■粘着材も厚みを持っている
粘着材は薄く見える。
しかし積層すると、全体厚みに効いてくる。
さらに粘着材が熱経路へ入れば、
熱抵抗
にもなる。
つまり、
薄くしたい。
でも固定したい。
段差へ追従したい。
という要求がある。
■部分粘着という考え方
全面に粘着材を入れる必要がない場合、
● 外周だけ
● 一部分だけ
粘着材を配置することで、
● 重量
● 厚み
● 熱抵抗
を減らせる可能性がある。
つまり、
粘着材をどこに置くか も熱設計になる。
■部材を一体化すると組立工程を減らせる
例えば、
グラファイト。
絶縁フィルム。
粘着材。
を別々に貼るとする。
これをあらかじめ積層し、
一つの部材として供給すれば、
顧客は一度貼ればよい。
つまり、
複合機能部材化 によって組立工程を減らせる。
■スマートデバイスは一体化との相性がよい
製品内部が狭いほど、
部品点数を減らしたい。
貼付工程を減らしたい。
そのため、
熱+絶縁+粘着
熱+EMI+固定
のような一体部材との相性がよい。
ここはOTISの加工技術との接点が大きい。
■ただし一層増えるだけで厚くなる
一体化は便利である。
しかし、
絶縁フィルムを追加する。
粘着層を追加する。
保護層を追加する。
たびに厚みが増える。
スマートデバイスでは、
50μm増えた
こと自体が設計問題になることがある。
つまり一体化では、
機能数ではなく、必要最小限の積層 を考える必要がある。
■異形加工が多い
スマートデバイス内部は、
完全な四角形だけではない。
カメラを避ける。
コネクターを避ける。
アンテナを避ける。
ネジを避ける。
その結果、
● 開口
● 切り欠き
● 細い部分
● 複雑な外形
が増える。
つまり、材料性能だけでなく、
異形へ精密加工できることが重要になる。
■細い部分では熱性能と加工性が両方問題になる
熱を筐体へ逃がすため、細長いグラファイト形状を作るとする。
細くすれば狭い隙間を通せる。
しかし、
● 破れやすい
● 剥離時に変形しやすい
● 熱の通る断面も小さくなる
という問題がある。
つまり、
細くすれば配置しやすい。
しかし熱も流れにくく、加工も難しくなる。
というトレードオフがある。
■自動化供給も重要になる
スマートデバイスは大量生産される。
大量の薄膜部材を、一枚ずつ手作業で貼ることは現実的ではない。
そのため、
● リール供給
● 自動剥離
● 自動吸着
● 高精度貼付
が重要になる。
つまり部材は、熱性能が良いだけではなく、
自動機で扱える 必要がある。
■非常に薄い部材ほど自動吸着が難しくなる
薄いグラファイト。
薄いフィルム。
柔らかいTIM。
これらは、
● 反る
● たわむ
● 静電気で貼り付く
● 吸着時に変形する
可能性がある。
そのため、
● キャリア
● 剥離ライナー
● 吸着面
● 部材配置
まで考える必要がある。
■静電気も問題になる
薄膜フィルムや剥離ライナーを扱うと、静電気が発生する場合がある。
静電気によって、
● 部材が再付着する
● 異物を吸着する
● 搬送姿勢が乱れる
可能性がある。
スマートデバイスでは部品が小さいため、小さな異物でも問題になる。
■外観品質も厳しい
スマートフォンやウェアラブルは、一般消費者が直接見る製品である。
内部部材であっても、
● はみ出し
● 浮き
● 反り
によって外装へ影響すれば、外観不良につながる。
つまり、
熱性能だけでなく、製品外観も加工精度に左右される。
■研究者視点 : スマートデバイスの熱問題は「熱量」より「空間」の問題になりやすい
同じ熱量でも、大型装置なら大きなヒートシンクを置ける。
スマートデバイスでは置けない。
つまり、
冷却能力を増やす余地が少ない。
そのため、
● 熱を広げる
● 熱源位置を変える
● 筐体を熱経路にする
● 消費電力を制御する
など、製品全体で熱を設計する必要がある。
■現場視点 : 0.1mmの部材変更が、熱と組立の両方を変える
TIMを0.1mm厚くする。
すると段差には追従しやすくなる。
しかし熱抵抗が増える可能性がある。
絶縁フィルムを薄くする。
すると省スペースになる。
しかし加工や絶縁信頼性が難しくなる。
つまりスマートデバイスでは、
数十μmの設計変更 が、
熱・強度・組立・安全性 へ同時に影響する。
■設計時に確認すべきこと
スマートデバイスの熱対策では、少なくとも次を確認する必要がある。
熱源
● SoCはどの程度発熱するか
● 通信時はどう変わるか
● 急速充電時はどうか
● カメラやバッテリーとの熱干渉はないか
熱拡散
● どこへ熱を広げるか
● グラファイトが適しているか
● 金属箔が適しているか
● ベイパーチャンバーが必要か
人体・外装
● 人が触る面はどこか
● 表面温度は高くならないか
● 熱をバッテリー側へ流していないか
● AR・VRでは顔側へ熱が来ていないか
絶縁・EMI
● 金属箔の絶縁は十分か
● アンテナ特性へ影響しないか
● EMI材と熱拡散材を兼用できるか
薄膜
● 総積層厚みはどの程度か
● 各層を薄くできるか
● シワ・反りはないか
● 異形加工できるか
粘着・固定
● 全面粘着が必要か
● 部分粘着できるか
● 高温でずれないか
● 粘着層が熱抵抗になっていないか
防水
● 密閉によって熱がこもらないか
● シール材配置は適切か
● 外装へ熱を逃がせるか
量産
● リール供給できるか
● 自動剥離できるか
● 薄膜部材を安定吸着できるか
● 複数材料を一体化できるか
スマートデバイスでは、
熱・薄さ・重量・電気・防水・量産 を同時に考える必要がある。
■OTIS視点 : スマートデバイスは「薄膜加工」の価値が最も見えやすい市場の一つ
OTISは、
スマートフォンメーカーではない。
SoCメーカーでもない。
ベイパーチャンバーメーカーでもない。
しかしスマートデバイス内部には、
● グラファイト
● 銅箔
● アルミ箔
● TIM
● 絶縁フィルム
● EMI材
● 粘着材
● シール材
など、多数の薄膜材料が使われる。
しかも、
薄い
小さい
複雑な形
高精度
大量生産
という要求がある。
ここはOTISとの相性がよい。
■OTISが狙うべき場所
完成したスマートフォンそのものではない。
狙うべきなのは、高発熱部品の周辺にある薄膜機能部材である。
例えば、
● SoC周辺TIM
● グラファイト熱拡散部材
● 銅箔・アルミ箔熱拡散部材
● バッテリー周辺絶縁材
● カメラ周辺断熱・放熱部材
● EMI+放熱部材
● 防水シール材
● ウェアラブル向け柔軟熱対策部材
である。
■「材料を切る」だけでは価値が足りない
材料メーカーからグラファイトを買う。
図面どおりに切る。
それだけでは競争になりやすい。
OTISが価値を出すには、
グラファイト
+
絶縁材
+
粘着材
を高精度に積層する。
必要部分だけ粘着化する。
自動貼付できるリール形態にする。
つまり、
材料を顧客工程で使える部品へ変える ところまで踏み込む必要がある。
■OTISでできること
OTISでは、
● グラファイト加工
● TIM加工
● 銅箔加工
● アルミ箔加工
● 絶縁フィルム加工
● EMI材加工
● 粘着材加工
● シール材加工
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 薄膜加工
● 異形加工
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● 部分ラミネート
● ハーフカット
● リール・ツー・リール加工
● 自動貼付向け供給形態
● 複数機能材の一体化
などを通じて、
スマートデバイスに使われる高機能薄膜材料を、量産可能な部品へ変える
ことに貢献できる。
■OTISの専門外
OTISは、
● スマートフォン本体設計
● SoC設計
● アンテナ設計
● ベイパーチャンバー本体設計
● バッテリーセル開発
● スマートデバイス全体の熱設計
を専門とする会社ではない。
必要に応じて、材料メーカー、デバイスメーカー、冷却部材メーカーとの協業が必要になる。
■この技術が重要になる市場
★★★★★ スマートフォン
★★★★★ AR・VR・XR機器
★★★★★ スマートウォッチ
★★★★★ ウェアラブルデバイス
★★★★☆ タブレット
★★★★☆ 小型エッジAI機器
★★★★☆ ワイヤレスイヤホン
★★★★☆ 携帯型ゲーム機
■まとめ
スマートデバイスの熱問題は、「冷却する空間がない」ことから始まる
スマートデバイスは、
高性能になっている。
しかし、
薄くなる。
軽くなる。
防水になる。
バッテリーも大きくなる。
つまり、
熱は増えるのに、熱対策へ使える空間は減っている。
だから、
大きなヒートシンクを追加する。
大きなファンを付ける。
という方法は使いにくい。
代わりに、
グラファイトで熱を広げる。
ベイパーチャンバーで熱を拡散する。
金属箔で熱を誘導する。
人体やバッテリー側には断熱する。
絶縁とEMIも同時に成立させる。
という、数十μmから数mmの熱設計が重要になる。
そして、その部材は、
薄いだけでは足りない。
複雑な形へ加工できる。
位置が合う。
反らない。
剥がれない。
自動で貼れる。
大量生産できる。
必要がある。
つまりスマートデバイスでは、材料性能と微細加工技術を切り離せない。
OTISが狙うべきなのは、スマートデバイスそのものではない。
その内部にある、
熱・薄膜・絶縁・EMI・粘着・防水・微細加工・自動化
という共通課題である。
製品が薄くなればなるほど、
最後に残るのは、
「この数十μmをどう使うか」という設計になる。
そしてそこは、
精密加工会社が最も価値を出しやすい場所の一つ なのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません


