ただ、海外のお客様から研究開発の相談を受けていると、少し似た感覚になることがあります。
海外のお客様は、
「この技術には可能性がある。」
そう判断すれば、まだ形になっていない段階でも、短期間でまとまった研究開発費を投じます。
成功するかどうかは分からない。
量産になるかどうかも分からない。
それでも、未来をつくるためには、まず挑戦しなければ始まらない。
だから、最初の一歩に投資をする。
それが日本では、初回試作の段階から価格の話になることが少なくありません。
まだ一度も加工したことがない。
加工条件も決まっていない。
材料の相性も分からない。
何回やり直すかも分からない。
それでも、
「もう少し安くなりませんか。」
「試作なので、もう少し…。」
そんな話から始まることがあります。
私は少し不思議に思います。
試作だから安いのではありません。
試作だからこそ、分からないことが多い。
試作だからこそ、人が考え、設備を空け、材料を手配し、失敗のリスクも負っています。
製造業では、量産品を1,000個つくるより、初めての1個をつくる方が難しいことも珍しくありません。
もちろん、コスト意識は大切です。
しかし、未来を生み出す最初の挑戦まで、価格だけで評価してしまえば、新しい技術は育ちにくくなります。
大リーグの球団は、今日の一試合のためだけに契約金を払っているわけではありません。
その選手が将来生み出す勝利や価値に投資しています。
研究開発も、本来は同じではないでしょうか。
本当に見るべきなのは、最初の試作費ではなく、その先に生まれる価値です。
海外のお客様から大きな研究開発案件を受けるたびに、
日本も初回試作を「買い物」ではなく、「未来への投資」として考える機会が増えたらいいのにと思います。
ただ、ここまで書いて、一つ気になりました。
私は、仕入先や協力会社に対して、同じことをしていないだろうか。
数万円を惜しみながら、その先に大きな成果だけを求めていないだろうか。
人のことは、よく見えます。
自分のことは、だいたい見えません。
未来への挑戦には、未来への値段があります。
まずは私自身が、その価値を正しく評価できる経営者であり、人でありたいと思います。
そんなことを偉そうに書いていますが、先日、大丈夫だろうと傘を持たずに家を出た結果、
コンビニで700円のビニール傘を買うことになりました。
目先をケチった結果、余計に高くつく。
どうやら、私はまだ未来への投資を勉強中のようです。
反省。
オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.
角本康司
