【1】なぜ“エッチング”が先端プロセスの核心なのか
微細化が進むほど、削る技術(Etching)がチップ性能を左右する工程になっている。
理由はシンプルで、最新の構造では:
● 100:1を超える超深溝
● 数nmの寸法精度
● 損傷ゼロの側壁
● プラズマダメージ極小化 が要求され、もはや 削れるだけでは不十分。
先端ノードでは、どれだけ理想的に削れるか=歩留まり・性能そのものと言っても過言ではない。
【2】高アスペクト比エッチング(HAR:High Aspect Ratio)
TSV、3D NAND、Fin/GAA などで必須の技術。
● 高アスペクト比(HAR)とは?
アスペクト比 = 深さ / 幅
例)深さ10µm・幅100nm → AR = 100:1
現在の3D NANDは 200:1 に近い領域まで進んでいる。
● HARで難しいポイント
・ 側壁が倒れる(ボウイング / ターパー)
・ 下までガスが届かない
・ 反応生成物が詰まる
・ プラズマ損傷で信頼性低下
・ 下部選択性の確保(止めたい層でピタッと止まる)
→ 世界のエッチング装置メーカーが最も苦しむ領域。
【3】DLE(Damage-Less Etching)
微細化により、プラズマによるダメージが致命的になった。
レジスト・Low-k・Siチャネルなどは、
ほんのわずかなダメージで特性が大きく変わる。
DLEは、
● 低エネルギーイオン
● 中性ラジカル中心の反応
● 過度なスパッタリングを避ける
などの工夫により、構造を削りつつ、ダメージを最小化する技術。
特に:
● GAAのナノシート解放工程
● 高アスペクト比での側壁保護
● 低誘電率(Low-k)の崩壊防止 で必須となる。
【4】ALE(Atomic Layer Etching:原子層エッチング)
成膜のALDと同様、
1サイクルごとに“原子層単位”で削る技術。
● ALEの基本ステップ
1)表面に反応性の層を形成(Modification)
2)プラズマなどで“1層分だけ”除去(Removal)
これを繰り返すことで、原子レベルの精度で寸法制御が可能。
● ALEが必要な場面
・ GAAのチャネル形成
・ 極薄膜の均一加工
・ パターニング寸法補正
・ 高精度ゲート形成
nmどころか数Åレベルの制御が可能で、2nmノード以降のキーテクノロジー。
【5】材料別エッチングの難しさ
● Si(シリコン)
比較的加工しやすいが、微細化でダメージ・粗さが大問題に。
● SiO₂ / SiN
硬く、選択性確保が難しい。
特に GAAの絶縁膜除去。
● Low-k材料
弱くて壊れやすい。
プラズマで簡単に崩壊 → 低ダメージ必須。
● 金属系(TiN、W、Ruなど)
プラズマ反応が複雑で、金属エッチングは先端ノード最大の難所の一つ。
【6】最新トレンド(エッチングの未来)
● マルチフリークエンシープラズマ制御
高周波 × 低周波を組み合わせ、
ダメージと方向性を同時にコントロール。
● Pulsed Plasma(パルスプラズマ)
オン/オフ制御で反応を安定化。
● AI制御エッチング
プラズマ状態をリアルタイム解析して自動最適化。
● 3D NAND向けHAR技術(200層 → 1000層へ)
側壁保護と均一性が最大課題。
● Metal Gate世代の微小開口エッチング
極端に小さい開口を、形状崩れなく加工する技術が要求される。
【7】まとめ(5-8)
● 高アスペクト比エッチングは先端プロセスの最重要技術
● DLEは削りながらダメージ最小化を実現
● ALEは原子層単位の寸法制御を可能にする次世代技術
● 材料ごとの特性を理解しないと加工できない
● AI制御・プラズマ高度化など新技術が進行中
【理解チェック|5-8】
1.高アスペクト比エッチングで起こりやすい問題を2つ挙げてください。
2.DLE(Damage-Less Etching)が必要とされる理由は?
3.ALEがFinFET→GAAで特に重要視される理由を説明してください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



