■微細部材ほど自動化が難しくなる
部材が小さい。
ピンセットなら持てる。
しかし自動機では、
吸着位置が小さい。
画像認識しにくい。
静電気の影響を受けやすい。
という問題が出る。
つまり微細化するほど、
加工できることより、供給・搬送できることが難しくなる場合がある。
■微細部材ではリール供給が有効になることがある
数mmの小型部材をバラ品で供給する。
顧客は一つずつ整列しなければならない。
一方、リール上に一定ピッチで配置すれば、
設備は決まった場所から部材を取ることができる。
つまり微細加工とリール供給を組み合わせることで、
小さな部材を量産工程へ接続しやすくなる。
■微細部材は表裏・方向の判別も難しい
小さな部材ほど、人が見ても方向が分かりにくい。
完全対称形状なら、自動機も方向を認識できない場合がある。
そこで、
小さな切り欠き。
位置決め穴。
タブ。
を追加する。
つまり微細形状の一部を、自動化のための情報として使うこともできる。
■加工限界だけを追い求めると量産性を失う
より細く。
より小さく。
より狭く。
加工できることは技術力である。
しかし顧客が必要としていない領域まで微細化すると、
コスト。
歩留まり。
金型寿命。
検査。
が悪化する。
重要なのは、
世界最小を作ることではなく、顧客機能に必要な微細形状を安定して作ることである。
■微細加工では検査方法も難しくなる
部材が小さくなると、
ノギス。
通常の目視。
では十分に評価できない場合がある。
画像測定。
拡大観察。
画像検査。
などが必要になる。
つまり加工能力を上げるなら、
測定能力も同時に上げる必要がある。
■測れない精度は保証できない
0.05mmの位置精度を要求される。
しかし測定系の誤差が0.05mmある。
これでは正確に保証できない。
微細加工では、
加工設備。
金型。
だけでなく、
測定系の精度も重要になる。
つまり、加工精度と測定精度はセット
で考える必要がある。
■画像検査との相性がよい
微細部材では、
外形。
穴。
位置。
欠け。
などを画像で検査できる場合がある。
特に大量生産では、人が一個ずつ見るより安定しやすい。
さらに検査データを蓄積すれば、
金型摩耗。
位置ズレ傾向。
材料ロット変化。
を見ることもできる。
つまり画像検査は、
微細加工を量産で維持するための監視技術
にもなる。
■微細加工では異物の相対影響も大きくなる
1mmの異物は明らかに大きい。
しかし50μmの異物は目立ちにくい。
ところが200μm幅の部材に対しては大きな割合になる。
つまり製品が小さくなるほど、
これまで問題にならなかった異物サイズが問題になる。
そのため微細化は、
クリーン度への要求も高める。
■小さな異物が熱接触を壊す
微細TIMの下に数十μmの異物が入る。
部材全体が小さいため、その異物による浮きが接触面積の大きな割合を占める可能性がある。
つまり異物は、外観問題。
だけではなく、接触熱抵抗の原因になる。
■微細加工では材料ハンドリングが技術になる
加工する。
測定する。
搬送する。
梱包する。
この途中で部材を壊さない必要がある。
小型・薄膜部材では、
指で触る。
ピンセットでつかむ。
だけでも変形する可能性がある。
つまり微細加工では、加工前後のハンドリングまで工程技術になる。
■梱包方法も品質に影響する
小さな部材を袋へ入れる。
輸送中に動く。
重なる。
端部が折れる。
粘着面へ異物が付く。
といった問題が起こる。
そのため、
トレー。
セパレーター。
リール。
など、適切な供給・梱包形態を選ぶ。
つまり微細加工は、加工機から出た瞬間に終わらない。
顧客が使う瞬間まで形状を維持する必要がある。
■失敗例:微細形状は作れたが搬送で変形する
細長いグラファイト部材を高精度加工した。
加工直後の寸法は合格。
しかしライナーから剥離すると曲がった。
自動搬送するとさらに変形した。
結果として貼付位置が安定しなかった。
つまり、
加工可能性だけを見て、工程全体の形状安定性を見ていなかった。
■失敗例:小径穴のカスが製品に残る
微小穴を大量加工した。
穴寸法はすべて合格。
しかし一部の抜きカスが粘着面へ付着した。
顧客工程でその異物が界面へ入り、浮きが発生した。
つまり、
寸法品質は合格。
しかし機能品質は不合格。だった。
■失敗例:微細化しすぎて金型寿命が短くなる
顧客要望に合わせ、非常に細い形状を設計した。
初期加工は成功した。
しかし金型の細い部分が早期に摩耗・破損する。
メンテナンス頻度が増える。
コストが上がる。
つまり、作れる形状と、経済的に量産できる形状は違う。
■失敗例:寸法精度は高いが貼付できない
数mmサイズのTIMを±0.05mmで加工した。
部材精度は高い。
しかし非常に小さいため自動吸着が安定しない。
顧客工程では位置ズレが発生した。
つまり、
部品精度だけを高めても、最終貼付精度が高くなるとは限らない。
■研究者視点:微細加工は「空間に機能を配置する技術」である
微細加工を、
小さな穴を開ける。
細く切る。
技術だと考えると、価値を狭く捉えてしまう。
実際には、
ここは熱を通す。
ここは絶縁する。
ここは貼る。
ここは空気を逃がす。
という機能を、非常に小さな空間へ配置している。
つまり微細加工は、
材料性能を空間的にデザインする技術
と考えることができる。
■現場視点:加工できるかではなく、工程全体で成立するかを見る
顧客から、
「0.3mm幅で加工できますか」
と聞かれる。
加工できるかだけならYESかもしれない。
しかし本来確認したいのは、
数量はいくらか。
材料は何か。
長さはどの程度か。
どう剥がすか。
どう貼るか。
自動化するか。
である。
つまり加工可否は、
最終工程まで含めて答える方が価値が高い。
■OTIS視点:微細加工は、熱の機能配置を作る技術
OTISにとって微細加工は、単なる小型部品加工ではない。
TIM。
グラファイト。
絶縁フィルム。
金属箔。
粘着材。
を、
必要な場所だけ。
必要な幅で。
必要な形状にする。
これによって、
熱。
絶縁。
固定。
EMI。
といった機能を配置する。
つまりOTISの微細加工は、
機能材料を製品内部へ正確に配置するための加工技術
である。
■OTISが微細加工だけで終わらない意味
微細形状を加工する。
それだけなら部品加工である。
さらに、
キャリアへ残す。
ライナーへ配置する。
リール化する。
画像検査する。
自動機が扱える形にする。
ここまで進めれば、
微細加工が顧客量産工程へつながる。
つまり、微細加工+供給形態まで含めて初めて量産価値になる。
■材料メーカーとの役割分担
材料メーカーは、
薄いフィルム。
高熱伝導グラファイト。
高絶縁材料。
高性能TIM。
を開発する。
OTISは、その材料を、
微細形状へ加工する。
複数材料を組み合わせる。
顧客工程で扱える状態にする。
つまり、
材料メーカーが材料性能を作り、OTISが機能形状を作る。
この役割分担が重要になる。
■顧客図面の目的を理解する
0.5mmの穴。
なぜ必要なのか。
細いスリット。
なぜ必要なのか。
単に図面どおり作るだけでなく、目的を聞く。
空気抜きなのか。
絶縁なのか。
位置決めなのか。
熱経路なのか。
目的が分かれば、
形状変更。
加工方法変更。
量産性改善。
を提案できる。
つまり、微細形状の意味を理解することが提案力につながる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 微細打ち抜き
● 小径穴加工
● 狭幅加工
● 微細スリット
● 微細開口
● 薄膜フィルム加工
● TIM微細加工
● グラファイト微細加工
● 銅箔・アルミ箔微細加工
● 絶縁フィルム加工
● 粘着材微細加工
● ハーフカット
● 部分粘着
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● キャリア設計
● リール・ツー・リール加工
● 画像検査
● 自動化向け供給形態
などを組み合わせ、微細な機能部材を量産工程へ落とし込むことができる。
■OTISの専門外
OTISは、
● 半導体ウェハそのものの微細加工
● ナノレベルの半導体パターン形成
● MEMSデバイスそのものの設計
● 材料そのものの分子設計
を専門とする会社ではない。
OTISが得意とするのは、
フィルム・粘着材・金属箔・TIMなどの薄膜機能材料を、実装可能な微細部品へ加工する領域である。
■まとめ:微細加工は、小さく切る技術ではない
製品が小さくなる。
部品間隔が狭くなる。
熱源が高密度になる。
すると熱対策部材にも、
より小さな穴。
より細い幅。
より狭い間隔。
より複雑な形状。
が求められる。
しかし、小さく加工できれば終わりではない。
変形しない。
バリが出ない。
カスが残らない。
位置が合う。
絶縁できる。
熱性能を維持できる。
自動で扱える。
量産で再現できる。
必要がある。
つまり微細加工とは、
小さな形状を作る技術ではなく、小さな空間の中で必要な機能を成立させる技術である。
高性能な材料があっても、必要な場所へ入らなければ使えない。
必要な位置へ置けなければ性能は出ない。
だから製品が微細化するほど、加工会社の役割は小さくなるのではない。
むしろ大きくなる。
材料と製品の間にある、
わずか数mm。
数百μm。
その中へ、
熱。
絶縁。
粘着。
固定。
という機能を配置する。
その「小さな機能」を量産で作り続けること。
それが、OTISにおける微細加工の価値なのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません


