■熱を逃がす材料は電気も通しやすい
熱対策材料として有名なものには、
● 銅
● アルミ
● グラファイト
● 金属プレート などがある。
これらは熱をよく伝える。
しかし同時に、電気も通すことが多い。
つまり、熱には有利。
電気には不利、という特徴を持つ。
■絶縁材料は熱を止めやすい
一方、
● PET
● PI
● 発泡体
● 一般樹脂
などは、電気を通しにくい。
つまり絶縁には有利である。
しかし、熱も伝えにくい。
つまり、絶縁には有利。
熱には不利、という特徴になる。
■熱と絶縁は本質的に相反する
ここが熱設計の難しいところである。
熱を逃がそうとすると、導電材料を使いたくなる。
しかし導電材料を使うと、絶縁が難しくなる。
逆に、絶縁を重視すると、熱が逃げなくなる。
つまり、熱と絶縁は本質的にトレードオフになりやすい。
■AIサーバーで起きていること
AIサーバーでは、GPUやCPUが大量の熱を発生する。
そのため、できるだけ効率よく熱を冷却装置へ逃がしたい。
しかし同時に、サーバー内部には高密度配線が存在する。
もし放熱材料が導通すれば、重大な故障につながる可能性がある。
そのため、AIサーバーでは
高放熱
高絶縁 を同時に満たす材料が求められる。
■EVで起きていること
EVではさらに厳しい。
バッテリーは数百Vクラスの電圧を扱う。
一方で、発熱も大きい。
つまり、熱は逃がしたい。
しかし漏電は絶対に許されない。
ここで求められるのが、絶縁放熱である。
■ESSでも同じ課題が発生する
ESSは大型化が進んでいる。
蓄えるエネルギー量が増えるほど、発熱量も増える。
そして、電圧も高くなる。
つまり、EVと同じく放熱と絶縁の両立が必要になる。
近年のESS火災対策でも、熱設計と絶縁設計は切り離せなくなっている。
■セラミックが注目される理由
この課題を解決する代表的な材料が、
セラミック系材料である。
例えば、
● アルミナ
● 窒化アルミニウム
● 窒化ホウ素 などである。
これらは、熱をある程度伝えながら、電気は通しにくい。
つまり、熱を流し電気を止めるという特性を持つ。
■しかし材料だけでは解決しない
ここで重要な誤解がある。
セラミックを使えば終わりではない。
実際には、
発熱体
↓
放熱材
↓
絶縁層
↓
冷却部材 という構造になる。
このとき、接触状態が悪いと、熱は流れない。
つまり、絶縁性能だけでなく、接触熱抵抗も重要になる。
■絶縁破壊は突然起きる
熱問題は徐々に悪化することが多い。
しかし絶縁破壊は違う。
ある瞬間、突然起きる。
そのため、絶縁設計では、余裕を持った設計が必要になる。
特に、
AIサーバー
EV
ESS では、長期信頼性が重要になる。
■熱膨張が絶縁を壊すこともある
発熱すると材料は膨張する。
しかし、
金属
樹脂
セラミック では膨張量が違う。
すると、界面に応力が発生する。
長期間繰り返すと、
● クラック
● 剥離
● 絶縁劣化 が発生することがある。
つまり、熱問題が絶縁問題を引き起こす。
■3D半導体でさらに難しくなる
3D半導体では、チップが縦方向に積層される。
すると、熱密度が上がる。
しかし、絶縁距離は短くなる。
つまり、より高い放熱性能と
より高い絶縁性能を同時に求められる。
ここが3D半導体の大きな課題の一つである。
■ロボットでも重要になる
人と接触するロボットでは、
モーター
バッテリー
制御基板が発熱する。
しかし、感電リスクは避けなければならない。
つまり、熱を逃がしながら人を守る必要がある。
今後ロボットが増えるほど、熱×絶縁の重要性は高まる。
■ウェアラブル機器でも同じ
人体に近い機器では、
発熱だけでなく、安全性も重要になる。
ウェアラブル機器では、熱と絶縁は切り離せない。
人体との距離が近いほど、両立の難易度は上がる。
■研究者視点 : 絶縁放熱は未来材料の中心テーマ
近年の材料開発では、
単純な高熱伝導材料より、
絶縁放熱材料への投資が増えている。
なぜなら、
AIサーバー
EV
ESS
3D半導体 のすべてが求めているからである。
■現場視点 : 絶縁性能は加工で壊れる
現場では、材料性能より怖いものがある。
それは、加工不良である。
例えば、
● バリ
● 異物
● ピンホール
● ラミネートズレ
● 端面露出 である。
カタログ上は絶縁でも、加工状態によって性能が変わる。
つまり、絶縁は材料だけでは決まらない。
■熱 × 絶縁の量産で起きやすい問題
量産工程では、
● 絶縁フィルムのズレ
● 金属箔露出
● 異物混入
● 圧縮ムラ
● 厚みばらつき
● 剥離
● クラック などが発生することがある。
これらは、熱性能だけでなく、安全性そのものに影響する。
■OTIS視点
OTISは絶縁材料メーカーではない。
放熱材料メーカーでもない。
しかし、
放熱材
絶縁材
粘着材
金属箔
を組み合わせ、量産で成立する構造へ加工する領域では貢献できる可能性がある。
特に、
● 高精度ラミネート
● 微細加工
● 異種材料積層
● 絶縁層付き放熱構造
● 自動化供給 では価値を発揮できる可能性がある。
■OTISでできること
OTISでは、
● 絶縁材加工
● 放熱材加工
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● 微細打ち抜き
● リール供給
● 自動化対応設計
などを通じて、熱と絶縁を両立する部材づくりに貢献できる可能性がある。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 絶縁材料そのものの開発
● セラミック開発
● 高電圧設計
● 電源設計
● 絶縁解析専業 を専門とする会社ではない。
しかし、熱と絶縁を両立する構造を量産で成立させる
という領域では重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ AIサーバー
★★★★★ EV・電池
★★★★★ ESS・蓄電システム
★★★★★ 3D半導体
★★★★☆ ロボット
★★★★☆ ウェアラブル機器
★★★★☆ 通信機器
■まとめ
熱を逃がしたい。でも電気は流したくない
これが熱×絶縁の本質である。
未来産業では、熱を逃がすだけでは足りない。
同時に、絶縁し、安全を守り、長期信頼性を確保する必要がある。
そのため、熱対策は材料選びだけでは終わらない。
構造、接触、加工、量産まで含めて成立して初めて、真の絶縁放熱設計になるのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



