TECH COLUMN 技術コラム

5-3. High-k / Metal Gate(HKMG)技術の進化

材料・加工技術

公開日:

【1】HKMGとは何か

微細化が進むにつれ、従来使用されていた SiO₂ゲート絶縁膜 は限界を迎えた。
SiO₂膜厚を薄くするとゲート電界は強くなるが、あるポイントを超えると

 ● トンネル電流(リーク電流)が急増

 ● 電力消費が増加

 ● トランジスタの信頼性が低下 という問題が発生する。

この問題を解決するために導入されたのが、

High-k(高誘電率材料)+ Metal Gate(メタルゲート)構造 = HKMG(High-k Metal Gate)である。

微細化世代(45nm → 32nm → 22nm)を成立させた革命的技術といえる。

【2】High-k材料が必要になった理由

●(1)従来SiO₂の限界

ゲート絶縁膜としてのSiO₂は優秀だったが、膜厚を1nm以下にすると
電子が量子トンネル効果で素通りしはじめる。

ゲートリーク電流が増え、不良や発熱の原因に。

 

●(2)High-k材料(HfO₂など)の採用

High-k材料は 誘電率が高いため、物理膜厚を厚いまま、電気的には薄い膜と同じ効果を得られる。

つまり:

  • リーク電流を大幅に低減できる
  • 電気的性能を維持したまま微細化できる というメリットがある。

特に HfO₂(ハフニウム酸化膜)は、誘電率が適度に高く、Siとの相性も良いことから業界標準になっている。

【3】Metal Gateが必要になった理由

High-k材料を採用すると、従来のポリシリコンゲートでは以下の問題が発生した。

 ● ポリシリコンがHigh-kに不純物を与え、性能劣化

 ● ゲート抵抗が増加

 ● Work Function(仕事関数)調整が難しくなる

そのため、金属ゲート(Metal Gate)が導入された。

Metal Gateのメリット:

 ● Work Functionを自由に選べるため、nMOS / pMOSで最適化しやすい

 ● 抵抗が低く高速化

 ● High-kとの相性が良い

現在は TiN(窒化チタン) を中心に、複数金属を積層して仕事関数を調整するのが一般的。

【4】HKMGが微細化に与えたインパクト

HKMGは微細化のゲームチェンジャーであり、以下のメリットが得られた。

●(1)リーク電流の劇的低減

High-kにより物理膜厚を厚くできるため、リークが従来のSiO₂より 10〜100分の1 に低減。

→ 省電力化に大きく貢献。

 

●(2)トランジスタのスイッチング特性向上

Metal Gateはポリシリコンより抵抗が低い。
そのため

 ● ゲートのRC遅延が減る

 ● スイッチング速度が向上

 ● 高周波アプリケーションに有利 というメリットが生じる。

 

●(3)微細化の継続(Moore’s Lawの延命)

もしHKMGが無ければ、45nm以降の微細化は成立しなかった。
HKMGは現在のFinFET・GAA時代に至るまでの微細化の基盤技術 といえる。

【5】製造プロセス上の課題と進化

HKMGには以下の課題がある:

 ● High-kとSiの界面品質維持

 ● 金属ゲートの仕事関数調整

 ● 温度処理(アニール)の最適化

 ● 高圧縮・低ストレス膜の形成

先端ノードでは ゲートラスト(Gate Last)方式 が主流となり、
Metal Gateの形成を後工程に回すことで性能を確保している。

【6】最新トレンド:HKMG × GAA × AI時代の技術

最先端ノードでは、HKMGはさらに以下の方向に進化している。

 ● 高誘電率材料の多層化(HfO₂+Al₂O₃ など)

 ● ランダムテレグラフノイズ(RTN)低減技術

 ● Work-function微調整のための合金化

 ● GAAとの最適化設計

 ● AIチップ向けの高電流対応ゲート構造

GAA構造と組み合わせることで、微細化の限界突破を支える中核技術となっている。

【7】まとめ(5-3)

 ● SiO₂の限界を突破するためにHigh-kが導入

 ● リーク電流を劇的に低減

 ● Metal Gateにより電気特性と仕事関数を最適化

 ● HKMGがなければFinFET時代の性能は成立しなかった

 ● GAA世代でも必須の構造であり、今後も進化し続ける

【理解チェック】

1.High-k材料が必要になった理由を説明してください。

2.なぜポリシリコンゲートではHigh-kと組み合わせる際に問題が生じるのか?

3.Metal Gateの利点は何ですか?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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