■昔のCESは違ったのか?
こうした総括を書くと、昔は違ったのか?という問いが来ると思います。
答えは、半分YES、半分NOです。
展示会は、昔から未来を当てる場所ではありませんでした。
ただ、かつては、
・技術の可能性が広く分岐していた
・どの道に進むかが、まだ決まっていなかった
・小さな企業でも、次の波に飛び乗れる余地があった
そういう時代でした。
しかし今は違います。
技術は成熟し、市場は収束し、資本は動き終え、人も配置され、撤退しない前提で構造が組まれています。
CES2026は、何が来るかではなく、何に賭け終わったかを確認する場所でした。
■展示会に未来が見えないのは、当たり前なのか?
分かっている人からすれば、展示会に未来は見えないのは当たり前だろと言われると思います。
それは、正しいです。
しかし、重要なのはそこではありません。
なぜ見えなくなったのか。
何が変わったのか。
そして、それでも、なぜ展示会に行く必要があるのか。
■海外展示会=情報収集、という最大の勘違い
ここで、日本企業が最も誤解している点を、はっきり書きます。
海外展示会は、情報収集の場ではありません。
海外展示会でやっているのは、
・勝ち馬探し
・トレンド探し
・次に来そうな技術探しではありません。
すでに賭け終わった市場を確認する場です。
展示会で、これは来そうだと言っている時点で、その市場は、もう遅い。
新聞、ニュースに掲載される前の情報を、部品・素材に関わる人は価値があると呼びます。
■では、何を見に行っているのか
経営者が展示会で見ているのは、非常にシンプルです。
廃棄と集中が、正しく行われているかの確認。
これだけです。
・どの技術が、静かに捨てられたか
・どの市場が、もう広がらないと判断されたか
・どこに人と設備と金が、戻れない形で集中しているか
展示会は、意思決定の答え合わせの場になっています。
これは意思決定者クラスの話で、全員がそうではありませんので。
■各国の現在地
中国
点ではなく、面で取りに来ています。
止まれない構造を、最初から作っています。
市場があれば、総力で押さえに来る。
一社ではなく、100社で攻めてきます。
韓国
教育 × 投資 × 英語 × 事業。
これを10年前に決断し、同時にやってきました。
英語ができる、ではありません。
事業を英語でやる人材が、すでに前提になっています。
欧州
思想としての自動化です。やるかどうかではなく、やる前提。
産業革命を起こした国らしい、一貫性を感じます。
米国
場を作り、選別し、支配します。
自分で作るより、誰を勝たせるかを決める側に立ち続けています。
■日本は、遅れているのか?
私は、日本は遅れているとは思っていません。
決めていないだけだと思っています。
・廃棄を決めない
・集中を宣言しない
・両立しようとする
その結果、廃棄も集中も、中途半端になります。
それをこの数年間、大企業は対策をしてきたと思っています。
■日本企業(我々のような製造業はどうするべきでしょうか?)
技術はあります。
精度も品質も、世界トップクラスです。
しかし、責任を取っていません。
部品を作る。材料を供給する。
それ自体が悪いわけではありません。
ただし、部品屋でいる限り、必ず下請けになります。
精度や品質は、武器ではありません。
入場券・参加証です。
世界はすでに、
・再現性
・量産責任
・撤退基準
この3点で、企業を選別しています。
■海外展示会に行ったことが無い人が多い理由の正体
「まだ早い」「言葉が不安」「成果が見えない」
そう言って、社員や若手を連れて行かない。
そもそも自分から行きたいという人がいない。
しかし本当は、圧倒的な差を見せたくない、見たくないだけはないでしょうか。
海外展示会で得るべきものは、情報ではありません。
危機感です。負けていられない、という感情や肌感覚だと思います。
黒船が来た時、やばいと思ったのは、目で見て驚いたからです。
だから、何をしようと本気で考え、まずは海外視察へ繰り出したのではないでしょうか。
■じゃあ、未来はどこで見るのか?
展示会ではありません。
・展示会に出る前の技術
・新聞に載る前の動き
・発表される前の相談
部品・材料に関わる会社が目指すべきは、常にそこです。
展示会は、もう結果発表の場です。
■CES2026 総括の結論
CES2026で見えたのは、決断し、捨て、集中し、その責任を引き受けた企業だけが立っている世界でした。
10年後、日本の製造業は、どこで戦っているのか。
誰が、何を捨てる決断をするのか。
そして、決めないまま、残れるのか。
この問いだけを、ここに残しておきたいと思います。
これって、誰かが考えてくれるだろうではなく、自分で考え続けるしかなく、時代変わらず、苦しみながら考えた人だけが越えられるものと思います。
皆さんが期待するCES2026の総括ではないと思いますが、誰か1人でも刺激になれば十分と思い、CESという場を使い、総括にしました。
さて、うちの会社で、自ら動き出す人は、いったい誰なんだろう。それが楽しみです。
オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.
角本康司
