第127話:いつの間にかやめたこと

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小学生の頃、大好きだった食べ方がある。

トーストをコーヒー牛乳に浸して食べる。
 
焼いたパンを、甘めのコーヒー牛乳に少し浸す。
外はまだ少しカリッとしていて、中はコーヒー牛乳を吸って甘くなる。

これが私は大好きだった。

 

何度も食べた記憶がある。そして、食べ物で遊ぶなと怒られた記憶も。

 

ふと気づいたら、小学生の頃を最後に、一度もやっていない。

 

そもそも嫌いになった記憶もない。

誰かに、やめなさい!と言われた記憶もない。

最後に食べた日の記憶もない。

 

ただ、いつの間にかやらなくなった。

 

考えてみると、人生にはこういうことが結構あるのかもしれない。

 

あんなに好きだったのに、最後の日を知らない。

 

子どもの頃、最後に公園で遊んだ日。

最後に親と手をつないだ日。

子どもが一緒に遊ぼうと言ってきた最後の日。

 

最後にランドセルを背負った日は卒業式だと分かるけど、

最後にランドセルを放り投げて遊びに行った日は分からない。

 

書いていて、切なくなってきた。それだけ大事なんだけど、当たり前だと思っていたのだろう。

またどうせやると思っていたのだろう。

 

大人になるというのは、今日から大人になります、と何かをやめることではなく、

最後だったことに気づかないまま、少しずつ何かをしなくなっていくことなのかもしれない。

 

トーストをコーヒー牛乳に浸して食べる。

約40年ぶりに、やってみようと思う。

 

もし今でもおいしかったら、、、私は、40年間、何をしていたのだろう。

急に勿体ない時間の過ごし方をしていた気がしてきた。

 

オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.

角本康司

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