【1】検査は最後の工程ではない
検査はしばしば、
・最後に不良をはじく工程
・出荷前の確認作業 と誤解される。
しかし実際には、検査は製造プロセス全体に影響を与えるフィードバック機構であり、
前工程・後工程・設計・品質をつなぐ役割を持つ。
検査を「出口の作業」と考える工場ほど、
・同じ不良を繰り返す
・原因特定が遅れる
・歩留まりが改善しない という状態に陥りやすい。
【2】なぜ検査は軽視されやすいのか
検査は、
・直接モノを作らない
・売上に見えにくい
・コストとして認識されやすい
という理由で、優先度が下がりやすい。
だが現場では、検査が弱いと、トラブルが大きく、遅れて顕在化する。
具体的には:
・不良流出
・顧客クレーム
・量産後の大量ロス
・夜中の緊急解析
・原因不明の再発
検査は、問題を未然に小さく止めるための装置でもある。
【3】検査・評価技術の本当の役割
検査・評価の役割は、大きく3つに分かれる。
●(1)良否を分ける
電気特性・外観・機能の合否判定。
最も分かりやすい役割だが、検査の価値はここだけではない。
●(2)不良の「原因」を特定する
・どの工程で
・何が
・どのように ズレたのか。
これを特定できなければ、歩留まりは絶対に改善しない。
検査は不良を説明できる状態にする技術でもある。
●(3)次の判断を決める
検査データは、
・工程条件の補正
・装置メンテナンス判断
・設計ルール修正 に使われる。
つまり検査は、製造・設計・品質の意思決定を支えるデータ源である。
【4】検査は「工程」ではなく「横断機能」
重要なのは、検査が特定の工程に閉じない点。
・前工程:インライン検査
・後工程:最終テスト
・開発 :特性評価
・量産 :SPC・歩留まり解析すべてに関与する。
どこか一つが弱いと、工場全体の判断精度が下がる。
検査は製造ライン全体を俯瞰する目である。
【5】検査技術は一枚岩ではない
検査と一言で言っても、中身はまったく別の専門領域。
例:
・電気特性検査
・外観検査
・故障解析(FA)
・信頼性評価
・データ解析
必要な知識・思考・スキルは大きく異なる。
7章を細かく分けている理由はここにある。
検査を一括りにすると、現場のリアルが消える。
【6】なぜ今、検査の重要性が急激に高まっているのか
背景には、明確な変化がある。
・微細化による許容幅の縮小
・EUVによる確率的欠陥の増加
・3D構造化による内部欠陥の不可視化
・AIチップの高電流・高熱密度
・チップレット化による複合歩留まり問題
「見えない不良」が急増し、従来の検査では追いつかなくなっている。
その結果、検査 × データ解析 × AIが不可欠な時代に入っている。
【7】7章で学ぶこと
7章では、
・どんな検査が
・どの工程で
・何のために行われ
・どう意思決定に使われるのか を、役割ごとに整理していく。
目的は一つ。
検査を受け身の作業から攻めの武器に変えること。
【8】まとめ(7-1)
・検査・評価は、不良をはじくための工程ではない
・工場の判断力そのものを支える中枢機能
・微細化・3D化・AI時代において重要性は増す一方
【理解チェック】
1.なぜ検査を最後の工程と考えるのは危険なのか?
2.検査データは、どのような判断に使われるか?
3.検査を一括りにすると、なぜ問題が起きるのか?
4.先端プロセスで検査が難しくなっている理由を1つ挙げよ。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。
