【1】GAAとは何か(Gate-All-Around)
GAAは、チャネル(電流の通り道)をゲートが360°全方向から包み込む構造のトランジスタ。
従来のFinFETは三方位からの制御だったが、
GAAでは完全に囲むため、電流制御能力が圧倒的に高い。
つまり、微細化が進んでも
● リーク電流が増えない
● スイッチング特性が安定する
● 電力効率が高い
という大きなメリットがある。
2nm以降の主流構造となる見込み。
【2】なぜFinFETからGAAに移行するのか
FinFETが限界になる理由:
●(1)チャネル制御が不十分
微細化でFin(突起)が細く・低くなると
ゲートの制御力が弱まり、Short Channel Effect(SCE)が深刻化。
●(2)Variability(ばらつき)が大きくなる
Finの寸法と形状の“揺らぎ”が性能に直結。
●(3)リーク電流が増加
ゲート絶縁膜をこれ以上薄くできない。
GAAはこれらを解決するための構造として登場した。
【3】ナノシート構造とは(NanoSheet / NanoRibbon)
GAAの代表方式が ナノシート(NanoSheet)。
構造のイメージ:
● 薄いシート(板状チャネル)が数段積み重なる
● そのすべてをゲートが包み込む構造
● シート幅がチャネル幅に相当
特徴:
● シート幅を自由に調整できるため、性能のチューニングが容易
● 同じ面積で複数のチャネルを作れる → 高性能
● FinFETより電流駆動能力が高い
SamsungはMulti-Bridge Channel FET(MBCFET)として展開。
【4】GAAのメリット
【1】電気制御性が最強
→ ゲートが360°包むため短チャネル効果を抑制。
【2】リーク電流の大幅低減
→ 待機電力が下がり、バッテリ寿命改善。
【3】チャネル幅調整の自由度
→ シート幅を広げれば電流増、狭くすれば低消費電力。
【4】面積効率の向上
→ 同じ面積でも複数チャネルを積層できる。
【5】AI・HPC用の高電流要求に対応
→ 2nm以降のロジックに必須。
FinFETを横綱とすると、GAAは未来の横綱といえる存在。
【5】GAAの製造難易度(最大の壁)
ナノシートGAAは構造は優秀だが製造は非常に難しい。
代表的な課題:
●(1)チャネル(シート)の均一性
ナノシート幅がわずか数nm違うだけで電流特性が変わる。
●(2)スタック構造のエッチング
Si / SiGe の交互積層を選択的に除去してシートを形成
→ 極めて高度なエッチング技術が必要。
●(3)ゲートの埋め込み
ナノスケールの細い隙間に均一なゲート金属を埋める必要がある。
●(4)配線抵抗の急増
微細化で配線が細くなり、デバイスより配線がボトルネックになる。
●(5)熱問題
電流量が増えるため発熱が増加。
ナノスケールでの熱拡散モデルが重要。
GAAは「構造は理想」「製造は地獄」と言われるゆえん。
【6】世界のGAA開発状況(TSMC / Samsung / Intel)
■ Samsung:
– 世界初のGAA(3nm)量産を宣言
– ただし歩留まり課題の報道あり
– MBCFETブランド名称で展開
■ TSMC:
– 2nm(N2)でGAA採用予定
– 安定した歩留まりを最優先
– シート数・幅の最適化が鍵
■ Intel:
– 20A世代でGAA(RibbonFET)導入
– 高NA EUVも最初に採用すると宣言
– 協業ファウンドリビジネスの武器に
【7】GAAの次に来る技術(CFET など)
GAAの次として有力なのが CFET(Complementary FET)。
● nMOS と pMOS を横ではなく上下に積む構造
● 面積効率が飛躍的に向上する
● すでにIntelやIMEECが研究中
さらに未来技術として:
● 2D材料(MoS₂)
● CNT-FET
● フェロエレクトリックFET などが視野に入っている。
【8】まとめ
● GAAはFinFETの限界を超えるための次世代構造
● ナノシート構造で電気特性が劇的に向上
● 微細化によるリークや短チャネル効果を抑制
● ただし製造難易度が非常に高い
● 各社が2nm〜1.4nmで本格導入
● 次の時代はCFETや2D材料が候補
【理解チェック】
1.FinFET ではなく GAA が必要になる理由を簡潔に説明してください。
2.ナノシート構造の最大の利点は何ですか?
3.GAA製造で最も難しい工程を1つ挙げて説明してください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

