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9-4. 自動化工程に乗らない(前編) ― 高性能な部材でも、自動機で扱えなければ量産には使えない ―

材料・加工技術

公開日:
9-4. 自動化工程に乗らない(前編) ― 高性能な部材でも、自動機で扱えなければ量産には使えない ―

熱性能が良い。
絶縁性能も高い。
厚みも薄い。
試作でも問題なく使えた。
それでも量産採用されないことがある。
理由は、
自動化工程に乗らない からである。

例えば、
ライナーから剥がれない。
真空吸着できない。
吸着すると変形する。
カメラで認識できない。
貼ると気泡が入る。
リール搬送すると伸びる。
ピッチが安定しない。
こうした問題があると、部材性能がどれほど高くても、量産工程では使いにくい。
つまり量産では、
「良い材料か」だけでなく、「設備が安定して扱える部品か」 が重要になる。

目次

■自動化では、部材そのものが設備部品になる

■「バラ品で納品できる」は量産価値とは限らない

■リール供給は自動化の代表的な方法

■リール化すれば何でも自動化できるわけではない

■剥離できなければ、自動化は始まらない

■剥離力が強すぎても、弱すぎても困る

■ライナーの材質も自動化性能を左右する

■剥離時に部材が変形することがある

■吸着できなければ搬送できない

■薄い部材では、吸着そのものが変形原因になる

■吸着ヘッドとの相性もある

■画像認識できなければ、正確に貼れない

■熱的に不要でも、認識用形状が必要になることがある

■透明材料は特に自動認識が難しい場合がある

■左右対称形状は誤認識の原因になる

■細長い形状は自動化難易度が高くなる

■細いブリッジ部は搬送で切れることがある

■キャリアを残すという考え方

■ハーフカットは自動化との相性がよい

■部材ピッチは設備タクトに影響する

■キャリア幅も設備仕様になる

■巻き方向を間違えるだけで設備に入らないことがある

■巻き径が部材へ影響する場合もある

■静電気も自動化を止める

■異物は設備停止の原因にもなる

■材料の粘着剤がはみ出すと自動機が汚れる

■前編のまとめ:自動化では、部材そのものが設備部品になる

■自動化では、部材そのものが設備部品になる

手作業では、人が部材を見て判断する。

少しずれていれば直す。

剥がれにくければ角度を変える。

柔らかければ丁寧に持つ。

しかし自動機は違う。

一定の場所に部材がある。

一定の形状である。

一定の姿勢である。

一定の力で剥がれる。

これを前提に動く。

つまり自動化では、熱対策部材そのものが、

設備が扱うためのインターフェース部品になる。

■「バラ品で納品できる」は量産価値とは限らない

小型TIMを一枚ずつ打ち抜く。

袋へ入れる。

顧客へ納品する。

少量試作なら問題ない。

しかし量産では、

袋から取り出す。

表裏を確認する。

向きを確認する。

位置を合わせる。

という作業が必要になる。

数量が増えるほど、工数も増える。

そのため顧客が自動化したい場合、

バラ品で供給できることより、設備へそのまま投入できること

の方が価値になる場合がある。

■リール供給は自動化の代表的な方法

小型部材をキャリア上へ一定ピッチで配置し、長尺のリール状態で供給する。

設備はリールを送りながら、

部材を剥がす。

吸着する。

位置補正する。

ワークへ貼る。

ことができる。

これによって、

● 部材方向をそろえられる

● 一定位置から取り出せる

● 連続供給できる

● 人が部材を並べる必要がない

というメリットがある。

つまりリール供給は、単なる包装方法ではない。

自動化設備へ部材を接続する方法なのである。

■リール化すれば何でも自動化できるわけではない

部材をリールへ並べれば終わりではない。

例えば、

部材ピッチがばらつく。

キャリア上で部材が動く。

剥離力が大きすぎる。

部材が巻き癖で反る。

こうした問題があると、自動化は安定しない。

つまりリール供給には、

● ピッチ

● キャリア幅

● 巻き方向

● ライナー

● 剥離力

● 部材姿勢

まで含めた設計が必要になる。

■剥離できなければ、自動化は始まらない

自動貼付工程では、まず部材をライナーから剥がす必要がある。

ところが高粘着材料や柔らかいTIMでは、部材がライナーへ強く残ることがある。

人なら、

角を持つ。

ゆっくり剥がす。

別方向から剥がす。

ことができる。

しかし自動機では、一定条件で安定して剥離できる必要がある。

つまり、

剥離性も部材性能の一部 である。

■剥離力が強すぎても、弱すぎても困る

剥離力が強いと、

● 部材が残る

● 変形する

● 伸びる

● 設備停止につながる

可能性がある。

 

一方で弱すぎると、

● 搬送中に部材がずれる

● リール内で移動する

● 途中で剥がれる

可能性がある。

 

つまり必要なのは、強い剥離でも弱い剥離でもない。

量産設備に合った、安定した剥離力である。

■ライナーの材質も自動化性能を左右する

同じ粘着材料でも、

紙系ライナー。

PETライナー。

表面処理の違うライナー。

によって剥離挙動が変わる。

さらに、

● 剛性

● 厚み

● 帯電性

● 巻き癖

も違う。

そのため製品には残らないライナーであっても、自動化では非常に重要である。

顧客にとって不要になる材料が、量産設備では重要部品になる。

■剥離時に部材が変形することがある

薄いTIM。

グラファイト。

細長い絶縁フィルム。

これらは剥離時の力によって変形しやすい。

例えば細長いグラファイトをライナーから剥がす。

端から引っ張られる。

その瞬間に部材が伸びたり曲がったりする。

設備は正しい位置を吸着したつもりでも、実際の部材形状が変わっている。

すると貼付精度が悪化する。

つまり、加工後の形状だけでなく、剥離中にも形状を維持できるかを見る必要がある。

■吸着できなければ搬送できない

多くの自動貼付設備では、真空吸着ヘッドで部材を持つ。

しかし、

● 発泡材

● 多孔質材料

● 柔らかいTIM

● 表面凹凸が大きい材料

では、真空が漏れて安定吸着できないことがある。

吸着できない部材は、

落ちる。

傾く。

位置がずれる。

そのため、熱性能には関係なくても、量産では大きな問題になる。

■薄い部材では、吸着そのものが変形原因になる

薄膜フィルムを強く真空吸着すると、吸着穴部分へ材料が引き込まれることがある。

すると部材が波打つ。

反る。

そのまま貼付すると、

● 気泡

● シワ

● 位置ズレ

につながる。

 

つまり、

持つための力が、部材品質を壊す

こともある。

自動化では、吸着方法と部材設計を一緒に考える必要がある。

■吸着ヘッドとの相性もある

一つの吸着ヘッドで、すべての材料を扱えるとは限らない。

例えば、

大きな平面吸着。

小さな点吸着。

多孔質吸着。

静電吸着。

など方式によって向き不向きがある。

つまり、

「この部材をどう持つか」

は設備メーカーだけの問題ではない。

材料や形状を決める段階から考える価値がある。

■画像認識できなければ、正確に貼れない

自動貼付では、カメラで部材位置やワーク位置を認識することが多い。

しかし材料によっては認識しにくい。

例えば、

透明フィルム。

黒色グラファイト。

鏡面金属箔。

透明粘着材。

これらは、

輪郭が見えにくい。

光が反射する。

背景と同化する。

ことがある。

その結果、設備側の位置補正が安定しない。

■熱的に不要でも、認識用形状が必要になることがある

例えば熱性能だけを考えれば完全な長方形でよい。

しかし画像認識のために、

● 小さな切り欠き

● 認識穴

● 非対称部

● タブ

を付ける。

こうすることで設備が部材方向を認識しやすくなる。

 

つまり量産では、

機能として不要な形状が、自動化には必要

になることがある。

これは設計段階で知っておくべき重要な点である。

■透明材料は特に自動認識が難しい場合がある

透明な絶縁フィルムは、製品としては非常に使いやすいことがある。

しかしカメラから見ると、背景との差が小さい。

照明条件によっては輪郭がほとんど見えない。

すると、

部材を見つけられない。

位置を補正できない。

という問題が起きる。

この場合、

形状変更。

キャリア色の変更。

マーク追加。

などで対応することがある。

つまり自動化では、部材単体だけでなく背景まで含めて認識系を設計する必要がある。

■左右対称形状は誤認識の原因になる

完全な左右対称形状は、設備から見ても方向が分かりにくい。

例えば表裏は違うのに、輪郭は同じ。

すると逆向きに貼っても検知しにくい。

そこで、

一か所だけ形状を変える。

穴位置を非対称にする。

タブを付ける。

といったポカヨケを行う。

量産自動化では、間違えられない形にすることも品質設計になる。

■細長い形状は自動化難易度が高くなる

熱を横方向へ逃がすため、グラファイトや金属箔を細長く設計することがある。

熱設計としては合理的である。

しかし自動化では、

● 剥離時に曲がる

● 吸着しにくい

● 回転しやすい

● 貼付時にシワが入る

という問題が起きやすい。

 

つまり、

熱的に良い形状が、設備的には難しい形状

になることがある。

ここで設計の最適化が必要になる。

■細いブリッジ部は搬送で切れることがある

異形状の絶縁フィルムなどでは、細い部分を残した形状がある。

静止状態では問題ない。

しかし剥離・吸着・搬送中に応力がかかると、その細い部分が伸びたり切れたりする。

そのため、

製品使用時に必要な形。

加工時に必要な形。

搬送時に必要な強度。

をすべて考える必要がある。

■キャリアを残すという考え方

非常に柔らかい部材や薄い部材では、完成形のまま剥離すると変形する場合がある。

そこで周囲にキャリア部分を残し、貼付直前まで部材を支持する方法がある。

あるいは複数部材を一枚のキャリアで保持する。

これによって、

搬送安定性。

位置精度。

剥離安定性。

を高められることがある。

つまり加工形状には、最終製品には残らない工程用形状も重要になる。

■ハーフカットは自動化との相性がよい

粘着材やフィルムをハーフカットし、ライナーを残した状態で供給する。

すると部材がライナー上で位置を維持できる。

設備は必要なタイミングで一個ずつ剥離できる。

つまりハーフカットは、

単なる加工方法ではなく、

自動化供給を成立させるための加工技術

でもある。

■部材ピッチは設備タクトに影響する

リール上の部材ピッチが大きすぎると、材料の無駄が増える。

小さすぎると、

剥離部が干渉する。

吸着スペースが足りない。

設備認識が難しい。

などの問題が起きる。

つまりピッチは材料歩留まりだけではなく、

設備動作とのバランス

で決める必要がある。

■キャリア幅も設備仕様になる

狭いキャリアは材料使用量を減らせる。

しかし搬送安定性が悪くなる場合がある。

広いキャリアは搬送しやすい。

しかし材料費や設備サイズへ影響する。

つまり、

部材単価を下げる設計と、設備安定性を上げる設計が一致するとは限らない。

ここも全体最適が必要になる。

■巻き方向を間違えるだけで設備に入らないことがある

リール供給では、

部材表裏。

巻き内・巻き外。

先頭方向。

が重要になる。

顧客設備は決められた向きでしか部材を取れない場合がある。

つまり、

「同じ部材だからどちら向きでもよい」

ではない。

巻き方向そのものが製品仕様になる場合がある。

■巻き径が部材へ影響する場合もある

リール径が小さいと、薄膜材料へ強い曲げ癖がつく場合がある。

部材を取り出した後も反りが残る。

すると、

吸着しにくい。

ワークへ全面接触しにくい。

という問題が起こる。

つまりリール設計では、

梱包サイズだけでなく、部材の曲げ特性まで見る必要がある。

■静電気も自動化を止める

フィルムやライナーを高速で剥離すると、静電気が発生する場合がある。

静電気によって、

部材が剥離位置から飛ぶ。

ライナーへ再付着する。

異物を吸着する。

搬送ヘッドへ張り付く。

ことがある。

特に薄いフィルムほど影響を受けやすい。

つまり自動化では、

機械精度だけでなく、静電気管理 も重要になる。

■異物は設備停止の原因にもなる

部材端部からカスが出る。

粘着剤が糸引きする。

剥離時に材料片が残る。

すると、

吸着ヘッドへ付着する。

画像認識を妨げる。

次の製品へ転写する。

などの問題が起こる。

つまり加工品質の悪化は、一個の不良だけでなく、設備全体へ不良を広げる可能性がある。

■材料の粘着剤がはみ出すと自動機が汚れる

高温や圧力によって粘着剤が端面からはみ出す場合がある。

その状態で連続加工すると、

ローラー。

ガイド。

吸着ヘッド。

へ粘着剤が付着する。

すると設備停止や清掃が必要になる。

つまり量産では、

一個の貼付性能だけでなく、長時間設備を汚さず動かせるか

■前編のまとめ:自動化では、部材そのものが設備部品になる

手作業なら、人が見て判断できる。

ずれていれば直す。剥がれにくければ角度を変える。

 

しかし自動機は、一定の形状・一定の姿勢・一定の剥離力を前提に動く。

その前提から外れた部材は、性能が高くても扱えない。

 

剥がせない。

持てない。

持てても変形する。

カメラが見つけられない。

細長い形状は曲がる。

巻き癖で反る。

静電気で飛ぶ。

粘着剤が設備を汚す。

 

どれも熱伝導率とは関係がない。

しかし、どれも量産では致命的になる。

 

つまり、

熱的に最適な形状が、設備的に最適とは限らない。

 

後編では、ここから先の判断を見ていく。

タクト。設備停止率。総コスト。

そして、実際に起きた失敗事例と、加工会社が担える領域。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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