TECH COLUMN 技術コラム

3. 半導体デバイスの基本構造と動作原理
3-3. バイポーラトランジスタ(BJT)

材料・加工技術

公開日:

【1】はじめに

トランジスタは、現代電子機器の中核をなす能動素子です。
その中でもBJT(Bipolar Junction Transistor)は、
「小さな電流で大きな電流を制御できる」増幅素子として発展しました。

BJTは、音声アンプ、電源制御、信号処理など、アナログ領域で今なお広く使用されています。
名前の「バイポーラ」は、電子(−)と正孔(+)の両方をキャリアとして利用することを意味します。

【2】基本構造

BJTには主に2つの構造があります。
・NPN型:N−P−Nの順に層が並ぶ構造。
・PNP型:P−N−Pの順に層が並ぶ構造。

それぞれに3つの端子が存在します。
・エミッタ(Emitter):キャリアを供給する端子。
・ベース(Base):電流を制御する端子。
・コレクタ(Collector):電流を受け取る端子。


電流は「エミッタ → コレクタ」方向に流れ、ベースが蛇口の役割を果たします。

【3】動作原理(NPN型の例)

1.ベースにわずかな電流を流す(ベース電流)。

2.ベース−エミッタ間のPN接合が順方向に導通する。

3.エミッタからベースに多数の電子が注入される。

4.そのほとんどがベースを通過してコレクタへ到達。


結果として、ベース電流の約100倍に相当するコレクタ電流が流れます。
この「小電流で大電流を制御する」性質が、増幅の基本です。

【4】基本動作領域

BJTの動作は、印加電圧によって以下の3領域に分かれます。

・ カットオフ領域:ベース電流が流れず、トランジスタはOFF(電流が流れない)。
・ アクティブ領域:ベース電流が制御可能で、増幅動作を行う。
・ 飽和領域:ベース電流が過剰で、コレクタ−エミッタ間が導通(スイッチON状態)。


アナログ回路ではアクティブ領域を、デジタル回路ではカットオフと飽和を主に利用します。

【5】電流増幅率(hFEまたはβ)

BJTの性能を表す代表的な指標が「電流増幅率(β)」です。
これは次の式で定義されます。

 β = コレクタ電流(Ic) ÷ ベース電流(Ib)


たとえば、β=100の場合、ベース電流1mAでコレクタ電流100mAを制御できます。

【6】スイッチとしての利用

BJTは、信号のON/OFF制御にも利用されます。
・ ベースに電流が流れない → カットオフ(OFF)
・ ベースに電流を流す → 飽和(ON)


この動作を利用して、リレー駆動やマイコン出力の制御など、電子スイッチとして活用されます。

【7】熱暴走と安定化

BJTは温度上昇によってコレクタ電流が増加する性質を持っています。
これを放置するとさらに発熱し、最終的に破壊に至る「熱暴走」が起こります。

そのため、回路設計では以下のような対策がとられます。
・ エミッタ抵抗を挿入し、負帰還をかけて安定化する。
・ 放熱板(ヒートシンク)で温度上昇を抑制。
・ 温度補償回路を設けて電流増加を抑える。

【8】PNP型との違い

NPN型とPNP型の動作原理はほぼ同じですが、
電圧極性とキャリアの方向が逆になります。

・NPN型:電子が主キャリアで、プラス電源を基準に動作。
・PNP型:正孔が主キャリアで、マイナス電源を基準に動作。


現在の電子回路では、NPN型が主流です。

【9】BJTの代表的な用途

・音声や電波の増幅回路(アンプ)
・モータやリレーの駆動制御
・スイッチング電源やインバータ
・センサー信号の増幅
・トランジスタロジック回路(TTL)


BJTは古典的な素子でありながら、精密アナログ制御や高電流用途で今も活躍しています。

【10】まとめ

・ BJTは「小電流で大電流を制御」する代表的な増幅素子。
・ ベース電流がコレクタ電流を決定し、電流増幅を実現する。
・ 主な動作領域は、カットオフ・アクティブ・飽和の3つ。
・ スイッチング・増幅ともに多用途で、電子回路の基本構成要素である。

【理解チェック】

1.BJTの「バイポーラ」とは何を意味するか?

2.電流増幅率(β)とはどのような指標か?

3.BJTの主な動作領域を3つ挙げよ。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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