TECH COLUMN 技術コラム

5章:最先端プロセス技術
5-9. 高度成膜技術(ALD / PEALD / CVDの精密化)

材料・加工技術

公開日:

【1】成膜技術が先端プロセスのボトルネックになっている理由

微細化と3D構造化が進むほど、膜の均一性・膜厚精度・材料特性 が、
性能・信頼性・歩留まりを左右するようになった。

とくに 3nm・2nm 世代では、

 ● チャネル構造の複雑化(GAA / ナノシート)

 ● 側壁の微細突起や段差の増加

 ● 配線層の多層化と低k膜の脆弱化

などにより、成膜技術の難易度が急上昇している。

【2】CVD(Chemical Vapor Deposition)の役割と限界

CVDは半導体製造で最も広く利用される成膜手法。

● CVDの強み

 ・ 生産性が高い(成膜速度が速い)

 ・ 均一な膜が比較的簡単に得られる

 ・ 装置が成熟しておりコスト効率が良い

● CVDの限界

 ・ 高アスペクト比構造での膜厚均一性が課題
  (深い溝の底まで均一に膜が付かない)

 ・ 微細領域では膜厚制御の精度が不足

 ・ 材料によっては反応温度が高く、熱ダメージが出る

● 派生技術

 ・ LPCVD(低圧CVD)

 ・ PECVD(プラズマCVD)

 ・ HDPCVD(高密度プラズマCVD)

これらの改善技術があっても、2nm以降ではCVDだけでは要求を満たせない工程が増えている。

【3】ALD(Atomic Layer Deposition:原子層成膜)の重要性

ALDは現在、最先端プロセスの主役になりつつある技術。

● ALDの特徴

 ・ 1サイクルで原子層レベルの膜を形成

 ・ 化学反応が自己停止するため膜厚精度が極めて高い

 ・ 高アスペクト比構造の側壁にも均一に成膜できる

● ALDが必要とされる代表領域

 ・ High-kゲート絶縁膜(HfO₂など)

 ・ 金属ゲート(TiN、W)

 ・ バリアメタル(TaN)

 ・ トレンチや深孔構造の埋め込み

FinFET → GAA 移行に伴って、側壁の完璧なコントロールが必須 となり、
ALDが不可欠の存在になっている。

【4】PEALD(Plasma Enhanced ALD)による高度化

ALDの欠点を補い、さらに微細化に適応した手法。

● PEALDのメリット

 ・ 低温での高品質膜の形成が可能

 ・ 反応を促進し成膜速度を改善

 ・ 金属膜の高密度化が可能

 ・ デバイスの熱予算削減に寄与

PEALDは特にGAAのGate Stack、配線層の絶縁膜、バリア膜形成で多用される。

【5】超高アスペクト比構造での成膜課題

3D NANDでは 300層を超える縦構造により、穴の深さが10µmクラス に達している。

その中で:

 ● 上部:厚い

 ● 中央:薄い

 ● 下部:未成膜

というエレファントフット形状が発生しやすい。

これを克服できるのが ALD
CVDは基本的に均一被覆が困難。

【6】材料別に見た成膜の難しさ

● High-k膜

薄すぎるとリーク増大、厚すぎると性能低下。
ALD必須領域。

● 金属ゲート

Work-function調整が難しく、材料純度が重要。

● Low-k絶縁膜

プラズマに弱く、PECVD条件の最適化が歩留まりを左右。

● Cuバリアメタル

薄膜化と拡散防止を両立させる必要がある。

【7】次世代の成膜トレンド(進化の方向性)

● 選択成膜(Selective Deposition)
必要な部分だけに膜をつけて加工工程を削減。

● Spatial ALD(高速ALD)
ウェハを高速移動させ、ALDを超高速化。

● Hybrid ALD(サーマル × プラズマ)
膜質とスループットの最適解を追求。

● 材料系ALDの拡大(Ru、Co、極薄バリア)
配線抵抗の低減が狙い。

● In-situモニタリング(原子層レベル)
膜質をリアルタイムで評価しながら成膜する時代へ。

【8】まとめ(5-9)

 ● 微細化・3D化により、成膜技術がプロセスの核心に

 ● CVDは量産に強いが微細構造では限界がある

 ● ALDは原子層レベルの精密制御が可能で、先端ノードの要

 ● PEALDは低温化・膜質改善・速度向上に寄与

 ● 高アスペクト比・材料依存課題・歩留まりの観点で成膜技術が競争力を左右する

【理解チェック】

1.なぜALDはGAAトランジスタに不可欠なのか?

2.CVDとALDの最も大きな違いはどこにある?

3.PEALDが採用される理由を2つ挙げよ。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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