【1】はじめに
メモリ(Memory)とは、情報を一時的または永続的に保持する半導体デバイスです。
CPUが「頭脳」なら、メモリは「記憶装置」。
どんなに高性能なプロセッサでも、メモリが遅ければ処理は止まります。
【2】メモリの分類(揮発性/不揮発性)
メモリは、電源を切ったときに情報が残るかどうかで大きく2つに分かれます。
● 揮発性メモリ(Volatile Memory)
→ 電源を切るとデータが消える。高速で主記憶に使われる。
例:DRAM、SRAM
● 不揮発性メモリ(Non-Volatile Memory)
→ 電源を切ってもデータが保持される。
例:フラッシュメモリ(NAND/NOR)、ROM、EEPROM
【3】SRAM(Static RAM)の構造と特徴
・6個のトランジスタ(4個のMOS+2個のアクセスMOS)で1ビットを構成。
・電荷を保持し続けるため、リフレッシュ(再書込み)が不要。
・動作が速く、キャッシュメモリなどに使用される。
・欠点:セル面積が大きく、高コスト。
用途:CPU内キャッシュ、FPGA内バッファ、GPU内部レジスタ。
【4】DRAM(Dynamic RAM)の構造と特徴
・1個のトランジスタ+1個のキャパシタ(コンデンサ)で1ビットを構成。
・電荷の漏れにより情報が消えるため、定期的なリフレッシュが必要。
・高密度で大容量化が容易。
・SRAMより遅いが、低コストでメインメモリに最適。
用途:PC・スマートフォンのメインメモリ、サーバー用DIMM。
【5】ROM(Read Only Memory)
・製造時に内容を書き込む「読み出し専用」メモリ。
・プログラムやファームウェアを格納する用途に使用。
・一度書き込むと変更できないが、高い信頼性を持つ。
種類:
● Mask ROM:製造工程で内容を固定。
● PROM:ユーザーが1回だけ書き込み可能。
【6】EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)
・電気的にデータを消去・再書込みできるROM。
・フラッシュメモリの原型となる技術。
・データ保持期間が長く、消去耐性も高い。
用途:マイコンの設定保存、ICカード、センサー補正値記録。
【7】フラッシュメモリ(Flash Memory)
フラッシュメモリは、不揮発性メモリの中でも特に重要な存在です。
データを電気的に書き換え可能で、大容量・低消費電力・低コストが特長。
構造:
・フローティングゲート型MOSFETを使用。
・電子をゲート内に閉じ込めることで「1(電荷あり)」と「0(電荷なし)」を記録。
主な種類:
● NOR型:高速読み出し(コード格納用)
● NAND型:高密度・大容量(ストレージ用途)
【8】NANDフラッシュの構造と用途
・セルを直列に接続することで高密度化。
・ブロック単位でデータを消去・書き込み。
・書き換え速度は遅いが、大容量化に最適。
用途:SSD、USBメモリ、スマホストレージ、SDカードなど。
【9】次世代メモリ技術
従来型メモリの限界(書き換え耐久性・速度・消費電力)を克服するため、
新しい物理原理に基づくメモリが研究されています。
● MRAM(Magnetoresistive RAM):電子スピンを利用。高速・高耐久。
● ReRAM(Resistive RAM):抵抗変化を利用。低消費電力。
● PCRAM(Phase Change RAM):物質の結晶/非結晶状態で情報を保持。
● FeRAM(Ferroelectric RAM):強誘電体を利用。超高速で低消費。
これらは「不揮発性かつ高速な次世代メモリ」として注目されています。
【10】メモリ階層構造(Memory Hierarchy)
コンピュータでは、速度と容量のバランスを取るために階層構造が採用されています。
上位ほど高速・高価・小容量、下位ほど低速・低価格・大容量。
1.レジスタ(CPU内部)
2.キャッシュメモリ(SRAM)
3.メインメモリ(DRAM)
4.ストレージ(NAND SSDなど)
5.外部保存(HDD・クラウド)
この階層設計により、処理性能とコストの最適化が可能となります。
【11】まとめ
・ メモリは情報を保持するための半導体デバイス。
・ 揮発性:SRAM・DRAM/不揮発性:ROM・Flashなど。
・ NANDフラッシュはストレージの主流技術。
・ MRAMやReRAMなど、次世代不揮発メモリの実用化が進行中。
・ 階層構造により、速度・容量・コストを最適化している。
【理解チェック】
1.揮発性メモリと不揮発性メモリの違いは?
2.SRAMとDRAMの構造的な違いは?
3.フラッシュメモリの主な種類と用途を挙げよ?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。
