TECH COLUMN 技術コラム

2. 半導体材料の種類と特徴
2-6. 光半導体・太陽電池用材料

材料・加工技術

公開日:

【1】はじめに

半導体の最大の魅力のひとつは、「電気と光を相互に変換できる」ことです。
この性質を応用したのが、LED・レーザー・太陽電池などの光半導体デバイス
です。

 

光を放つ(発光)・光を受ける(受光)・光を電力に変える(光電変換)。
これらの現象を支えるのが、光半導体材料です。

【2】光半導体の分類

光半導体は、主に以下の3種類に大別されます。

1.発光デバイス(LED・LDなど)
 → 電気を光に変える(Electroluminescence)

2.受光デバイス(フォトダイオード・イメージセンサー)
 → 光を電気に変える(Photoconduction)

3.太陽電池(Solar Cell)
 → 光エネルギーを電力に変える(Photovoltaic Effect)

【3】発光デバイス材料(LED・LD)

発光素子には直接遷移型半導体が使われます。
電子がエネルギーを失う際に光を放出するため、光変換効率が高いのです。

主な材料は以下の通りです。

● GaAs(ガリウムヒ素):赤外LED、レーザー光源

● GaP(リン化ガリウム):赤・黄緑LED

● GaN(窒化ガリウム):青色LED、白色LEDの基礎

● InGaN・AlGaN:波長制御が可能で、RGB全色をカバー

● InP(リン化インジウム):光通信向け赤外レーザー

 

特に、1990年代の青色LED(GaN系)の登場は、照明・ディスプレイ業界に革命を起こしました。
白色光が得られることで、蛍光灯・電球に代わる省エネ光源が誕生したのです。

【4】光通信・レーザーデバイス材料

光ファイバー通信では、波長1.3μm〜1.55μm帯が主流です。
この帯域では損失が少なく、信号が長距離伝送できます。

主な材料は:

● InP(リン化インジウム)系:光通信の主力(直接遷移型)。
● InGaAsP:波長可変型レーザー、フォトダイオード。
● GaAs系:短波長(850nm帯)の光通信やセンサー用途。

光通信ネットワークの心臓部は、化合物半導体が支えている。

【5】太陽電池用材料の進化

太陽電池(ソーラーパネル)は、光エネルギーを直接電力に変換するデバイスです。
主要材料は、シリコン系から新型薄膜系へと多様化しています。

1.シリコン(Si)系
– 単結晶Si:高効率・高信頼性(変換効率 約22〜25%)

 ● 多結晶Si:安価・大量生産向き(効率 約18〜20%)
   → 世界の太陽電池の約90%を占める。

2.化合物系(III-V族)
– GaAs, InGaP, Geなどを多層に積んだ多接合セル。

 ● 変換効率30%超。宇宙用・人工衛星に採用。

3.薄膜系
– CdTe(テルル化カドミウム)

 ● CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン化合物)

 ● アモルファスSi(a-Si)
   → 軽量・柔軟・低コストで、建築物やモバイル機器にも応用可能。

4.次世代型(研究開発段階)

 ● ペロブスカイト太陽電池(低コスト・印刷製造が可能)

 ● 有機太陽電池(フレキシブル・軽量)

【6】光半導体の材料選定の考え方

光デバイスでは、電気特性だけでなく光学特性も重要になります。

 

選定時に考慮する主な要素:

● バンドギャップの大きさ(発光・吸収の波長を決定)

● 直接/間接遷移型の違い(発光効率に直結)

● 屈折率・透過率(光導波設計に関係)

● 結晶整合性(ヘテロ接合の品質)

● 熱伝導率・放熱性

→ 光半導体では「光」「熱」「電気」の三要素のバランス設計がカギになる。

【7】クリーンエネルギーとの関係

太陽電池や光通信など、光半導体は脱炭素社会の推進技術でもあります。

・LED照明 → 消費電力を従来比で70〜80%削減。
・太陽電池 → 化石燃料を使わない発電手段。
・光通信 → 高速・低損失のデータ伝送によるエネルギー効率化。

→ 光半導体は、環境技術とIT技術の“交差点”にある存在。

【8】今後の展望

・ペロブスカイトとシリコンのハイブリッド太陽電池で40%超の変換効率を目指す。
・LEDは量子ドットやマイクロLEDによって高演色・高輝度化が進行。
・光通信は光集積回路(PIC)でさらなる高速・省電力化へ。
・AI・自動運転向けLiDARでは、赤外光半導体が中核に。

→ 光半導体は「情報」と「エネルギー」をつなぐ次世代のキー技術。

【9】まとめ

・光半導体は、光と電気を相互変換する技術の中心。
・LED・レーザー・太陽電池など、多様な応用分野を持つ。
・材料はSiからGaAs、InP、CIGS、ペロブスカイトへと拡大中。
・「光る」「感じる」「電気を生む」すべてを半導体が担う時代へ。

【理解チェック(3問)】

1.発光デバイスに使われるのは直接遷移型か間接遷移型か?

2.宇宙用太陽電池に使われる材料は?

3.ペロブスカイト太陽電池が注目される理由は?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

最新記事

  • 6章:半導体パッケージング技術
    6-12. 量産課題と歩留まり(Package Yield & Cost Structure)

    先端パッケージでは、作れるかより安定して量産できるか が最大の壁になる。 設計・材料・装置が高度化... 続きを読む
  • 6章:半導体パッケージング技術
    6-11. 先端パッケージとAIチップの関係

    AIチップの性能競争は、プロセス微細化からパッケージ設計へ主戦場が移った。 現在のAIチップは、 ... 続きを読む
  • 6章:半導体パッケージング技術
    6-10. 実装工程(Assembly Process)

    半導体パッケージは、設計や材料がどれだけ優れていても、実装で失敗すれば製品にならない。 実装工程(... 続きを読む

関連記事

  • 6章:半導体パッケージング技術
    6-12. 量産課題と歩留まり(Package Yield & Cost Structure)

    先端パッケージでは、作れるかより安定して量産できるか が最大の壁になる。 設計・材料・装置が高度化... 続きを読む
  • 6章:半導体パッケージング技術
    6-11. 先端パッケージとAIチップの関係

    AIチップの性能競争は、プロセス微細化からパッケージ設計へ主戦場が移った。 現在のAIチップは、 ... 続きを読む
  • 6章:半導体パッケージング技術
    6-10. 実装工程(Assembly Process)

    半導体パッケージは、設計や材料がどれだけ優れていても、実装で失敗すれば製品にならない。 実装工程(... 続きを読む

CONTACT お問い合わせ

岡山 / Okayama

0867-42-3690

東京 / Tokyo

03-6810-4830

お問い合わせはこちら