それは、技術や品質を追求していない顧客を、こちらから必死に追いかけても意味がないということです。
これは顧客を否定しているわけではありません。むしろ、産業構造を見ていると自然にたどり着く結論でした。
■ 技術を追求しない会社は、最終的に価格でしか判断しない
技術を追求している会社は、部品や材料を見るときに
● なぜこの設計なのか
● なぜこの公差なのか
● なぜこの工程なのか という理由で、我々を見ています。
つまり、価値で判断されているということです。
一方で、技術や品質を追求していない会社はどうなるか。
最終的に判断基準は一つになります。価格です。
すると、サプライヤー選定の基準も
● 一番安い会社
● とりあえず作れる会社になってしまいます。
そしてこの世界では、必ずもっと安い会社が現れます。
■ 価格だけの市場は、必ず消耗戦になる。
価格でしか選ばれない市場では、
● 技術投資は削られ
● 品質投資も削られ
● 人材も育たない というサイクルに入ります。
これは顧客側も、サプライヤー側も同じです。
その結果どうなるか。
製品は進化せず、企業の競争力も上がらず、最終的には市場そのものから退場していきます。
世界の産業を見ていると、この流れはとてもシンプルです。
全部このパターンの気さえしています。
■ 技術を追求する顧客と仕事をすると、世界が変わる
逆に、技術を本気で追求している顧客と仕事をすると、状況はまったく違います。
その会社は、
● なぜこの材料なのか
● なぜこの精度なのか
● なぜこの工程なのか という議論をします。
つまり、もっと良い製品を作るための議論になります。
するとサプライヤーも自然と、
● 技術を磨き
● 品質を上げ
● 新しい提案をする という関係になります。
この関係の中では、価格はもちろん重要ですが、価格だけで決まることはありません。
■ 営業は「どこで戦うか」を決める仕事
営業というと、「どれだけ顧客を増やすか」と思われがちですが、実際には違います。
本当に重要なのは、どこで戦うかを決めることです。
● 技術を必要としている顧客なのか
● 品質を大事にしている顧客なのか
● 未来の製品を作ろうとしている顧客なのか
この見極めを間違えると、どれだけ努力しても消耗戦から抜け出せません。
■ 顧客も、サプライヤーも、同じ船に乗っている
ものづくりの世界では、顧客とサプライヤーは同じ船に乗っています。
顧客が技術を追求していれば、サプライヤーも進化します。
顧客が価格しか見ていなければ、サプライヤーも疲弊します。
だからこそ、どの船に乗るかの判断はとても重要です。
疲弊するのがわかっているのに、価格しか見ていない顧客を追うのは、
少し厳しい言い方をすれば、戦略としては合理的ではありません。
■ サプライヤーがついてこない顧客は避ける
もう一つ重要な視点があります。
それは、サプライヤーがついてこない顧客は、長く続かないということです。
ものづくりは、一社だけで完成するものではありません。
・材料メーカー ・加工メーカー・設備メーカー・部品メーカー
こうしたサプライチェーン全体が一緒に進化していくことで、製品は進化します。
しかし、
・無理な価格要求
・技術議論ができない
・一方的な品質要求
こうした環境では、優秀なサプライヤーほど離れていきます。
そして残るのは、安さだけの関係です。
この状態になると、製品の進化は止まり、最終的には市場競争に勝てなくなります。
日本では、このパターンで
・廃業、事業再編、売却に至る会社を、私は何度も見てきました。
そして振り返ると、そこには必ず予兆がありました。
さらに悪いケースでは、最後にはコンプライアンスさえ怪しくなっていくこともあります。
顧客であっても、何度か注意させてもらったことがあります。
しかし改善されない場合、私は退却を判断しました。
そして、その後どうなったか。
残念ながら、そういう船はすべて沈んでいきました。
■ 最後に
技術や品質を追求していない顧客を無理に追いかける必要はありません。
むしろ、技術を必要としている顧客と出会うこと。そこに集中すべきです。
その顧客と一緒に次の製品を作ること。
そこにこそ、ものづくりの面白さがあります。
そして、その積み重ねが会社の未来を作っていくと思います。
ものづくり企業として、面白い方を選択していきましょう。
オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.
角本康司
