【1】はじめに
半導体の最大の魅力のひとつは、「電気と光を相互に変換できる」ことです。
この性質を応用したのが、LED・レーザー・太陽電池などの光半導体デバイスです。
光を放つ(発光)・光を受ける(受光)・光を電力に変える(光電変換)。
これらの現象を支えるのが、光半導体材料です。
【2】光半導体の分類
光半導体は、主に以下の3種類に大別されます。
1.発光デバイス(LED・LDなど)
→ 電気を光に変える(Electroluminescence)
2.受光デバイス(フォトダイオード・イメージセンサー)
→ 光を電気に変える(Photoconduction)
3.太陽電池(Solar Cell)
→ 光エネルギーを電力に変える(Photovoltaic Effect)
【3】発光デバイス材料(LED・LD)
発光素子には直接遷移型半導体が使われます。
電子がエネルギーを失う際に光を放出するため、光変換効率が高いのです。
主な材料は以下の通りです。
● GaAs(ガリウムヒ素):赤外LED、レーザー光源
● GaP(リン化ガリウム):赤・黄緑LED
● GaN(窒化ガリウム):青色LED、白色LEDの基礎
● InGaN・AlGaN:波長制御が可能で、RGB全色をカバー
● InP(リン化インジウム):光通信向け赤外レーザー
特に、1990年代の青色LED(GaN系)の登場は、照明・ディスプレイ業界に革命を起こしました。
白色光が得られることで、蛍光灯・電球に代わる省エネ光源が誕生したのです。
【4】光通信・レーザーデバイス材料
光ファイバー通信では、波長1.3μm〜1.55μm帯が主流です。
この帯域では損失が少なく、信号が長距離伝送できます。
主な材料は:
● InP(リン化インジウム)系:光通信の主力(直接遷移型)。
● InGaAsP:波長可変型レーザー、フォトダイオード。
● GaAs系:短波長(850nm帯)の光通信やセンサー用途。
→ 光通信ネットワークの心臓部は、化合物半導体が支えている。
【5】太陽電池用材料の進化
太陽電池(ソーラーパネル)は、光エネルギーを直接電力に変換するデバイスです。
主要材料は、シリコン系から新型薄膜系へと多様化しています。
1.シリコン(Si)系
– 単結晶Si:高効率・高信頼性(変換効率 約22〜25%)
● 多結晶Si:安価・大量生産向き(効率 約18〜20%)
→ 世界の太陽電池の約90%を占める。
2.化合物系(III-V族)
– GaAs, InGaP, Geなどを多層に積んだ多接合セル。
● 変換効率30%超。宇宙用・人工衛星に採用。
3.薄膜系
– CdTe(テルル化カドミウム)
● CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン化合物)
● アモルファスSi(a-Si)
→ 軽量・柔軟・低コストで、建築物やモバイル機器にも応用可能。
4.次世代型(研究開発段階)
● ペロブスカイト太陽電池(低コスト・印刷製造が可能)
● 有機太陽電池(フレキシブル・軽量)
【6】光半導体の材料選定の考え方
光デバイスでは、電気特性だけでなく光学特性も重要になります。
選定時に考慮する主な要素:
● バンドギャップの大きさ(発光・吸収の波長を決定)
● 直接/間接遷移型の違い(発光効率に直結)
● 屈折率・透過率(光導波設計に関係)
● 結晶整合性(ヘテロ接合の品質)
● 熱伝導率・放熱性
→ 光半導体では「光」「熱」「電気」の三要素のバランス設計がカギになる。
【7】クリーンエネルギーとの関係
太陽電池や光通信など、光半導体は脱炭素社会の推進技術でもあります。
・LED照明 → 消費電力を従来比で70〜80%削減。
・太陽電池 → 化石燃料を使わない発電手段。
・光通信 → 高速・低損失のデータ伝送によるエネルギー効率化。
→ 光半導体は、環境技術とIT技術の“交差点”にある存在。
【8】今後の展望
・ペロブスカイトとシリコンのハイブリッド太陽電池で40%超の変換効率を目指す。
・LEDは量子ドットやマイクロLEDによって高演色・高輝度化が進行。
・光通信は光集積回路(PIC)でさらなる高速・省電力化へ。
・AI・自動運転向けLiDARでは、赤外光半導体が中核に。
→ 光半導体は「情報」と「エネルギー」をつなぐ次世代のキー技術。
【9】まとめ
・光半導体は、光と電気を相互変換する技術の中心。
・LED・レーザー・太陽電池など、多様な応用分野を持つ。
・材料はSiからGaAs、InP、CIGS、ペロブスカイトへと拡大中。
・「光る」「感じる」「電気を生む」すべてを半導体が担う時代へ。
【理解チェック(3問)】
1.発光デバイスに使われるのは直接遷移型か間接遷移型か?
2.宇宙用太陽電池に使われる材料は?
3.ペロブスカイト太陽電池が注目される理由は?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。
