■半導体製造では「冷却」と「加熱」が同時に存在する
例えばプロセスチャンバー内部は高温。
そのすぐ外側には、
●センサー
●シール
●配線
●制御部品
が存在する。
つまり、
中は熱くしたい。
外は熱くしたくない。
という構造になる。
そこで、
●断熱
●冷却
●シール
●熱遮蔽 を組み合わせる。
このような、熱を通したい場所と、通したくない場所を分ける技術が重要になる。
■ヒーターの熱を周囲へ逃がさない
プロセス部を加熱するとき、
ヒーターの熱が装置全体へ逃げれば、
●消費電力が増える
●周辺部品が高温になる
●熱膨張が増える
●温度安定まで時間がかかる という問題が起こる。
そこで、
必要な場所だけ加熱し、周囲へ熱を逃がさない構造が求められる。
ここでは、
●断熱材
●反射材
●空気層
●薄膜断熱部材 などが重要になる。
■一方で熱をすぐ逃がしたい場所もある
RF電源。
モータードライバー。
レーザー電源。
制御基板。
こうした部品では、発生した熱をできるだけ早く外へ逃がしたい。
つまり一つの半導体製造装置の中で、
熱を閉じ込める技術と、熱を逃がす技術が同時に必要になる。
■プラズマ装置では熱と電気が同時に問題になる
プラズマを使う装置では、高周波電力を使用する。
そのため、
●発熱
●高電圧
●電磁ノイズ
●絶縁 が同時に存在する。
例えば電極周辺では、熱を逃がしたい。
しかし電気的には絶縁したい。
さらに真空を維持したい。
つまり、
熱 × 絶縁 × 真空 × ノイズ という複合課題になる。
■絶縁材にも熱が関係する
絶縁フィルムや絶縁シートを使えば、電気を遮断できる。
しかし絶縁材を厚くすると、熱が逃げにくくなる場合がある。
薄くすれば熱には有利。
しかし、
●絶縁破壊
●ピンホール
●バリ
●異物
の影響を受けやすくなる。
つまり半導体製造装置でも、
熱は通したい。
電気は通したくない。
という要求が生まれる。
ここはOTISとの接点が大きい。
■真空装置では「漏れないこと」が最優先になる
半導体製造では、真空環境を使う工程が多い。
成膜。
エッチング。
イオン注入。
その他、多くの工程で真空が使われる。
真空を維持するためには、
●Oリング
●ガスケット
●シール材
●接合部 の品質が重要になる。
わずかな隙間でも、真空性能へ影響する。
つまり、熱だけでなく、気密性も重要になる。
■高温と真空の組み合わせがシール材を難しくする
真空チャンバー周辺では、温度が上がる場合がある。
シール材は、
高温。
圧縮。
真空。
薬品。
を同時に受けることがある。
その結果、
●硬化
●変形
●圧縮永久ひずみ
●ガス放出
●劣化 が問題になる。
つまりシール材は、漏れなければよいだけではない。
長期間、温度変化を受けても性能を維持する必要がある。
■真空ではアウトガスも問題になる
真空環境では、材料内部から放出される微量のガスも問題になる。
これを一般に、
アウトガス
と呼ぶ。
例えば、
●粘着材
●樹脂
●ゴム
●接着剤
から揮発成分が出ると、
チャンバー内部を汚染する可能性がある。
半導体製造では非常に高い清浄度が必要になるため、
真空中で何が出てくるか まで考えて材料を選ぶ必要がある。
つまり、
熱に強い。
貼れる。
絶縁できる。
だけでは不十分である。
■温度が上がるとアウトガスも増える可能性がある
材料を加熱すると、内部の揮発成分が出やすくなる場合がある。
そのため、
常温では問題ない粘着材でも、高温真空では使用できないことがある。
つまり真空装置向け部材では、
使用温度 × 真空度 × 材料 を組み合わせて評価する必要がある。
■クリーンルームでは異物も重大な問題になる
半導体製造では、小さな異物が製品歩留まりへ影響する。
そのため装置内部の部材には、
●粉が出にくい
●剥がれにくい
●摩耗しにくい
●カスが出にくい ことが求められる。
例えばグラファイト。
発泡体。
粘着材。
加工時や使用時に粉やカスが出れば、装置内部の汚染源になる可能性がある。
つまり加工品質は、寸法だけでなく、発塵性 まで関係する。
■打ち抜き端面から異物が出ることもある
フィルムや粘着材を打ち抜いた場合、
端面状態が悪いと、
●微細なカス
●糸引き
●剥離片
が発生する可能性がある。
一般製品なら外観問題で済む場合でも、
半導体製造装置では、 異物汚染 につながる可能性がある。
そのため、
●刃物
●金型
●加工条件
●カス取り の管理が重要になる。
■温度センサーの精度も重要になる
温度を精密に制御するためには、正確に測定する必要がある。
しかしセンサー自体が正しくても、
どこに取り付けるか で測定結果は変わる。
例えばヒーター直上。
少し離れた金属板。
冷却配管付近。
それぞれ温度は違う。
つまり、温度センサーの位置そのものが制御設計になる。
■センサーと対象物の接触も重要になる
温度センサーが対象物から浮いていれば、正しい温度を測れない可能性がある。
センサーと金属板の間に空気がある。
接着剤厚みがばらつく。
貼付位置が違う。
すると測定値に差が出る。
つまり温度計測にも、
接触界面
の問題が存在する。
ここでも、
薄膜粘着材。
熱伝導材。
高精度貼付。
が重要になる場合がある。
■温度を制御するには「熱容量」も考える
温度制御では、
すぐ温めたい。
すぐ冷やしたい。
という要求がある。
しかし大きな金属部品は熱容量が大きい。
温度を変えるのに時間がかかる。
一方、小さく薄い部品は温度変化が速い。
つまり、
熱容量が大きいほど安定しやすいが、応答が遅い。
熱容量が小さいほど応答は速いが、変動しやすい。
という関係がある。
■高速化すると熱変動も速くなる
半導体製造装置では、生産性向上のため、
●高速搬送
●高速位置決め
●高速処理
●高出力化 が進む。
するとモーターや電源の発熱も変動しやすくなる。
装置が高速になるほど、温度も動きやすくなる。
つまり生産性向上と温度安定性の両立が必要になる。
■モーターの熱が精度へ影響する
ウェハ搬送。
ステージ移動。
ロボットアーム。
これらにはモーターが使われる。
モーターは動けば発熱する。
発熱によってモーター周辺の金属部品が膨張する。
その結果、
●軸位置
●ステージ高さ
●アライメント位置
が変わる可能性がある。
つまり、駆動性能と熱精度 を同時に考える必要がある。
■冷却配管も装置精度へ影響する
水冷を使えば、装置内部の熱を効率よく取り除ける。
しかし冷却配管には、
●水温変動
●流量変動
●配管振動
●結露
という問題がある。
冷却水温が変われば、装置部品の温度も変わる。
流量が変われば、冷却能力も変わる。
つまり、
水冷を入れれば温度が安定する とは限らない。
冷却側も安定している必要がある。
■冷やしすぎると結露する
装置部品を周囲温度より大きく下げると、空気中の水分が結露する場合がある。
半導体製造装置では、水分や異物は大きな問題になる。
そのため、低温にすればするほどよい わけではない。
温度。
湿度。
露点。
を考えながら冷却する必要がある。
■熱交換器や冷却プレートとの界面も重要
冷却プレートを装置部品へ取り付ける場合、
その間には、
●TIM
●熱伝導シート
●グリス などが使われる場合がある。
ここで、
●面が反っている
●接触圧力が不足する
●気泡がある
●材料が厚すぎる と、熱を十分に冷却プレートへ移せない。
つまり半導体製造装置でも、
冷却装置の性能より前に、界面がボトルネックになる ことがある。
■高精度装置では温度を「均一にする」ことも重要
ある部品を冷却するとき、
一部分だけ強く冷やすと、その部分だけ収縮する。
すると部材が反る。
つまり、
平均温度を下げても、温度差を作れば精度が悪化する
可能性がある。
そのため、 温度を下げることより、温度分布を均一にすること が重要な場合がある。
■断熱材は熱を止めるだけではない
断熱材を使えば、
高温部分から周囲へ熱が伝わることを抑えられる。
しかし断熱材を入れることで、
●温度分布
●熱応答
●周辺寸法
●装置立ち上がり時間
も変わる。
つまり断熱材は、熱損失を減らす材料だけではなく、
装置の温度分布を作る材料でもある。
■ヒーター周辺では粘着材の耐熱性が重要になる
薄膜ヒーター。
センサー。
絶縁材。
これらを固定するために粘着材を使う場合がある。
しかし高温になると、
●粘着力低下
●軟化
●クリープ
●アウトガス
●剥離 が起こる可能性がある。
そのため、貼れる材料ではなく、
使用温度で長期安定する材料を選ぶ必要がある。
■熱サイクルで部材は何度も伸び縮みする
装置が稼働する。
温度が上がる。
停止する。
温度が下がる。
この繰り返しによって、
●金属
●フィルム
●粘着材
●シール材
が繰り返し伸び縮みする。
異種材料を積層していると、熱膨張差による応力が生じる。
その結果、
●剥離
●反り
●クラック
●位置ズレ
が起こる可能性がある。
つまり半導体製造装置では、初期状態だけでなく、
温度サイクル後の状態を見る必要がある。
まとめ
加熱と冷却が同時に存在すること。
真空・シール・アウトガス・クリーン環境という複合条件。
温度センサーの位置や接触状態が測定精度そのものを左右すること。
冷却配管や結露といった、冷やすこと自体が新たな問題を生む可能性。
そして温度サイクルの繰り返しによって、部材が少しずつ疲労していくこと。
これらはすべて、装置内部の「見えない変化」である。
一つひとつは小さな現象に見えるかもしれない。
しかし、これらが積み重なることで、装置の温度分布や位置精度は静かに崩れていく。
後編では、こうした微小な熱・寸法の変化が、なぜ半導体という超微細な製品の精度にまでつながっていくのかを見ていく。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

