TECH COLUMN 技術コラム

6章:半導体パッケージング技術
6-5. 電磁特性(SI / PI / EMI)とパッケージ設計

材料・加工技術

公開日:

先端パッケージでは、「配線できるか」より「信号が壊れずに届くか」 が問題になる。
高速化・高密度化が進んだ結果、
・信号の歪み
・電源ノイズ
・電磁干渉(EMI) が性能・歩留まり・規格適合を左右する時代になった。

【1】SI / PI / EMI とは何か

まず3つの用語を整理する。

① SI(Signal Integrity:信号品質)

信号が正しい形・正しいタイミング・正しい電圧で届くかを扱う分野。

問題例:

・立ち上がりの鈍化

・リンギング

・ジッタ

・クロストーク

高速I/O(PCIe, DDR, SerDes)では最重要。

 

② PI(Power Integrity:電源品質)

電源が安定して・瞬時に・十分な電流を供給できるかを扱う。

問題例:

・電源電圧ドロップ

・同時スイッチングノイズ(SSN)

・グランドバウンス

AIチップやHBMでは致命的。

 

③ EMI(Electromagnetic Interference:電磁干渉)

不要な電磁波が、

・他回路に悪影響を与える

・規格(FCC / CISPRなど)に違反する とった問題。

製品出荷を止める最後の関門になりやすい。

【2】なぜ先端パッケージで問題が深刻化するのか

理由は以下の通り。

① 信号速度が極端に速い

数十Gbps~100Gbps級になると、
配線は単なる導線ではなく伝送線路になる。

 

② 配線密度が異常に高い

Fan-out、2.5D、3Dでは、隣接配線との距離が極端に短くなり、クロストークが急増。

 

③ 電流が大きすぎる

AIチップでは数百A級の瞬間電流 が流れる。

電源ネットワークが不安定だと即トラブル。

【3】SI(Signal Integrity)の代表的課題

  • インピーダンス不整合

・配線幅・厚み・誘電率のばらつき

・RDL設計ミス

→ 反射・リンギングが発生。

 

  • クロストーク

・隣接配線からの電磁結合

・特に高速差動信号で顕著

対策:

・配線間隔拡大

・GNDシールド配置

・レイヤ構成最適化

 

  • ジッタ・タイミングマージン不足

・配線遅延ばらつき

・温度・電圧変動

微細化が進むほど、設計余裕が消える。

【4】PI(Power Integrity)の代表的課題

  • 電圧ドロップ(IR Drop)

・電流増加 × 配線抵抗

・パッケージ内電源配線がボトルネック

 

  • 同時スイッチングノイズ(SSN)

・多数のトランジスタが同時にON/OFF

・電源・GNDが揺れる

 

  • 対策手法

・デカップリングキャパシタの最適配置

・電源・GNDプレーン強化

・Backside Power Delivery(BSPD)

・パッケージとチップの協調設計(Co-design)

【5】EMI(電磁干渉)の課題と対策

  • EMIが問題になる場面

・無線機器(5G, Wi-Fi)

・車載(ADAS)

・医療機器

・高速I/O製品

 

  • 主な対策

・GNDシールド構造

・メタルキャップ・シールド缶

・ノイズ源とアンテナの物理分離

・配線ループ面積最小化

・フィルタ・チョークの追加

EMI対策は最後にやると地獄 → 初期設計から組み込むのが鉄則。

【6】先端パッケージ別のSI / PI / EMI視点

  • Fan-out

・RDLが長くなりやすい → SI悪化

・電源配線が細い → PIが課題

対策:

・RDL幅・厚み最適化

・電源専用RDLレイヤ追加

 

  • 2.5D / Chiplet

・チップ間インターフェースが超高速

・HBMのPI設計が最難関

対策:

・ショート配線

・広帯域デカップリング

・CoWoSなど専用構造

 

  • 3D-IC

・TSVがSI/PI両面で影響

・熱と電源ノイズが連動

対策:

・TSV配置最適化

・電源専用TSV

・熱・電源・信号の同時最適化

【7】最新トレンド

・SI/PI/EMIの同時シミュレーション

・チップ+パッケージ+基板のフルCo-design

・AIによる配線・配置最適化

・Backside Power Delivery の本格導入

・高周波対応材料(低Dk / 低Df)の進化

【8】まとめ(6-5)

・高速・高密度化でSI/PI/EMIは避けて通れない

・信号・電源・電磁は相互に影響する

・初期設計からの組み込みが必須

・Fan-out、2.5D、3Dで課題は異なる

・Co-designとシミュレーションが競争力を決める

【理解チェック】

1.SIとPIの違いを一言で説明してください。

2.なぜ高速信号では配線を伝送線路として扱う必要があるのか?

3.EMI対策を設計初期から行うべき理由は何か?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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