TECH COLUMN 技術コラム

7章:検査・評価技術(Inspection & Characterization)
7-1. 検査・評価技術の役割と全体像

材料・加工技術

公開日:

半導体は、どれだけ高度なプロセスで作っても、見えなければ、制御できないという世界で成り立っている。
検査・評価技術は、単なる良否判定ではなく、工場が正しい判断をし続けるための中枢機能であり、ここが弱いと、製造も設計も必ず迷走する。

【1】検査は最後の工程ではない

検査はしばしば、

・最後に不良をはじく工程

・出荷前の確認作業 と誤解される。

しかし実際には、検査は製造プロセス全体に影響を与えるフィードバック機構であり、

前工程・後工程・設計・品質をつなぐ役割を持つ。

 

検査を「出口の作業」と考える工場ほど、

・同じ不良を繰り返す

・原因特定が遅れる

・歩留まりが改善しない という状態に陥りやすい。

【2】なぜ検査は軽視されやすいのか

検査は、

・直接モノを作らない

・売上に見えにくい

・コストとして認識されやすい

という理由で、優先度が下がりやすい。

だが現場では、検査が弱いと、トラブルが大きく、遅れて顕在化する。

 

具体的には:

・不良流出

・顧客クレーム

・量産後の大量ロス

・夜中の緊急解析

・原因不明の再発

 

検査は、問題を未然に小さく止めるための装置でもある。

【3】検査・評価技術の本当の役割

検査・評価の役割は、大きく3つに分かれる。

●(1)良否を分ける

電気特性・外観・機能の合否判定。

最も分かりやすい役割だが、検査の価値はここだけではない。

 

●(2)不良の「原因」を特定する

・どの工程で

・何が

・どのように ズレたのか。

 

これを特定できなければ、歩留まりは絶対に改善しない。

検査は不良を説明できる状態にする技術でもある。

 

●(3)次の判断を決める

検査データは、

・工程条件の補正

・装置メンテナンス判断

・設計ルール修正 に使われる。

つまり検査は、製造・設計・品質の意思決定を支えるデータ源である。

【4】検査は「工程」ではなく「横断機能」

重要なのは、検査が特定の工程に閉じない点。

・前工程:インライン検査

・後工程:最終テスト

・開発 :特性評価

・量産 :SPC・歩留まり解析すべてに関与する。

どこか一つが弱いと、工場全体の判断精度が下がる。

検査は製造ライン全体を俯瞰する目である。

【5】検査技術は一枚岩ではない

検査と一言で言っても、中身はまったく別の専門領域。

例:

・電気特性検査

・外観検査

・故障解析(FA)

・信頼性評価

・データ解析

必要な知識・思考・スキルは大きく異なる。

7章を細かく分けている理由はここにある。

検査を一括りにすると、現場のリアルが消える。

【6】なぜ今、検査の重要性が急激に高まっているのか

背景には、明確な変化がある。

・微細化による許容幅の縮小

・EUVによる確率的欠陥の増加

・3D構造化による内部欠陥の不可視化

・AIチップの高電流・高熱密度

・チップレット化による複合歩留まり問題

「見えない不良」が急増し、従来の検査では追いつかなくなっている。

その結果、検査 × データ解析 × AIが不可欠な時代に入っている。

【7】7章で学ぶこと

7章では、

・どんな検査が

・どの工程で

・何のために行われ

・どう意思決定に使われるのか を、役割ごとに整理していく。

目的は一つ。

検査を受け身の作業から攻めの武器に変えること。

【8】まとめ(7-1)

・検査・評価は、不良をはじくための工程ではない

・工場の判断力そのものを支える中枢機能

・微細化・3D化・AI時代において重要性は増す一方

【理解チェック】

1.なぜ検査を最後の工程と考えるのは危険なのか?

2.検査データは、どのような判断に使われるか?

3.検査を一括りにすると、なぜ問題が起きるのか?

4.先端プロセスで検査が難しくなっている理由を1つ挙げよ。

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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