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9-3. 量産時の貼り合わせを考えていない(後編) ― 試作で貼れたことと、量産で安定して貼れることは別である ―

材料・加工技術

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9-3. 量産時の貼り合わせを考えていない(後編) ― 試作で貼れたことと、量産で安定して貼れることは別である ―

前編では、試作で貼れたものが量産で貼れなくなる理由を見てきた。
位置ズレ。気泡。圧着条件。材料の伸び。剥離。吸着。形状認識。

試作では人が補正できるが、量産ではその判断を毎回人に頼れない。

では、どうするか。

一つは、部材側で貼付回数そのものを減らすこと。
一つは、供給形態を設備インターフェースとして設計すること。
そして、一個の寸法精度ではなく、分布とばらつきで管理すること。

後編では、
複数部材の一体化とその限界。
バラ品供給とリール供給の違い。
工程能力、金型摩耗、材料ロット差、作業者差。

さらに、実際に起きた失敗事例を見ていく。
試作10台は成功したのに、量産500台で温度がばらついた例。
熱性能は良いのに、自動機で剥離できなかった例。

最後に、材料と設備の間で加工会社が担える領域を整理する。

■複数部材を別々に貼るほどズレの機会が増える

例えば、

絶縁フィルム。

TIM。

グラファイト。

粘着材。

をそれぞれ別工程で貼る。

各工程に±0.2mmの貼付誤差があるとする。

すると最終的な相対位置はさらにばらつく可能性がある。

一方、あらかじめ高精度に積層して一部材化できれば、顧客側の貼付回数を減らせる。

つまり、部材の一体化は熱性能だけでなく、位置精度安定化にも意味がある。

■ただし一体化にも限界がある

複数部材を一体化すると、

● 工程削減

● 位置精度向上

のメリットがある。

 

しかし、

● 厚み増加

● 反り

● 熱抵抗増加

● 剥離難易度上昇

が起こることもある。

そのため、何でも一体化すればよいわけではない。

どこまで加工メーカー側で一体化し、どこから顧客工程に残すかを考える必要がある。

■バラ品供給が量産を難しくする場合がある

数mmの小さなTIMを、袋に入れてバラ品で供給する。

顧客が一枚ずつ取り出す。

向きを確認する。

貼る。

少量なら対応できる。

しかし数量が増えると、

● ピックアップ

● 部材方向

● 異物

● 作業時間

が問題になる。

その場合、リール供給の方が自動化しやすい。

■リール供給は単なる梱包ではない

リール供給では、

部材ピッチ。

キャリア幅。

ライナー。

剥離力。

部材姿勢。

巻き方向。

などを決める必要がある。

つまりリールは、

梱包形態ではなく、設備インターフェース

である。

ここを意識すると、加工会社の役割が変わる。

■貼り合わせ精度は、最終製品の機能精度になる

絶縁材が0.5mmずれる。

TIMが0.3mmずれる。

グラファイトが0.5mmずれる。

これらは図面上の寸法不良に見える。

しかし実際には、

絶縁。

放熱。

EMI。

防水。

といった機能へ影響する。

つまり、貼り合わせ精度は外観品質ではなく機能品質である。

■貼り合わせのばらつきは温度ばらつきになる

同じ材料。

同じ製品。

なのに、

製品Aは70℃。

製品Bは75℃。

製品Cは80℃。

となる。

この原因が材料ロットではなく、貼付状態の違いということもある。

つまり量産では、

熱性能のばらつき=貼り合わせ品質のばらつき

である可能性も見る必要がある。

■検査できない不良もある

貼り付けた後、

外観はきれい。

位置も合っている。

しかし内部に小さな気泡がある。

圧縮状態が一部違う。

これは外観だけでは分からない場合がある。

そのため、すべてを完成後検査で保証するのは難しい。

量産では、検査だけでなく、不良が発生しにくい工程を作ることが重要になる。

■工程能力を見る必要がある

一個目が図面どおり。

十個目も図面どおり。

それだけでは量産安定性は分からない。

必要なのは、長期間のデータを見ることである。

位置。

厚み。

貼付精度。

気泡。

これらがどの程度ばらつくのか。

つまり量産では、平均値だけでなく分布を見る必要がある。

■金型摩耗も貼付精度へつながる

打ち抜き金型は使い続ければ摩耗する。

すると、

外形。

穴位置。

バリ。

が少しずつ変化する可能性がある。

その部材を自動貼付する場合、外形変化が画像認識や位置決めへ影響することもある。

つまり加工工程の変化が、その後の貼付工程へ連鎖する。

■材料ロット差も量産では無視できない

同じ品番の材料でも、

● 厚み

● 硬さ

● 剥離力

● 表面状態

に一定のばらつきが存在する場合がある。

試作では一つの材料ロットだけを使っている。

量産では複数ロットを使う。

そこで初めて問題が出ることがある。

つまり、試作評価は材料ロットの一例にすぎないと考える必要がある。

■作業者差を工程で吸収する

手作業が残る場合でも、作業者差をできるだけ小さくすることが重要になる。

例えば、

位置決め治具。

タブ。

貼付基準穴。

剥離しやすいライナー。

を設ける。

作業者の技能だけに頼らず、誰でも同じ状態を作りやすくする。

つまり良い工程とは、上手な人が作れる工程ではなく、普通の人でも安定して作れる工程である。

■失敗例:試作10台は成功、量産500台で温度ばらつき

開発段階では10台を手作業で組み立てた。

すべて良好な温度だった。

量産に入り、自動貼付へ変更した。

すると一部製品だけ温度が高い。

調べると、

TIM貼付位置。

圧着条件。

気泡。

にばらつきがあった。

材料は同じ。

設計も同じ。

しかし製造方法が変わったことで熱性能が変わった。

これは、試作条件を量産へそのまま置き換えられると考えた失敗である。

■失敗例:熱性能は良いが剥離できない

非常に柔らかく、熱性能の高いTIMを採用した。

試作では人がピンセットで剥がして貼れた。

しかし自動機ではライナーから安定して剥離できない。

部材がライナーへ残る。

変形する。

タクトが出ない。

結果、材料変更が必要になった。

つまり、採用判断時に供給形態を見ていなかったのである。

■失敗例:全面粘着したら気泡が増えた

位置ズレ防止のため全面粘着にした。

固定力は高くなった。

しかし大面積部材を貼ると、中央部へ気泡が残りやすくなった。

熱性能は逆に悪化した。

つまり、

固定性能を改善した結果、

接触熱性能を悪化させてしまった。

熱対策では、一つの機能改善が別の機能を壊さないかを見る必要がある。

■研究者視点:量産では「平均性能」より「ばらつき」が重要になる

試作では最高性能を確認することが重要である。

量産では、それに加えて、

最悪値。

ばらつき。

経時変化。

を見る必要がある。

例えば平均温度が70℃でも、

一部製品が85℃になるなら問題になる。

つまり量産では、最高性能ではなく、最低保証性能をどう作るかが重要になる。

■現場視点:完成品を見るだけではなく、貼付工程を見る

温度不良が出た。

材料を変更する。

その前に、貼付工程を見る。

剥離角度。

吸着方法。

貼付速度。

ローラー圧力。

作業者動作。

を見る。

すると原因が材料ではなく工程にあることがある。

熱問題でも、現物・現場・現工程を見ることが重要である。

■OTIS視点:量産貼り合わせはOTISの主戦場

材料メーカーは、高性能な材料を開発する。

装置メーカーは、高性能な貼付設備を作る。

その間に必要なのが、

設備で扱える形に材料を変えること

である。

OTISが担えるのは、

● 外形設計

● 部分粘着

● ハーフカット

● キャリア設計

● リール化

● 積層

● 位置精度管理

などによって、材料を量産工程へつなぐこと。

ここは加工会社の価値が最も出やすい領域の一つである。

■図面どおりに切るだけでは足りない

顧客から図面を受け取る。

そのまま加工する。

もちろん、それも重要である。

しかし量産性まで考えるなら、

「この細い形状では剥離時に変形しませんか」

「この全面粘着では気泡が残りませんか」

「この部材はリール化した方が自動化しやすくありませんか」

という提案ができる。

つまり加工会社は、図面を再現する会社から、量産工程を成立させる会社へ進める。

■加工会社と設備メーカーをつなぐ意味

自動化を成立させるには、

部材だけでは足りない。

設備だけでも足りない。

部材と設備の相性が必要になる。

 

例えば、

OTIS
→ リール部材を設計・加工

 

設備メーカー
→ 剥離・吸着・貼付装置を設計

 

顧客
→ 実際の量産条件を提示

 

この三者で設計すれば、量産立ち上げの精度を高められる。

つまり、部材+設備+顧客工程を一体で見ることが重要になる。

■OTISでできること

OTISでは、

● 高精度打ち抜き

● 薄膜加工

● 微細加工

● TIM加工

● グラファイト加工

● 絶縁フィルム加工

● 粘着材加工

● 部分粘着

● 開口加工

● スリット加工

● ハーフカット

● 高精度ラミネート

● 異種材料積層

● キャリア設計

● リール・ツー・リール加工

● 自動貼付向け部材設計

● 画像検査

● 量産条件の安定化

などによって、熱対策材料を量産貼付しやすい部材へ加工することができる。

■OTISの専門外

OTISは、

● 自動貼付装置そのものの設計・製造

● ロボット制御

● 画像認識アルゴリズムそのものの開発

● 熱材料そのものの開発

を専門とする会社ではない。

必要に応じて、設備メーカー、材料メーカー、顧客と協業する。

OTISが担うべきなのは、材料と量産設備の間で、部材側を成立させることである。

■まとめ:試作で貼れたことは、量産できる証明ではない

試作では、人が補正できる。

位置がずれれば直す。

気泡があれば抜く。

剥がれなければゆっくり剥がす。

しかし量産では、その判断を毎回人に頼ることはできない。

必要なのは、

位置が合う。

気泡が入りにくい。

剥がしやすい。

吸着しやすい。

変形しにくい。

自動で貼れる。

そして何万個作っても同じ状態になる。

という部材と工程である。

つまり、熱対策材料の量産化では、材料性能だけでは足りない。

貼り合わせそのものを設計しなければならない。

試作で一個うまく作ることと、量産で一万個同じ状態を作ることは、

まったく別の技術である。

そして熱性能を製品性能として成立させるためには、後者の技術が必要になる。

だから量産時の熱対策では、

「この材料は冷えるか」だけでなく、「この材料を毎回同じ状態で貼れるか」

まで考えて、初めて設計が完成するのである。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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