でも、私は別の理由もあると思っています。
加工技術の価値が、正しく評価されていない、ということです。
最近、当社にも新しい加工先を探したいという相談が増えています。
理由を聞くと、「BCP対策です」「供給先を増やしたいからです」と言われます。
もちろん、それも本当でしょう。
ただ、お話を聞いていると、「今の加工先は、この先も安定して供給を続けられるのだろうか。」
そんな言葉にならない不安を感じる場面が、以前より増えてきたように思います。
日本の製造業は長い間、「良いものを、より安く」を追い求めてきました。
もちろん、それも競争力です。
しかし、その結果、本当に必要な技術まで価格競争に巻き込まれてしまいました。
加工メーカーは、毎年のように値下げを求められる。
設備投資も、人材育成も難しくなる。
利益が残らない。
そして、ある日、廃業する。
その時になって初めて、
「あの会社しかできなかった。」そんな声を聞くことがあります。
でも、その時には、もう遅い。
加工技術は、一日では育ちません。
十年、二十年という経験の積み重ねです。
職人も、設備も、一度失えば簡単には戻りません。
私は、この流れは日本に急速に広がると思っています。
だからこそ、価格だけではなく、「残すべき技術は何か」を考える時代に入ったのではないでしょうか。
もちろん、企業には利益を追求する責任があります。
調達部門にはコストを下げる使命があります。
それも理解しています。
しかし、それだけでは、日本のものづくり全体は弱くなってしまいます。
本当に比較すべきなのは、「今年の価格」ではありません。
五年後、十年後も、その技術を使い続けられるか。
そこまで含めて考えることが、これからの調達であり、経営だと思います。
日本のものづくりは、製品だけでできているのではありません。
数え切れない加工メーカーの技術が積み重なってできています。
その土台が失われれば、最後に困るのは、日本の製造業そのものです。
価格は大切です。
でも、それ以上に大切なものもあります。
加工メーカーは、部品をつくっているのではありません。
日本のものづくりの未来を支えているのです。
日本では「コスト」として見られていた技術が、
海外では「資産」として評価される。
この違いを、私たちはもっと真剣に考えた方がいいのかもしれません。
私も家庭では邪魔、鬱陶しいと言われることがあります。
しかし、外では、たまに評価されます。
価値というものは、近くにありすぎると、見えにくくなるのかもしれません。
オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.
角本康司
