【1】装置技術が重要な理由
半導体製造は、材料 × プロセス × 装置 の掛け算で成り立つ産業。
その中でも装置は、
● 微細化(2nm→1nm)
● 3D構造(FinFET→GAA)
● 高アスペクト比(100:1以上)
● 新材料(High-k、Low-k)
● 高密度配線 などの要求を実現する最も重要な基盤。
技術進化の限界は、装置技術の限界で決まる と言っても過言ではない。
【2】EUV露光(Extreme Ultraviolet Lithography)
(1)EUVとは
EUVリソグラフィは波長13.5nmの光を使う露光技術。
従来のArF(193nm)より非常に短い波長であり、微細化の鍵を握る究極のリソグラフィ装置。
(2)EUVの構造と特徴
EUV装置は世界で最も複雑な装置の一つ:
・ レーザーでSn(スズ)をプラズマ化 → EUV光を生成
・ 反射率の低い光のため、すべて“反射光学系”
・ 反射鏡はMo/Si多層膜(100層以上)
・ 真空環境が必須
・ マスクも反射型(EUV mask)
1台 300〜400億円 と超高額。
(3)EUVの課題
・ マスク欠陥(Mask Defect)
・ Stochastic effect(確率的欠陥)
・ 光源出力不足
・ 露光スループットの限界
・ 高NA化による鏡面加工精度要求の上昇
特に確率的欠陥は、写真現像と同じように粒状ノイズが結果を左右する ため厄介。
(4)高NA EUV(0.55NA)
次世代の主役。
・ 解像度が大幅向上
・ 1nm台のパターニングに必須
・ しかし装置サイズは巨大化(高さ=バス2台分)
・ マスクブラー(Mask 3D Effect)が深刻化
IntelとASMLが初導入する予定。
【3】真空技術(Vacuum Technology)
微細加工はほとんどが真空下で行われる。
真空が必要な理由
● 気体分子の衝突を避ける
● 反応ガスの純度を上げる
● プラズマ安定性の向上
● 膜堆積の均一化
● 表面汚染の防止
真空ポンプ、配管、シール技術は非常に重要。
代表的なプロセスと真空の関係
● CVD → 低圧(LPCVD)
● PVD → 高真空
● ALD → 超高真空・精密ガス制御
● イオン注入 → 高真空
● EUV → 極高真空(10⁻⁶ Paレベル)
真空の品質が直接歩留まりに影響する。
【4】プラズマ技術(Plasma Technology)
プラズマは、エッチング、成膜、表面処理の主役。
(1)プラズマとは
電子・イオン・中性粒子が混ざった「電離ガス」。
特性:
・ 高エネルギー反応
・ 表面化学を自在に制御
・ 反応の選択性が高い
・ 温度を上げずに加工できる
(2)プラズマエッチング
特徴:
・ 異方性加工(サイドウォールが垂直)
・ 高アスペクト比対応(100:1 超)
・ 選択性の制御
・ プラズマダメージを最小化する工夫が重要
AIチップの溝形状やTSV形成に不可欠。
(3)プラズマ成膜(PECVD等)
用途:
・ SiO₂
・ SiN
・ Low-k材料
・ パッシベーション膜
プラズマ特性(周波数、パワー、ガス組成)が膜質を決める。
(4)プラズマの最新技術
・ 原子層堆積用プラズマ
・ ダメージレスエッチング
・ 低エネルギーイオン制御
・ 高密度プラズマ(ICP)
・ プラズマ中の電荷ダメージ制御
装置メーカーのコア技術領域となっている。
【6】ガス制御・薬液制御技術
●ガス制御
・ MFC(Mass Flow Controller)
・ プレカーサ(ALD/CVD用)
・ 反応速度の微細制御
・ パーティクル管理
●薬液制御
・ HF、H₂O₂など高危険材料の管理
・ ウェットエッチング
・ 洗浄プロセス(SC-1/SC-2など)
ガスと液 の純度が歩留まりを左右する。
【7】装置連携とスマートファブ
工場は装置の集合体で動く。
最近は:
・ AI × 装置データ解析(FDC)
・ デジタルツインでの装置動作シミュレーション
・ 自動搬送システム(AMHS)との連携
・ リアルタイムプロセス制御(APC) が標準となりつつある。
装置技術は単体で存在せず、工場全体の最適化(Smart Fab)が必須。
【8】最新トレンド
・ 高NA EUVの実装
・ EUVマスクブラー対策
・ Stochastic defect の低減技術
・ 超高真空 × プラズマの複合装置
・ ALD × エッチングのハイブリッドプロセス
・ ガスのクリーン化(pptレベル)
・ 装置データのAI解析
特にEUV世代では、装置の限界=微細化の限界 と言えるほど重要性が高い。
【9】まとめ
・ EUV、真空、プラズマは先端デバイスの基盤技術
・ 装置性能が微細化(2nm → 1nm)を決める
・ 真空・温度・ガス制御が歩留まりを左右
・ Smart Fab 化が進み、AI活用が必須に
・ 装置技術の理解は半導体技術者にとって最重要スキル
【理解チェック】
1.EUV装置で真空環境が必須な理由は?
2.プラズマが半導体加工で使われる主な理由を2つ挙げてください。
3.高NA EUVが必要になる背景を説明してください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



