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10-3. 薄膜加工(前編) ― 薄くするほど、熱には有利になる。しかし加工は難しくなる ―

材料・加工技術

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10-3. 薄膜加工(前編) ― 薄くするほど、熱には有利になる。しかし加工は難しくなる ―

製品は薄くなっている。
スマートフォン。
ウェアラブル。
センサー。
半導体パッケージ。
EVバッテリー。
ロボット。
医療機器。
どの分野でも、
薄い。
軽い。
小さい。
という要求が強くなっている。
その結果、熱対策材料にも薄膜化が求められる。
TIM。
グラファイト。
絶縁フィルム。
銅箔。
アルミ箔。
粘着材。
これらを薄くすれば、
熱抵抗を下げやすい。
製品を薄型化しやすい。
軽量化しやすい。
内部スペースを確保しやすい。
というメリットがある。
しかしその一方で、
シワになる。
伸びる。
裂ける。
反る。
静電気の影響を受ける。
貼り合わせが難しくなる。
という問題も増える。
つまり薄膜加工とは、単に「薄い材料を切る技術」ではない。
薄い材料の機能を壊さず、量産工程で扱える状態にする技術である。

■なぜ熱対策で薄膜化が重要なのか

熱は材料の中を通る。

同じ材料であれば、一般に厚みが増えるほど熱が通る距離は長くなる。

つまりTIMや絶縁材では、

必要な機能を維持しながら薄くできれば、

熱抵抗を小さくできる可能性がある。

例えば、

半導体
↓
TIM
↓
冷却プレート

という構造で、TIMが必要以上に厚い。

すると熱は長い距離を通る。

一方、必要な接触性を維持したまま薄くできれば、熱経路を短くできる。

つまり薄膜化は、熱抵抗を下げる基本的な手段の一つである。

TIMには、段差吸収や表面追従の役割もある。

薄すぎると、

凹凸を埋められ■ただし薄ければ薄いほど良いわけではない>

ない。

反りを吸収できない。

一部が浮く。

という問題が起こる。

つまり、

薄くしたい。

しかし接触させたい。

という矛盾がある。

重要なのは最薄を目指すことではない。

必要な接触を維持できる範囲で、最適な厚みにすることである。

■絶縁フィルムも薄くしたい

パワー半導体や高電圧機器では、絶縁フィルムが必要になる。

厚くすれば絶縁には有利になる。

しかし熱には不利になりやすい。

そこで、

必要な耐電圧を確保しつつ、

できるだけ薄いフィルムを使う。

という考え方が出てくる。

つまり絶縁部材では、熱性能と電気安全性の間で厚みを最適化する必要がある。

■薄膜化すると絶縁の安全余裕が減る

厚い絶縁フィルムなら問題にならなかった小さなバリ。

小さな異物。

微小な傷。

これらが、薄膜では大きなリスクになることがある。

つまり薄くするほど、

材料そのものの性能だけではなく、

加工品質。

異物管理。

端面品質。が重要になる。

薄膜化は、材料性能への要求よりも、工程品質への要求を高めることがある。

■スマートデバイスでは数十μmが設計余裕になる

スマートフォンやウェアラブルでは、製品厚みが非常に限られている。

TIM。

グラファイト。

絶縁材。

粘着材。

保護フィルム。

各層が数十μmずつ厚くなると、積み重なって大きな厚みになる。

例えば一層50μmでも、4層あれば200μmになる。

薄型製品では、この200μmが大きい。

つまり、一枚の薄膜化が、製品全体の設計自由度につながる。

■EVでは大面積だから薄膜化の重量効果も大きい

小さな部材を10μm薄くしても、重量差は小さい。

しかし大面積の絶縁フィルムや金属箔では違う。

数百mm。

1m近いサイズ。

大量に使う。

この場合、わずかな厚み差でも総重量へ影響する。

EVでは重量が航続距離や電費に関係する。

つまり薄膜化は、熱だけでなく軽量化にもつながる。

■ロボットでは重量が連鎖する

ロボットでは、一枚の部材が重くなるだけで終わらない。

腕が重くなる。

必要なモーターが大きくなる。

消費電力が増える。

バッテリーが大きくなる。

さらに重量が増える。

という連鎖が起こる。

そのためロボット向け機能部材では、

薄く。

軽く。

必要な性能を持つ。

ことが重要になる。

つまり薄膜加工は、熱性能と機体全体の重量設計をつなぐ技術でもある。

■グラファイトは薄膜との相性がよい

グラファイトシートは、薄い状態でも面方向へ熱を広げる能力を持つ。

そのため、

スマートフォン。

ウェアラブル。

薄型電子機器。

などと相性がよい。

しかし薄くなるほど、

脆い。

折れやすい。

端部が欠けやすい。という問題が増える。

つまり高性能な薄膜材料ほど、加工・搬送技術が重要になる。

■薄いグラファイトでは端部保護も重要になる

グラファイトの端部がむき出しになると、

欠ける。

粉が出る。

導電部が露出する。

ことがある。

そのため、

絶縁フィルムで覆う。

保護フィルムをラミネートする。

端部だけ処理する。

といった方法が考えられる。

つまり薄膜加工では、材料単体を加工するだけでなく、

保護構造まで含めて部材化することが重要になる。

■銅箔・アルミ箔も薄膜化が進む

熱拡散。

EMI対策。

導電。

これらに金属箔が使われることがある。

厚い金属板に比べて、

薄い。

軽い。

曲げやすい。

というメリットがある。

一方で薄くなるほど、

バリ。

変形。

しわ。

折れ。が問題になる。

つまり金属箔の薄膜加工では、切断精度だけでなく平面性が重要になる。

■薄い金属箔は加工応力で変形しやすい

打ち抜く。

刃物が入る。

箔が局所的に押される。

その結果、

反る。

波打つ。

端部がめくれる。

ことがある。

寸法は合格していても、平らでなければ貼り合わせが難しくなる。

つまり薄膜金属箔では、二次元寸法だけでは品質を判断できない。

■薄膜フィルムは張力で伸びる

ロール状の薄膜フィルムを搬送する場合、一定の張力をかける。

しかし薄いほど、張力の影響を受けやすい。

少し伸びる。

その状態で加工する。

張力を解放する。

縮む。

すると、加工中と加工後で寸法が変わることがある。

つまり薄膜加工では、張力管理が寸法精度そのものになる。

■張力を下げればよいわけではない

張力を弱くすると、材料は伸びにくい。

しかし弱すぎると、

蛇行する。

シワになる。

送り精度が悪くなる。

という問題が出る。

つまり、

張力が強すぎても駄目。

弱すぎても駄目。

必要なのは、材料を安定搬送できる適正張力である。

■薄膜加工では「搬送」が加工と同じくらい重要になる

厚い板材なら、置けば形状を維持する。

薄膜は違う。

持つだけでたわむ。

搬送すると揺れる。

静電気で付着する。

つまり加工機で切る前後の、

送り。

支持。

吸着。

巻き取り。

が品質へ影響する。

薄膜加工では、材料を安定して動かすこと自体が技術になる。

■支持材を使うことがある

非常に薄いフィルムや箔は、そのままでは加工しにくい。

そこで、

ライナー。

キャリアフィルム。

保護フィルム。

などで支持する。

加工後まで支持材を残すことで、

変形。

破れ。

搬送不良。を防ぐ。

つまり最終製品には残らない材料が、薄膜加工では重要な役割を持つ。

■キャリア設計も薄膜加工の一部になる

キャリアが硬すぎる。

剥離しにくい。

薄すぎる。

搬送が不安定。

表面が合わない。

すると薄膜部材を安定して扱えない。

つまり、

製品材料。

だけではなく、工程材料まで含めて最適化する必要がある。

■ハーフカットとの相性がよい

薄膜粘着材や絶縁フィルムを完全に切り離すと、扱いにくくなる。

そこで製品層だけを切り、ライナーを残す。

こうすれば、

部材を一定位置に保持できる。

搬送しやすい。

自動機で剥離しやすい。

つまりハーフカットは、薄膜部材を量産工程へつなぐ重要な加工方法である。

■薄膜ではハーフカット深さがさらに厳しくなる

上層が50μm。

下のライナーが75μm。

といった構成では、切り込み深さの差が小さい。

深すぎればライナーを傷つける。

浅すぎれば製品が切れない。

つまり薄膜化するほど、刃物深さの管理余裕が小さくなる。

■刃物摩耗の影響も大きくなる

厚い材料では多少の刃物摩耗があっても切れる。

しかし薄膜・微細加工では、刃先状態の変化が、

バリ。

切残し。

糊引き。

に影響する。

つまり薄膜加工ほど、金型・刃物メンテナンスの重要性が高くなる。

■薄い粘着材は扱いやすそうで難しい

薄い両面テープは、

省スペース。

軽量。

というメリットがある。

しかし、

腰がない。

剥離すると丸まる。

静電気で貼り付く。

シワになる。

という問題がある。

つまり薄型粘着材では、粘着性能より先にハンドリングが問題になることもある。

■薄いほど気泡の影響が大きく見える

例えば100μmの薄膜粘着材に50μmの異物が入る。

厚みに対して非常に大きい。

その部分が浮けば、接触状態も大きく変わる。

つまり薄膜化すると、

異物。

気泡。

表面粗さ。

の影響が相対的に大きくなる。

■薄膜ではシワが機能不良になる

フィルムに小さなシワがある。

外観だけの問題に見える。

しかしそのシワが、

TIM下に入る。

絶縁部に入る。

シール部に入る。

と、

接触不良。

絶縁距離変化。

防水不良。

につながる可能性がある。

つまり、薄膜のシワは外観ではなく機能品質である。

■貼り合わせ時のシワ対策が重要になる

薄いフィルムをラミネートする。

上下材料の張力が違う。

ローラー圧力が偏る。

速度が合わない。

するとシワが入る。

一度シワが入った薄膜は、後から完全に直すのが難しいことがある。

そのため薄膜ラミネートでは、シワを直すより、シワを発生させない工程設計が重要になる。

■空気抜きも難しくなる

薄い大面積フィルムを貼る。

気泡が入る。

薄いため、気泡部分だけ局所的に膨らむ。

そこで、

貼付方向。

ローラー。

スリット。

開口。

などを工夫する。

つまり薄膜加工では、貼付時の空気の逃げ道まで考える必要がある。

■薄膜化すると反りも起こりやすくなる

異種材料を積層する。

上層と下層で熱膨張率が違う。

あるいはラミネート時の張力が違う。

薄い積層体は剛性が低いため、わずかな応力でも大きく反る。

つまり薄膜化すると、

熱膨張差。

残留応力。

の影響が表面化しやすい。

■片面粘着だけでも反ることがある

薄いフィルムの片面に粘着層を追加する。

上下構成が非対称になる。

粘着材とフィルムで収縮挙動が違う。

すると反りが出る場合がある。

つまり薄膜部材では、数十μmの追加層が全体形状を変えることがある。

■薄膜積層では厚み公差が重要になる

フィルム50μm。

粘着材25μm。

グラファイト40μm。

合計115μm。

しかし各層に公差がある。

量産では最終厚みもばらつく。

この厚み差が、

組立クリアランス。

圧縮率。

接触熱抵抗。

へ影響する可能性がある。

つまり薄膜加工では、一層ごとの小さな公差が最終機能へ効いてくる。

■前編のまとめ:薄くすると、熱以外のすべてが変わる

薄くすれば、熱抵抗を下げやすい。

軽くなる。小さくなる。内部スペースも増える。

 

しかし、薄くした瞬間に別の問題が始まる。

 

TIMを薄くすれば、段差や反りを吸収できなくなる。

絶縁フィルムを薄くすれば、小さなバリや異物が致命的になる。

グラファイトは欠け、金属箔は波打ち、フィルムは張力で伸びる。

薄い粘着材は腰がなく、剥がせば丸まる。

 

さらに、薄膜では搬送そのものが技術になる。

持てばたわむ。運べば揺れる。静電気で貼り付く。

だからライナーやキャリアという、製品に残らない材料が重要になる。

 

そしてシワは外観ではなく機能不良になる。

反りは、片面に粘着層を足すだけでも起きる。

厚み公差は、一層ごとは小さくても最終機能へ効いてくる。

 

つまり、

薄膜化は寸法を減らす作業ではない。

工程品質への要求を上げる変更である。

 

では、一枚ではなく積層構造全体で見たとき、

薄膜化はどう設計すべきなのか。

後編では、そこから考えていく。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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