【1】パッケージングとは何か
パッケージング(封止)は、前工程で完成したシリコンチップを使える状態に仕上げる工程。
目的は大きく3つ:
1.チップを外部環境から守る(湿度・衝撃)
2.電気的に外部と接続する(入出力端子)
3.熱を逃がして安定動作させる
つまり、「裸のチップ(Die)」を製品として機能させる最終加工」 にあたる。
【2】パッケージングが必要な理由
近年は微細化が進むほど、
● 薄い
● もろい
● 発熱が大きい
● 配線が密集
● 電流が増加 と難易度が急上昇。
そのため、パッケージングは、チップ性能を最大限引き出す第2の設計思想と言われる。
【3】主要なパッケージング方式
●(1)ワイヤボンディング(Wire Bonding)
昔から使われる標準方式。
チップ上のパッドとリードフレームを金線などで接続する。
特徴:
・ 安い・確実・成熟技術
・ メモリ、MCUなど量産向け
・ ただし配線長が長く高速信号には不利(遅延・ノイズ)
●(2)フリップチップ(Flip-Chip)
チップ上にバンプを形成し、裏返して基板に直接接続。
特徴:
・ 配線が短く高速
・ 熱を逃がしやすい
・ 多端子・高性能デバイス向け(CPU / GPU / ASIC)
・ コストや実装難易度は高い
ハイエンド半導体の標準方式。
●(3)BGA / QFN などモールド型パッケージ
樹脂で封止したコスト型パッケージ。
例:
・ BGA(Ball Grid Array)
・ QFN(Quad Flat No-lead)
・ SOP / DIP(古典的方式)
特徴:
・ 小型・安価
・ モバイル機器に最適
・ チップ単体は保護されるが熱は逃がしにくい
●(4)Fan-out / Fan-in パッケージ(FOWLP)
近年トレンドの高密度パッケージ。
■ Fan-out(InFO, eWLB)
チップの外側に配線を広げる方式。
特徴:
・ 薄型
・ チップサイズ以上に配線を展開
・ Apple Aシリーズなどに採用
■ Fan-in
チップ内に配線を収める方式。
スマホ用PMICなど、小型重視の用途で使用。
●(5)2.5D / 3Dパッケージ(CoWoS, HBMなど)
AI・データセンター時代の主役。
■ 2.5D(シリコンインターポーザ)
・ 複数チップを1枚のSiブリッジ上で配線
・ 代表例:TSMC CoWoS
・ HBM(高帯域メモリ)+ロジックの組み合わせが代表
■ 3Dパッケージ
・ TSV(Through Silicon Via)を使い、上下に積層
・ 距離が最短で高速
・ ただしコスト・熱対策が非常に難しい
AIサーバ向けGPUで爆発的に需要が伸びている。
【4】熱(Thermal)・EMI・信頼性の設計ポイント
パッケージングは 熱・電気・機械の総合技術 である。
代表的な課題:
●熱対策(Thermal)
・ 大電流化により発熱増加
・ TIM(熱インターフェース材料)
・ ヒートスプレッダ
・ 放熱基板(メタルコアなど)
●EMI(電磁ノイズ)
・ 高速化でノイズ干渉が増大
・ シールド構造が重要
・ 樹脂封止内部の金属粒子管理
●機械的信頼性
・ 温度サイクル
・ はんだクラック
・ ワイヤ断線
・ モールド樹脂の剥離
パッケージの信頼性が低いと最終製品全体の故障率が跳ね上がる。
【5】パッケージの材料構成
代表的な材料:
・ 基板(BT、ABF、セラミック)
・ はんだボール(SnAgCu系)
・ バンプ(Cu / Ni / Sn)
・ モールド樹脂(エポキシ)
・ アンダーフィル(フリップチップ用)
・ TIM(熱インターフェース材料)
材料開発は急速に進化しており、特にABF基板は半導体の戦略物資と呼ばれる。
【6】最新トレンド
・ HBM+ロジックの2.5D構造(AI時代の主流)
・ Chipletアーキテクチャ(AMD、Intel、Apple)
・ 熱拡散構造の複雑化
・ 樹脂の低誘電率化
・ ウォーターフリー工法
・ 超薄チップ向け応力制御技術
パッケージ技術が 半導体の性能を左右する時代 になっている。
【7】まとめ
・ パッケージングはチップを保護し、外部と接続する最終工程
・ ワイヤボンド・フリップチップが基本
・ Fan-out や 2.5D/3D は高性能向け
・ 熱・EMI・信頼性が大きな設計課題
・ AI・HPCで高密度パッケージの需要が爆発している
【理解チェック】
1.ワイヤボンディングとフリップチップの最大の違いは?
2.Fan-out パッケージがスマホ用途で人気な理由は?
3.HBMが2.5Dパッケージと組み合わせられる理由を説明してください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



