【1】はじめに
トランジスタの登場(1947年)は、真空管時代を終わらせ、
その後の電子機器の小型化・高性能化を一気に進めました。
しかし、トランジスタを1個ずつ配線していた時代には、
・ 配線の複雑化
・ 信号遅延
・ コスト・信頼性の問題
といった課題が山積していました。
それを根本から変えたのが、集積回路(IC:Integrated Circuit)です。
【2】集積回路(IC)とは
ICとは、「複数の電子素子(トランジスタ・抵抗・コンデンサなど)を、
1枚の半導体基板上にまとめて形成した回路」です。
つまり、電子回路そのものをチップ化したもの です。
これにより、信号の伝達距離が短くなり、速度・省電力・信頼性が飛躍的に向上しました。
【3】ICの誕生と初期の発展
● 1958年:テキサス・インスツルメンツ社のジャック・キルビーが最初のICを発明。
● 1959年:フェアチャイルド社のロバート・ノイスがシリコン基板上でICを実現。
これが、今日まで続く半導体集積技術の起点となりました。
初期のICはトランジスタ数が数十個程度で、
「SSI(Small Scale Integration)」と呼ばれていました。
【4】集積度の進化段階
半導体集積技術は、集積されるトランジスタの数に応じて分類されます。
● SSI(Small Scale Integration):数十個(1950〜60年代)
● MSI(Medium Scale Integration):数百個(1970年代初期)
● LSI(Large Scale Integration):数千〜数万個(1970年代後半)
● VLSI(Very Large Scale Integration):数十万〜数百万個(1980〜1990年代)
● ULSI(Ultra Large Scale Integration):数千万〜数億個(2000年代〜)
現在では、1チップに数百億個のトランジスタが集積されています。
【5】集積回路の種類
集積回路は大きく2種類に分類されます。
1.アナログIC:信号を連続的に処理する回路。
→ 代表例:オペアンプ、電源IC、センサー回路など。
2.デジタルIC:0と1の離散信号を扱う回路。
→ 代表例:ロジックIC、マイクロプロセッサ、メモリなど。
多くのシステムでは、これらを組み合わせた混載IC(Mixed Signal IC)が使われています。
【6】集積回路を支える技術要素
ICが成立するためには、以下の要素技術が不可欠です。
● 微細加工技術(リソグラフィ、エッチング)
● 不純物ドーピング技術
● 絶縁膜形成(酸化・CVD)
● 配線(メタル層形成)
● パッケージングと実装
これらが連動して、ナノメートル単位の構造を実現しています。
【7】LSI(大規模集積回路)の特徴
LSI以降では、単なる部品集積ではなく、機能集積が進みました。
1チップ内で演算、記憶、制御、通信などを同時に実現します。
例:
● CPU(演算)
● GPU(画像処理)
● DSP(信号処理)
● SoC(System on Chip:複合機能集積)
これにより、スマートフォン1台でかつてのスーパーコンピュータを超える性能が得られるようになりました。
【8】VLSI(超大規模集積回路)時代
1980年代に入り、CAD(回路設計自動化)が進み、
トランジスタ数が爆発的に増加しました。
VLSI時代には、次の技術革新が起こりました。
● 微細化プロセス(μm → nmスケール)
● CMOS化(低消費電力化)
● マルチレイヤ配線
● 自動設計(EDAツール)
これらの進歩が、ムーアの法則(18〜24か月で2倍)を現実にしたのです。
【9】現代の超高集積化(ULSI〜3D IC)
現在では、微細化だけでなく3次元構造による高集積化が進んでいます。
● TSV(Through Silicon Via)による3D積層
● Chiplet構造によるモジュール化
● Heterogeneous Integration(異種デバイス統合)
これにより、性能・省電力・設計自由度を両立させる新しい時代に入りました。
【10】今後の展望
今後の集積技術は「単純な微細化から、最適化と分業化へ」と進むと予測されます。
● 3D IC・Chiplet化による構造的拡張
● AI設計支援による最適レイアウト
● 量子デバイス・光集積回路との融合
● パッケージ内集積(2.5D/3D SiP)によるモジュール最適化
つまり、1枚のチップではなく、複数チップが協調動作する時代へと向かっています。
【11】まとめ
・ ICは「複数の電子素子を1つのチップ上に集積したもの」。
・ 集積度は、SSI → MSI → LSI → VLSI → ULSIと発展。
・ LSI以降は機能集積(SoC, CPU, GPU)に進化。
・ 現在は、3D構造・Chiplet・AI設計など“複合最適化時代”に突入。
【理解チェック】
1.集積回路(IC)の最大の利点は?
2.LSIやVLSIは何を意味するか?
3.これからの集積化の方向性は?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。
