第6話:週2、3日のはずが、気づけばフルタイムだった

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「週2、3日でええから、ちょっと現場を見てくれん?」
そんな話だった。
ぶどう園が台風で吹き飛び、
とりあえず“準備期間”に入った僕にとっては、
それくらいの働き方がちょうどいいと思っていた。

でも――会社に行ってみたら、いきなり筆記試験が始まった。
「え?これは何の試験ですか?」と聞くと、
「決まりなので」と、さも当然のように返された。
手伝いを頼まれた側なのに、なんで試験受けてるんやろ…
そんなモヤモヤを抱えながら、言われるがまま試験を受けた。

 

そのまま「来週からお願いします」と言われ、
総務に確認すると、なんと「私たちは知りません」との返答。
え… 話が違いすぎるやろ…

 

それでも、とりあえず翌週から通い始めることにした。
ところが、出社してさらに驚いた。
「角本さんは、試用期間の社員扱いになりますので、フル出勤でお願いします」
は?週2、3日ちゃうんかい。

 

さらに追い討ちのように、
「土日は休み」と聞いていたのに、
「隔週土曜出勤です」と言われた。
それは、おかしいと抗議すると、
「現在、土曜は休業中なので、嘘ではありません」とのこと。
言い回しの巧妙さに、逆に感心してしまった(笑)

 

そして、驚きの配属先が告げられる。
「角本さんは“経営企画部”です」
「え? 現場じゃないんですか?」と聞き返すと、
「新しくできた部署です」との答え。

 

やったこともないし、何をする部署なのかもわからないので尋ねてみた。
「好きなことをやってください」
……話、全部違うやん。

 

紹介してくれた若い上司に「聞いてた話と全然違う」と伝えると、
「いや…すごい優秀な正社員が入ってくるとしか聞いてなかったんで…」と困惑していた。
もう、誰に言ってもしょうがないやつだ、これは…

 

そう思っていた矢先、突然その上司から飲みの誘いがきた。
「角本さんの家の近くのお店、予約してるんで、今晩一緒に飲みに行きましょう」
展開、早すぎやろ…

 

でも正直、ちょっと嬉しかった。
退職してからの数カ月、誰とも飲みに行っていなかったし、
農業の厳しさよりも、職がない時の「周囲の冷たさ」に疲弊していた時期だった。

 

しかも、車で40分も離れた場所の飲み屋を調べて予約してくれていた。
自分の予想をはるかに上回る気配りに、「やるなー」と素直に思った。
…とはいえ、正直この時点では、まだ辞めようと思っていた。

 

ミクロな技術で、ワクワクしながら、
今日もマクロな感動を届けに行きましょう。


オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.
角本康司

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