【1】放熱が難しくなっている理由
理由はシンプルで、次の3つ:
① 電力密度が増えすぎている
チップのTDPは増加し、AIチップでは600W~1000W級が登場。
同じ面積で発熱だけ増えるため、従来の放熱機構では限界。
② パッケージ構造そのものが熱抵抗を増やす
2.5D-IC・Fan-outのように、樹脂・RDL・接着剤など熱が通りにくい材料層が増えている。
すると、チップ → TIM → ヒートスプレッダまでの熱の通り道が長くなる。
③ 高密度化で材料選択が制限されている
導電性、絶縁性、熱膨張、実装条件などの制約が多く、熱だけ優先した材料が使えないケースが増えている。
【2】放熱の基本アプローチ
放熱は大きく4つの方法で改善される。
(1)熱伝導(Conduction)を改善する
チップから熱を外へ運ぶ最初のステップで最重要。
主な方法:
・高熱伝導TIM(グリス、シート、ゲル)の採用
・CuピラーやRDLの最適化
・ヒートスプレッダ(IHS)の材料改善
・モールド樹脂の熱伝導率を向上
特にFan-outでは、モールド樹脂がボトルネックになる。
(2)熱拡散(Spreading)を改善する
熱を面方向に広げることで、局所的な温度上昇(hot spot)を削減。
・グラファイトシート(高熱拡散性)
・Cuベースプレート(厚み最適化)
・Vapor Chamber / Heat pipe
スマホの発熱対策でも中心技術。
(3)放熱(Convection)を改善する
外部へ熱を逃がす機構。
・ファン(Air cooling)
・水冷(Liquid cooling)
・2相冷却(Two-phase cooling) ← AIサーバーで主流化
特にAIサーバーは水冷必須の時代に突入。
(4)材料そのものを変える(革新的アプローチ)
・GaN / SiC など低損失材料への置換
・ダイヤモンド基板
・金属間化合物TIM(Indium系)
・カーボンナノ材料
・高熱伝導樹脂
材料単価は高いが、パッケージ性能が一気に激変する領域。
【3】パッケージ別の放熱課題と対策
● Fan-out(FO-WLP)
課題:
・樹脂モールドの熱伝導率が低い
・RDL密度が上がるほど熱抵抗が増える
対策:
・高熱伝導樹脂(TCF)への切替
・Cu密度を上げたRDL設計
・バックサイドに放熱メタル(Cu)追加
● 2.5D(インターポーザ)
課題:
・インターポーザが熱拡散を阻害
・HBMの発熱密度が高い
対策:
・メタルヒートスプレッダの大型化
・HBM上の専用冷却構造(Cold Plate)
・Siインターポーザ → 高熱伝導材料への置換(研究中)
● 3D-IC(積層)
課題:
・上段チップの熱が下段に蓄積
・TSV密度が熱のボトルネック
対策:
・Backside Power Deliveryとセットで排熱経路を再設計
・マイクロ流体冷却(液体を直接流す方式)
・高熱伝導アンダーフィルの導入
【4】熱設計の最新トレンド
・液冷(Direct Liquid Cooling) → AIデータセンターで急速に常識化
・2相冷却 → NVIDIA H100/H200世代で本格採用
・ダイヤモンド基板 × GaN / SiC → 超高熱伝導
・マイクロチャネル液冷パッケージ → 研究→実用化へ加速
・AIMLによる熱最適化設計 → レイアウト・材料選択をAIで自動化
放熱は今後、電気設計 × 熱設計 × 材料 × 流体 × AIの総合戦で決まる。
【5】まとめ(6-4)
・発熱量の増加により熱設計の重要度は急上昇
・パッケージ構造が複雑化し、熱の逃げ場がない
・放熱改善には伝導・拡散・放散・材料革新の4要素が必要
・パッケージ構造ごとに課題が異なる(Fan-out、2.5D、3D-IC)
・AIサーバーの台頭で液冷が今後の主流
・革新的材料(ダイヤモンド、金属TIM)がブレイクスルー候補
【理解チェック】
1.Fan-outパッケージの熱ボトルネックになりやすい材料は何か?
2.熱を水平方向に広げる役割を持つ材料は何か?
3.AIサーバーで液冷が必要になった背景を一言で説明せよ。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



