【1】先端ノードとは何か
先端ノードとは、半導体の微細化世代を示す技術ノード(Technology Node)のこと。
例:7nm → 5nm → 3nm → 2nm → 1.4nm …
しかし、現在の「nm」は昔のゲート長とは違い、
実際の物理寸法ではなく、世代名(ブランド名)に近い。
それでもこの数字には意味があり:
● 線幅・ゲートピッチの縮小
● 配線密度の増加
● 消費電力の低減
● 性能(周波数)が向上 という技術的進歩を示している。
【2】微細化が難しくなっている理由
7nm → 5nm までは FinFET で進んだが、
3nm 以下では物理限界が見えてくる。
主な理由:
●(1)Short Channel Effect
チャネルが短くなりすぎて、電流制御が困難になる。
●(2)リーク電流の増加
絶縁膜が薄くなり、電子がトンネルしてしまう。
●(3)Variability(ばらつき)が大問題
原子数レベルで構造が変わり、特性が動く。
●(4)抵抗・容量(RC)の壁
配線が細くなり、
・ 抵抗増
・ 配線遅延増(RC delay)
が顕著になる。
つまり、従来の微細化ルールが成立しなくなってきた。
【3】FinFETからGAA(Gate-All-Around)へ
2nm以降では FinFET の限界が来る。
理由:
FinFETはゲートで横3方向しかチャネルを制御できないため。
そこで登場したのが GAA(Gate-All-Around)。
特徴:
● ゲートがチャネルを完全に360°包み込む
● リーク電流が激減
● 小型化しても制御性が高い
● 性能・省電力でFinFETを大きく超える
TSMC、Samsung、Intel が2nm〜1.4nm世代で採用予定。
【4】3nm・2nm・1.4nm の技術的特徴比較
【3nm】(FinFET最終世代 / GAA混在)
– 微細化の限界が見え始める
– 配線抵抗が支配的に
– 電力は改善するが性能向上は小幅
【2nm】(GAA本格導入)
– チャネル制御が格段に向上
– 電力効率が大幅改善(20〜30%)
– 搭載トランジスタ数が一気に増加
– AIチップの主流へ
【1.4nm】(ポストGAAの入口)
– GAAの最適化が必須(ナノシート制御が極端に難しい)
– 配線材料の限界(Cuの抵抗上昇)
– EUVの物理限界が迫る
– 新材料・新構造(CFET、2D材料)が議論され始める
【5】最先端ノードが求められる理由
●(1)AIチップの爆発的電力需要
電力密度は従来比 10倍以上。
微細化 → 消費電力低減 → 性能向上は必須。
●(2)サーバ・データセンターのコスト構造
電力・冷却コストがボトルネックになる。
●(3)スマホ・PCのバッテリ寿命
同じ性能をより低電力で達成する必要がある。
●(4)半導体企業の競争力
TSMC、Samsung、Intelの3社が覇権を争う領域。
微細化は 国家戦略 にも直結する。
【6】先端ノードにおける主要な課題
● GAA の均一性(ナノシート幅の制御)
● 高アスペクト比エッチングの難しさ
● 配線抵抗 → Cuに限界、Ruthenium等へ移行検討
● Low-k材料の信頼性低下
● EUV stochastic defect
● 発熱(Power Density)が急増
● チップレット化による複雑性
特に今は配線の壁と熱の壁 が最も大きな課題。
【7】TSMC・Samsung・Intelの先端ノード比較
■ TSMC:
– 世界最大のファウンドリ
– 3nm → 2nm(GAA) → 1.4nmへ
– 歩留まりの高さが最大の強み
■ Samsung:
– 3nmでGAAを先行導入
– ただし歩留まり課題の指摘あり
– メモリ・ロジック両方を持つ総合メーカー
■ Intel:
– IDM 2.0戦略で復活狙い
– 20A(2nm相当)→18A(1.8nm相当)
– 高NA EUVの最初の導入を宣言
【8】未来予測:1nm以下はどうなるか
候補となる技術:
● CFET(Complementary FET)
→ nFET と pFET を上下に積む構造
● 2D材料(MoS₂など)
→ 原子1層のチャネルで短チャネル効果を抑制
● 光コンピューティングとの融合
● 量子領域への突入
微細化の終わり ではなく、微細化のやり方が変わる時代 に入ったと言える。
【9】まとめ
● 先端ノードは微細化世代を表す技術名称
● 3nm以降、FinFETでは限界 → GAAで突破
● 1.4nmではEU Vや材料も限界近く
● AI・データセンター需要が微細化を牽引
● 配線抵抗と熱が最大の壁
● 未来は CFET・2D材料・3D化へ向かう
【理解チェック】
1.なぜFinFETでは2nm以下が難しいのか?
2.GAAの最大の利点は何ですか?
3.先端ノードで配線抵抗が問題になる理由は?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

