「角本さん、僕に勉強させてください」
そう言ってきたのは、例の若い上司だった。
「なんで、僕に聞くの?」
「角本さんがすごい人と聞いてます。その経験を教えて欲しいんです。」
正直、最初は戸惑った。
「え?すごくないし、意味わかんない、なんで?」すると彼は、こう答えた。
「うちの会社、今夏のボーナスが出てないんです。給料を上げるために、もっと勉強したいんです。」
さらに聞いてみた。
「なんで、そこまでして給料を上げたいの?」
しばらく沈黙したあと、彼はぽつりと打ち明けた。
「この前、欲しかった車を見に行ったんです。
でも、年収を答えたら…営業マンに鼻で笑われました。…めちゃくちゃ悔しかったです。」
えっ…そんなに安いの?
黒字も続いてるって聞いてたのに、ボーナス出ない?
それって、おかしくないか?
そう思った瞬間、
あの“変な正義感”に、火がついてしまった。
前職でも、理不尽や矛盾に声を上げては、何度もぶつかった。
それが、仕事を辞めた理由の一つでもあった。
でも――この夜ばかりは、止められなかった。
「おっしゃ、俺がみんなの給料、2倍にしてやる!」
「一緒にがんばろう!」
気づいたら、そう言っていた。
言ってから数秒、自分でも「うわ、言っちゃった…」と思った。
でも、その場の空気は…悪くなかった。そして、その日の酒は美味かった。
そして、数日後、全体朝礼の自己紹介で、
「経営企画部が会社を変える!」
「社員の給料2倍、完全週休2日、子どもに自慢できる会社にする!」
そう、全社員の前で堂々と宣言してしまった。試用期間にも関わらず。。。
…今思えば、あれは完全にまんまと作戦にハメられてた気もする。
間違いなく私の性格を知っている知り合いが、先回りして組み上げた採用戦略だったのだろう。
でも、不思議と後悔はなかった。
あの時、彼の悔しさに触れて、自分の中の何かが「共鳴」した。
理屈じゃなかった。
夢が砕けたはずだったが、気づけば、新たな道を歩こうと思っていた。
言ってしまった言葉の責任を、どうやって形にしていくのか。
現場とのギャップ、周囲の目、そして自分自身との戦いが始まる。
ただ、ここから先は、オープンな場所で語るべき話ではないと思っている。
会社を変える時には、「変える覚悟」と「守る覚悟」、その両方が必要になる。
そして、それは時に対立・衝突・誤解を生む。
だからこそ、私の立場からオープンな場で語るのは、バイアスがかかりすぎる。
それは違うな、と思っているので、次回からは、普通のブログになります。
ちなみに、前職へも相談を入れて「OK」をもらって勤めることにした。
「営業も最低3年はしない」と自分なりにルールを決め、自分達で作った中期計画を実行するまで経営企画部を6年間続けた。
ここまでが、採用時や外部の方から、よく聞かれる話。
だからこそ、一度ちゃんと言葉にして、ブログに残しておこうと思った。
楽しんでもらえたら、嬉しいです。
ミクロな技術で、ワクワクしながら、今日もマクロな感動を届けに行きましょう。
オーティス株式会社 OTIS Co.,Ltd.
角本康司