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8. 産業別応用編 成長産業で熱問題はどう現れるか
8-8. エネルギー機器の熱問題(前編) ― 電力を大きく扱うほど、「熱を逃がしながら、電気を止める」技術が重要になる ―

材料・加工技術

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8. 産業別応用編 成長産業で熱問題はどう現れるか<br>8-8. エネルギー機器の熱問題(前編) ― 電力を大きく扱うほど、「熱を逃がしながら、電気を止める」技術が重要になる ―

エネルギー機器では、大きな電力を扱う。
発電する。
変換する。
蓄える。
送る。
使う。
その途中には、
• インバーター
• コンバーター
• パワー半導体
• 変圧器
• バッテリー
• 電源回路
• 充電器
など、多くの機器が存在する。
そして電力を扱えば、必ず損失が生まれる。
その損失の多くは、熱 になる。
つまりエネルギー機器では、
電力変換効率を上げること と、
発生した熱をどう処理するかが常にセットになる。
さらに高電圧・大電流を扱うため、
熱は通したい。
電気は通したくない。
という要求も非常に強い。
ここがエネルギー機器の熱対策の大きな特徴である。

■エネルギー機器では何が熱を出すのか

代表的な熱源には、

● IGBT

● SiC

● GaN

● MOSFET

● ダイオード

● トランス

● インダクター

● コンデンサー

● バスバー

● バッテリー

● 接続端子

などがある。

これらはすべて、電気を変換したり、流したり、蓄えたりする過程で発熱する。

特に、

大電力を小さな機器で扱う ほど、発熱密度は高くなる。

■パワー半導体が熱設計の中心になる

インバーターやコンバーターでは、

パワー半導体

が重要になる。

電気を高速でON・OFFし、

直流と交流を変換する。

電圧を変える。

電力を制御する。

しかしスイッチングするたびに損失が発生する。

その損失が熱になる。

つまり、

電力変換性能を上げるほど、パワー半導体の熱管理が重要になる。

■SiC・GaNで発熱問題はなくなるのか

SiCやGaNなどの次世代パワー半導体は、高効率化や高周波化に有利である。

損失を減らすことができれば、発熱も減らせる。

しかし、

熱問題そのものがなくなるわけではない。

高効率になれば、

装置をさらに小型化する。

さらに高出力化する。

という方向へ進む。

その結果、

単位体積あたりの発熱密度

が高くなる場合がある。

つまり半導体性能が上がるほど、

冷却要求も高度になる。

■小型化すると熱を逃がす面積が減る

例えば大型インバーターを小型化する。

部品同士の距離が近くなる。

冷却面積も小さくなる。

空気流路も狭くなる。

すると、

同じ発熱量でも、

熱が集中しやすくなる。

つまり、

小型化と、熱対策 は簡単には両立しない。

■パワー半導体は冷却プレートへ熱を逃がす

高出力パワー半導体では、

半導体
 ↓
絶縁層・TIM
 ↓
金属ベース
 ↓
冷却プレート
 ↓
空気または冷却液

という熱経路を使う。

ここで重要なのは、半導体と冷却プレートの間 である。

高性能な冷却プレートがあっても、

界面の熱抵抗が大きければ十分に冷えない。

■「絶縁しながら熱を通す」が最大の課題の一つ

パワー半導体では、

冷却プレートは金属。

半導体側には高電圧。

という構造になる。

そのため、

電気的には絶縁したい。

熱的には密着させたい。

という相反する要求が生まれる。

ここでは、

● 絶縁性TIM

● セラミック基板

● 絶縁フィルム

● 熱伝導性絶縁シート

などが使われる。

■絶縁材を厚くすると熱が逃げにくくなる

絶縁性能を高めるため、絶縁材を厚くしたくなる。

しかし一般に厚みが増えれば、熱が通る距離も長くなる。

つまり、

厚い
→ 絶縁には余裕が出る
→ 熱には不利になりやすい

薄い
→ 熱には有利
→ 絶縁信頼性への要求が厳しくなる

という関係がある。

そのためエネルギー機器では、

必要な絶縁性能を確保しながら、できるだけ熱抵抗を小さくする

設計が重要になる。

■バリや異物が絶縁性能を壊す

薄い絶縁フィルムを使う場合、

● 金属バリ

● 異物

● 突起

● 傷

が大きな問題になる。

材料そのものには十分な絶縁性能があっても、

加工後に傷が入れば性能は変わる。

つまり、

材料の絶縁性能だけではなく、

加工された部材としての絶縁性能 を見る必要がある。

■TIMでも気泡・浮きが問題になる

パワーモジュールと冷却プレートの間にTIMを使う場合、

● 気泡

● 反り

● 厚み差

● 接触圧力不足

があれば、熱抵抗が増える。

高出力化するほど、一部分の熱抵抗増加でもホットスポットが生まれやすい。

つまり、

小さな接触不良が、大きな電力設備の性能を制限する ことがある。

■熱サイクルが大きな問題になる

エネルギー機器では、

高負荷。

低負荷。

停止。

再起動。

が繰り返される。

そのたびに、

熱くなる。

冷える。

を繰り返す。

すると、

● 半導体

● 金属

● セラミック

● はんだ

● 接着材

● 絶縁材

がそれぞれ異なる割合で膨張・収縮する。

この繰り返しによって、熱応力が発生する。

 

温度を下げるだけでは不十分

平均温度が低くても、

短時間で、

50℃
 ↓
100℃
 ↓
50℃

と繰り返せば、材料へ大きな応力がかかる場合がある。

つまりエネルギー機器では、

最高温度だけでなく、温度差と温度変化回数も重要になる。

■接着層や積層界面が弱点になる場合がある

異種材料を積層すると、

熱膨張率が違う。

温度サイクルを繰り返すと、

界面に応力がかかる。

その結果、

● 剥離

● クラック

● 浮き

が起こる可能性がある。

浮けば熱抵抗が増える。

つまり、

機械的な劣化が、熱性能劣化へつながる。

■まとめ

ここまで見てきたように、エネルギー機器の熱問題は、パワー半導体を中心に生まれる。

電力を変換すれば必ず損失が生まれ、その損失の多くは熱になる。

SiCやGaNといった次世代パワー半導体で効率が上がっても、装置はさらに小型化・高出力化する方向へ進むため、発熱密度という観点での難しさは残り続ける。

 

そしてエネルギー機器には、高電圧を扱うがゆえの強い要求がある。

熱は冷却プレートへ逃がしたい。

しかし電気は絶対に通したくない。

この「熱は通し、電気は止める」という相反する条件を、絶縁材やTIMの厚み設計でどう両立させるかが核心になる。

 

さらに、高負荷・低負荷・停止を繰り返す熱サイクルは、異種材料の膨張・収縮差を通じて、静かに接着層や積層界面を弱らせていく。

初期には問題なく見えても、繰り返しの中でいずれ剥離やクラックへつながる可能性がある。

 

後編では、この熱と絶縁の課題に、EMIや防水、長期信頼性といった要素がどう重なり、実際のESSや充電設備、水素設備といった応用の中でどう扱われていくのか。

そして、それを量産としてどう成立させ、OTISがどのような役割を担うのかを見ていく。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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