【1】なぜフリップチップが必要になったのか
ワイヤボンドでは:
・配線長が長い
・インダクタンスが高い
・高速信号に弱い
・I/O数の限界がある
といった問題が発生する。
しかし SoC・GPU・AIチップは:
・数千〜数万I/O
・超高速信号(GHz領域)
・大電流
・莫大な発熱
という圧倒的負荷がかかるため、ワイヤボンドでは対応できなくなった。
そこで登場したのが フリップチップ。
特長:
・配線長が最短 → 高速信号・低ノイズ
・I/O数を大幅増加
・電源/GNDを分散配置でき、電源品質向上
・放熱がチップ全面から可能
・高密度実装
結果、ハイエンドデバイスはほぼフリップチップに移行した。
【2】バンプ(Bump)構造の種類
フリップチップの性能を決める中心技術が、バンプである。
●(1)C4バンプ(従来型はんだバンプ)
材料:Sn-Ag-Cu(Pbフリー)
メリット:
・長年の実績があり信頼性が高い
・プロセスが成熟している
課題:
・微細ピッチ化に限界(<40 µmが厳しい)
・高電流用途では抵抗が増加
●(2)Cuピラー(Copper Pillar)
現在、最も急速に広がる方式。
構造:
Cu柱の先端に薄いSn層を形成 → リフローで接合
メリット:
・微細ピッチ(20–40 µm)対応
・高電流 × 高熱 × 高密度 に強い
・大規模AI/GPUで主流
課題:
・コプラナリティ制御が難しい
・Cu酸化を防ぐプロセスが必要
●(3)マイクロバンプ(HBM / 2.5D用)
特徴:
・10 µmクラスの超微細バンプ
・TSVと組み合わせて高帯域メモリHBMを形成
課題:
・1つの欠陥が“複数スタックの全滅”につながる
→ 歩留まりが圧倒的に重要
【3】アンダーフィル(Underfill)の役割
フリップチップは、チップと基板の熱膨張差が大きく、バンプが疲労・割れやすい。
この問題を解決するのが、アンダーフィル(樹脂)。
役割:
・熱サイクル応力の吸収
・落下衝撃の強化
・バンプ破壊の防止
・熱伝導パスの改善(高熱伝導UFも存在)
アンダーフィルの質が信頼性を左右するため、材料メーカーとの協業が必須。
【4】フリップチップの主な課題(実務視点)
●(1)コプラナリティ不良
バンプの高さばらつき → 接合不良
●(2)ボイド(Void)
アンダーフィル注入時の空洞 → クラック起点に
●(3)基板側パッドの汚染 / 酸化
→ 濡れ性不良で接合できない
●(4)熱問題
フリップチップはチップが表向きになるため、AIチップでは熱密度がボトルネックとなる。
●(5)高周波・電源ノイズ
バンプ配置でSI/PI/EMIが変動 → 解析とシミュレーションが必須
【5】フリップチップが主流になった理由
・高速信号に強い(配線長が最短)
・電源/GNDを面で取れる → 電源品質向上
・大I/O対応
・放熱が有利
・小型化に必須
・HBM・Chiplet・2.5D/3Dと相性が良い
特にGPU・AIチップ・HBMはフリップチップなしでは成立しないと言ってよい。
【6】製造プロセス(簡易フロー)
1.ウェハ上にUBM(下地金属)形成
2.バンプ形成(C4 / Cuピラーなど)
3.ダイシング
4.ピック&プレース
5.基板側とリフロー接合
6.アンダーフィル充填
7.モールディング
8.テスト
工程数は多く、歩留まりは複数工程に依存する。
【7】最新トレンド
● Cuピラーの主流化
AI時代の電流量にCuがマッチ。
● 再配線層(RDL)との組み合わせ強化
Fan-out / 2.5D と統合。
● CoWoS / InFO など先端パッケージの基盤技術として強化
● 熱問題解決のためのTIM・ベイパーチャンバー併用
● マイクロバンプ → Hybrid bonding(直接接合)へのシフト
(TSMC・Intel・Samsungで進行)
【8】まとめ(6-2)
フリップチップは:
・高速 × 高密度 × 高熱
・大電流 × 大帯域 という先端要件に応える中心技術。
C4 → Cuピラー → マイクロバンプ → Hybrid bonding へと進化し、
HBM・AIチップ・Chiplet時代を支える基盤になっている。
【理解チェック】
1.フリップチップがワイヤボンドより高速信号に強い理由は?
2.Cuピラーが採用される主なメリットを1つ挙げよ。
3.アンダーフィルはなぜ必須なのか?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



