TECH COLUMN 技術コラム

5章:最先端プロセス技術
5-8. 先端エッチング技術(高アスペクト比 / DLE / ALE)

材料・加工技術

公開日:

【1】なぜ“エッチング”が先端プロセスの核心なのか

微細化が進むほど、削る技術(Etching)がチップ性能を左右する工程になっている。

理由はシンプルで、最新の構造では:

 ● 100:1を超える超深溝

 ● 数nmの寸法精度

 ● 損傷ゼロの側壁

 ● プラズマダメージ極小化 が要求され、もはや 削れるだけでは不十分

先端ノードでは、どれだけ理想的に削れるか=歩留まり・性能そのものと言っても過言ではない。

【2】高アスペクト比エッチング(HAR:High Aspect Ratio)

TSV、3D NAND、Fin/GAA などで必須の技術。

● 高アスペクト比(HAR)とは?

アスペクト比 = 深さ / 幅
例)深さ10µm・幅100nm → AR = 100:1

現在の3D NANDは 200:1 に近い領域まで進んでいる。

● HARで難しいポイント

 ・ 側壁が倒れる(ボウイング / ターパー)

 ・ 下までガスが届かない

 ・ 反応生成物が詰まる

 ・ プラズマ損傷で信頼性低下

 ・ 下部選択性の確保(止めたい層でピタッと止まる)

→ 世界のエッチング装置メーカーが最も苦しむ領域。

【3】DLE(Damage-Less Etching)

微細化により、プラズマによるダメージが致命的になった。

レジスト・Low-k・Siチャネルなどは、
ほんのわずかなダメージで特性が大きく変わる。

DLEは、

 ● 低エネルギーイオン

 ● 中性ラジカル中心の反応

 ● 過度なスパッタリングを避ける

などの工夫により、構造を削りつつ、ダメージを最小化する技術

特に:

 ● GAAのナノシート解放工程

 ● 高アスペクト比での側壁保護

 ● 低誘電率(Low-k)の崩壊防止 で必須となる。

【4】ALE(Atomic Layer Etching:原子層エッチング)

成膜のALDと同様、
1サイクルごとに“原子層単位”で削る技術

● ALEの基本ステップ

1)表面に反応性の層を形成(Modification)
2)プラズマなどで“1層分だけ”除去(Removal)

これを繰り返すことで、原子レベルの精度で寸法制御が可能。

● ALEが必要な場面

 ・ GAAのチャネル形成

 ・ 極薄膜の均一加工

 ・ パターニング寸法補正

 ・ 高精度ゲート形成

nmどころか数Åレベルの制御が可能で、2nmノード以降のキーテクノロジー。

【5】材料別エッチングの難しさ

● Si(シリコン)

比較的加工しやすいが、微細化でダメージ・粗さが大問題に。

● SiO₂ / SiN

硬く、選択性確保が難しい。
特に GAAの絶縁膜除去。

● Low-k材料

弱くて壊れやすい。
プラズマで簡単に崩壊 → 低ダメージ必須。

● 金属系(TiN、W、Ruなど)

プラズマ反応が複雑で、金属エッチングは先端ノード最大の難所の一つ

【6】最新トレンド(エッチングの未来)

● マルチフリークエンシープラズマ制御
高周波 × 低周波を組み合わせ、
ダメージと方向性を同時にコントロール。

● Pulsed Plasma(パルスプラズマ)
オン/オフ制御で反応を安定化。

● AI制御エッチング
プラズマ状態をリアルタイム解析して自動最適化。

● 3D NAND向けHAR技術(200層 → 1000層へ)
側壁保護と均一性が最大課題。

● Metal Gate世代の微小開口エッチング
極端に小さい開口を、形状崩れなく加工する技術が要求される。

【7】まとめ(5-8)

 ● 高アスペクト比エッチングは先端プロセスの最重要技術

 ● DLEは削りながらダメージ最小化を実現

 ● ALEは原子層単位の寸法制御を可能にする次世代技術

 ● 材料ごとの特性を理解しないと加工できない

 ● AI制御・プラズマ高度化など新技術が進行中

【理解チェック|5-8】

1.高アスペクト比エッチングで起こりやすい問題を2つ挙げてください。

2.DLE(Damage-Less Etching)が必要とされる理由は?

3.ALEがFinFET→GAAで特に重要視される理由を説明してください。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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