【1】Fan-in(WLP:Wafer Level Package)とは
WLP(Wafer Level Package)はチップとほぼ同じサイズのパッケージを実現する方式。
「Fan-in」の名前の通り、
端子(ボール)がチップの面積内に収まる構造。
● 特徴
・超小型(スマホ・IoT向けに最適)
・ウェハレベルで実装まで完結 → 低コスト
・配線長が短く高周波に強い
・パッケージ厚が非常に薄い
● 課題
・I/O数の上限が小さい
・チップサイズが大きくなると適用困難
・熱拡散が弱く、高発熱デバイスには不向き
用途例: PMIC、RF、センサー、モバイル周辺IC。
【2】Fan-out(FO-WLP:Fan-out Wafer Level Package)とは
Fan-outは、WLPの欠点(I/Oが少ない)を解決するために生まれた技術。
特徴:
● チップの周囲に樹脂(モールディング)を形成し、
その上に再配線層(RDL)を作ることで、
端子をチップサイズより外側にFan-out(広げる)手法。
結果:
・I/O数が大きく増やせる
・パッケージ小型化が可能
・配線性能が高く、RF特性にも良い
【3】Fan-out の種類
●(1)Reconstituted Wafer(再構築ウェハ方式)
最も一般的な方式。
1.チップを樹脂に埋め込み “再構築ウェハ” を作成
2.RDL(再配線層)形成
3.バンプ形成
4.パッケージ完成
AppleのAシリーズチップでもFan-outが採用され、
スマホ市場で一気に広まった。
●(2)Panel Level Package(PLP)
Fan-outを 大面積パネル で処理する方式。
メリット:
・パネルサイズ → 生産性向上
・コスト低減効果が大きい
課題:
・パネルの反り
・RDL均一性
・装置標準化が未確立
今後最も成長する領域と見られている。
【4】Fan-out / Fan-in の違いと使い分け(実務向け)
|
項目 |
Fan-in(WLP) |
Fan-out(FO-WLP) |
|
I/O数 |
少ない |
多い(大幅に増加) |
|
パッケージサイズ |
チップと同等 |
チップより大きくできる |
|
コスト |
低い |
WLPより高い |
|
熱性能 |
弱い |
改善可能 |
|
高周波特性 |
〇 |
◎ |
|
用途 |
PMIC, RF, センサー |
モバイルSoC, AP, AI Edge, RF |
結論:
・小型&低コスト → Fan-in
・高I/O & 高性能 → Fan-out
【5】RDL(再配線層:Redistribution Layer)がコア技術
Fan-outの性能は RDL技術で決まる。
RDLとは:
・Cuやポリイミドを使った微細配線層
・チップのパッド位置を外側に再配線して出力を作る技術
重要要素:
・L/S(Line / Space)微細化
・スパッタ → 電解Cu → CMP の均一性
・クラックしない絶縁膜
・基板との界面信頼性
RDLの歩留まりがパッケージ歩留まりの大部分を支配する。
【6】Fan-out の主要課題(現場視点)
●(1)反り(Warping)
樹脂とチップのCTE差で反りが発生 → RDLが割れる
●(2)RDLクラック / 断線
薄膜で応力が集中しやすい
●(3)樹脂モールディングの均一性
空隙(ボイド)が歩留まりに直結
●(4)チップ位置ずれ
再構築ウェハでのチップ座標ズレ → RDL不良
●(5)熱信頼性
パワー系の熱には弱い → 放熱設計が重要
Fan-out成功の鍵はRDL × 樹脂 × 熱の三角バランス。
【7】最新トレンド(業界動向)
●Apple / Qualcomm が積極採用
スマホ用途で確立、他市場にも拡大中。
●FO-PLP(Panel Level)量産が加速
Samsung・ASE・SPILが先行。
●AI Edge向けの高性能Fan-out
I/O数の増加+RF特性改善で需要拡大。
●Chiplet × Fan-out の融合
インターポーザなしでチップ複数接続する研究が進行。
●Hybrid bonding との組み合わせ
次世代の高密度パッケージ技術へ。
【8】まとめ(6-3)
Fan-in(WLP)→ 超小型デバイス向け。I/O少なめで低コスト。
Fan-out(FO-WLP)→ I/O拡大 × 高性能化を実現する次世代パッケージ。
RDLが技術コアであり、反り・応力・歩留まりが勝負。
Fan-outは
スマホSoC・RF・AI Edge・Chiplet連結で今後さらに重要性が上がる。
【理解チェック】
1.Fan-in と Fan-out の最も大きな構造的違いは何か?
2.RDL(再配線層)がFan-outで重要な理由を説明せよ。
3.Fan-out が歩留まり低下しやすい要因を1つ挙げよ。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



