

非常によく似ています。

生き残るのは、ほんの一部でしょう。

その中で、XREAL社のスマートグラスは、一段上の段階に感じ、買おうと思いました。

■リチウムイオン電池は、もう「やってもしょうがない」領域に入っています

ポータブル電源、電池関連の展示も、DAY2では山のようにありました。

しかし、見た目からは、技術差はほとんど見えません。

これは技術の問題ではなく、供給過剰フェーズに入った産業構造の問題です。

この領域では、技術者が勝つのではなく、調達・価格・物流・ブランドが勝敗を分けます。

材料・部品メーカーにとっては、最も疲弊しやすいフェーズだと感じました。

■かつてのタッチパネルメーカーは、全く違うことをしていました

DAY2で印象的だったのは、昔、一世を風靡したタッチパネルメーカー数社が、まったく別の事業にシフトしていたことです。

技術は残っています。

しかし、用途を変えています。

生き残る企業は、技術を捨てず、市場を捨てる

これは、日本企業にとっても、極めて重要なヒントだと思います。

■Comma.aiが気になった理由

DAY2で、個人的に最も引っかかったのが、Comma.aiでした。

彼らは、車を作りません。
しかし、運転体験の中枢を取りに来ています。

完成品ではなく、体験のOSを握りにいく。

夢の自動運転ではなく、今、使える運転支援に全振りする。

これは、国家やOEMが設計した枠組みの中で動く時代ではなく、企業が自ら市場を定義し、主導権を握る未来を、静かに示しているように見えました。

■中国企業は、「軽自動車」に手を出すフェーズに入っているように見えました

South Hallの展示を見ていて、もう一つ気になった点があります。

それは、中国企業の一部が、軽自動車という領域に足を踏み入れ始めているように見えたことです。

具体的には、Geelyの展示において、動画ベースではありますが、ポップな軽自動車のコンセプトモデルが紹介されていました。

重要なのは、それが「すぐ日本市場を取りに来る」という話ではない、という点です。

むしろ私には、

・小型 ・低価格 ・都市向け ・量産前提 

といった条件が揃う軽自動車というフォーマットが、中国企業にとって「次に踏み込むべき実験場」になりつつあるように見えました。

 

日本市場を本気で狙っている、というよりも、このサイズ・この価格帯・この制約条件で、どこまで作れるかを試しに来ている。

そんな印象です。

軽自動車は、日本独自の規格でありながら、

・安全 ・耐久 ・コスト ・量産設計

すべてが詰め込まれた、極めて難易度の高い領域です。

 

中国企業がここに触れ始めたという事実は、次は、より制約の厳しい領域に踏み込むという意思表示にも見えました。

日本は、市場というよりも、技術と設計思想が通用するかどうかを試す、ひとつの基準点になりつつあるのかもしれません。

■Shared Mobilityという区分けの発想

DAY2で、もう一つ強く印象に残ったのが、PLIYT社のShared Mobilityの考え方です。

彼らが提示していたのは、乗り物ではなく、移動という時間と行動の再設計でした。

・夕方まで仕事をして
・そのまま自動運転で遠隔地へ移動する
・移動中に働き、休み、回復する

この発想が進めば、出張の概念は変わります。(すみません、出張が多いもので。。。)

極端な話、

・安い宿泊地域へ自動誘導する
・そもそもホテルという前提がなくなる

そんな未来すら、現実味を帯びてきます。

モビリティは、都市設計や働き方にまで波及しますが、構想次第でビジネス構造の根本が変わる可能性を感じました。

■形があるものは、やはりコピーされます

DAY2を通して、改めて確信したことがあります。

形があるものは、必ずコピーされます。

だからこそ、

最後に残るのは、
・品質保証

・再現性

・量産責任 ここしかありません。

■電気バイクが、想像以上に多く出ていました

もう一つ、DAY2で強く印象に残ったのが、電気バイク(EV二輪)の出展が非常に多かったことです。

完成度はまちまちですが、

・車体 ・バッテリー・制御 ・価格帯

いずれも実装フェーズに入っているものが多く、単なるコンセプト展示ではありませんでした。

これを見て感じたのは、新興国の二輪市場は、一気にこちらへ振り切れる可能性が高いということです。

 

四輪EVは、

・価格 ・インフラ ・充電時間 ・メンテナンス といった課題がまだ多く残っています。

一方で二輪は、

・価格が低い ・バッテリー容量が小さい ・インフラ要件が軽い ・都市部との相性が良い

EV化における障壁が、圧倒的に低い。

 

特に、新興国における

・通勤

・配達

・短距離移動 という用途を考えると、

ガソリン二輪から電気二輪への移行は、想像以上に早く進む気がしています。

 

これは環境意識の話ではありません。合理性の話です。

South Hallに電気バイクが多かったこと自体が、

次に一気に切り替わる市場は、ここだという無言のメッセージのようにも見えました。

■DAY2のまとめ

DAY1では、必死な国ほど、すべてを並べる姿が見えました。

DAY2では、必死だからこそ、横断し、分岐し、逃げ道を設計する姿が見えました。

一本足で立っている企業は、ほとんどありません。

 

CESは、もはや未来を語る場所ではなく、どこまで現実に責任を持てるかを試される場所になっています。

ここまで読むと、評論家の文章のように見えるかもしれません。

ただし、これらはすべて、OTIS社内では実務に落とし込み、行動に変えていくのが、私の役割です。

 

DAY3では、Venetianを中心に回る予定です。また、書きます。

 

 

オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.

角本康司

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