■タクトが出なければ量産成立とは言えない
自動化できた。
しかし一個貼るのに30秒かかる。
顧客が必要とするタクトは3秒。
これでは量産には使えない。
つまり自動化の評価では、
できる・できない
だけではなく、
必要速度で安定してできるか
を見る必要がある。
■速度を上げると別の問題が出る
剥離を速くする。
搬送を速くする。
貼付を速くする。
すると、
部材変形。
静電気。
気泡。
位置ズレ。
が増える場合がある。
つまり自動化では、
最高速度ではなく、
品質を維持できる安定速度
を探す必要がある。
■設備停止率も重要になる
100回に1回部材を取り損ねる。
試作なら大きな問題ではないように見える。
しかし1日数万回動く設備では、頻繁に停止する。
設備が止まる。
作業者が復旧する。
生産性が下がる。
つまり、
99%成功
でも量産では不十分な場合がある。
自動化では、極めて高い再現性が必要になる。
■材料コストより設備停止コストの方が大きいことがある
1枚数円安い材料を採用した。
しかし剥離不良が増えた。
設備停止が増えた。
作業者が復旧する。
結果として総コストが上がった。
つまり量産では、
部材単価だけでなく、設備稼働率を含めた総コスト
を見る必要がある。
これは購買価格だけでは判断できない。
■自動化では「歩留まり」だけでは足りない
例えば製品歩留まり99.5%。
数字としては高く見える。
しかし自動貼付工程で0.5%失敗すると、1万個で50個の不良が出る。
さらに設備停止や再作業が発生する。
そのため大量生産では、小さな不良率も大きな問題になる。
■部材設計を少し変えるだけで、自動化しやすくなることがある
例えば、
丸角を大きくする。
細い部分を少し太くする。
認識穴を追加する。
タブ位置を変える。
剥離方向を考えて形状を変更する。
こうした小さな変更で、自動化安定性が大きく改善する場合がある。
つまり、
設備を高性能化する前に、部材形状を見直す
という選択肢も重要である。
■設備に合わせて材料を変えることもある
熱性能では材料Aが最も良い。
しかし材料Aは柔らかすぎて自動機で扱えない。
材料Bは熱性能が少し低い。
しかし自動貼付が非常に安定する。
実機全体で見ると、材料Bの方が量産品質が良い場合もある。
つまり、
最高の材料性能と、最高の製品性能は同じではない。
量産性まで含めて判断する必要がある。
■失敗例:試作材料をそのまま自動化しようとする
試作では、柔らかい高性能TIMを手貼りした。
熱性能は良好だった。
量産時に同じTIMをリール供給しようとした。
しかし、
剥離できない。
吸着すると伸びる。
貼付位置が安定しない。
結局、設備側の大幅な改造が必要になった。
これは、
試作材料を決めてから自動化を考えた
ことによる失敗である。
■失敗例:図面どおりに加工したが設備が認識できない
透明フィルムを図面どおりに高精度加工した。
寸法は問題ない。
しかし自動機のカメラが輪郭を認識できない。
結果、貼付位置が安定しなかった。
この場合、加工品質は高い。
しかし量産部品としては成立していない。
必要だったのは、
認識穴。
マーク。
背景とのコントラスト。
まで考えた設計である。
■失敗例:最小材料幅を優先して搬送が不安定になる
材料歩留まりを良くするため、キャリア幅をぎりぎりまで細くした。
材料費は下がった。
しかしリール搬送時に蛇行する。
部材位置がずれる。
画像補正量が増える。
設備停止が増える。
結果として生産性が悪化した。
つまり、
材料歩留まりの局所最適が、量産工程全体を悪化させた 例である。
■失敗例:自動化設備完成後に部材設計を変更する
設備メーカーが装置を完成させた。
その後で部材形状が変更された。
すると、
吸着ヘッドに合わない。
認識マーク位置が変わる。
剥離角度が合わない。
設備改造が必要になる。
つまり、部材と設備を別々に開発すると手戻りが起きやすい。
■研究者視点:自動化では部材の「動的特性」を見る
材料カタログでは、
厚み。
硬さ。
熱伝導率。
粘着力。
など、静的な値を見ることが多い。
しかし自動化工程では、
高速で剥離したとき。
曲げたとき。
吸着したとき。
加速したとき。
どう動くかが重要になる。
つまり、
材料の静止状態の性能だけでなく、動かしたときの性能
を見る必要がある。
■現場視点:設備が止まるところを見る
自動化の問題を考えるとき、完成品だけを見ても原因が分からない。
実際に設備を見る。
どこで部材が残るか。
どこでずれるか。
どこで吸着不良が出るか。
どのタイミングで停止するか。
を見る。
すると、
形状。
剥離力。
キャリア。
静電気。
など、部材側の改善点が見えてくる。
■OTIS視点:自動化前提で部材を設計する
OTISが目指すべきなのは、
「図面を受け取って切る」
だけではない。
量産設備でどう扱われるかを確認し、
必要なら、
● 形状変更
● タブ追加
● 部分粘着
● ハーフカット
● キャリア設計
● ピッチ設計
● リール化
まで提案する。
つまり、
自動化を設備メーカーだけの仕事にしない。
部材側からも自動化を成立させる。
ここが加工会社の価値になる。
■リール品そのものを一つの製品として考える
完成部材だけを見るのではなく、
部材。
ライナー。
キャリア。
ピッチ。
巻き方向。
リール。
まで含めて一つの供給製品と考える。
顧客設備へ投入した瞬間から安定して使える。
この状態まで作れれば、単なる打ち抜き加工との差別化になる。
■部材と設備をセットで考える
OTISが部材を設計・加工する。
設備メーカーが剥離・貼付設備を設計する。
顧客がタクト・品質要求を提示する。
この三者を早い段階でつなぐ。
そうすれば、
「部材は完成したが設備で使えない」
「設備は完成したが部材を取れない」
という手戻りを減らせる。
つまり、
材料選定から自動化までを一つの開発として見る
ことが重要になる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 高精度打ち抜き
● 薄膜加工
● 微細加工
● TIM加工
● グラファイト加工
● 絶縁フィルム加工
● 粘着材加工
● 部分粘着
● ハーフカット
● キャリア設計
● ピッチ設計
● リール・ツー・リール加工
● 自動貼付向け供給形態
● 認識しやすい部材形状提案
● 画像検査
● 長尺加工の位置精度管理
● 量産条件の安定化
などを通じて、熱対策部材を自動化工程へ投入しやすい形へ加工することに貢献できる。
■OTISの専門外
OTISは、
● 自動貼付装置そのものの設計・製造
● ロボット本体設計
● サーボ制御
● 画像処理アルゴリズムそのものの開発
を専門とする会社ではない。
必要に応じて設備メーカーと連携する。
OTISが担うべきなのは、
材料と設備の間にある「部材側の自動化設計」 である。
■まとめ:自動化できない部材は、大量生産では使えない
熱伝導率が高い。
絶縁性能が良い。
薄い。
軽い。
これらは重要である。
しかし量産では、それだけでは足りない。
剥がせる。
持てる。
見つけられる。
正しい向きにできる。
正しい位置へ貼れる。
高速で繰り返せる。
設備を止めない。
必要がある。
つまり自動化時代の部材には、材料性能に加えて、
設備適合性が求められる。
そして設備適合性は、装置を作った後で考えるものではない。
材料。
形状。
粘着。
ライナー。
キャリア。
リール。
設備。
これらを設計段階からつなぐ必要がある。
自動化とは、人の手を機械へ置き換えることではない。
機械が失敗しにくいように、部材そのものを設計し直すことでもある。
だからこれからの加工会社に求められるのは、
「この形に切れます」 だけではない。
「この部材なら、そのまま自動工程へ投入できます」と言えることである。
熱対策部材が量産へ進む最後の壁は、熱伝導率ではないことがある。
その部材を、自動機が毎回同じように扱えるかどうか。
そこまで成立して、初めて量産部品になるのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません


