第1章 素材が変わると、加工も変わる
素材の分子構造・表面エネルギー・熱膨張係数…
わずかな違いが、カッティングや貼合の精度に直結する。
PFASフリー素材は、従来のフッ素系材料に比べて
表面エネルギーが高く、滑り性や離型性がやや変動しやすい傾向があります。
そのため、加工時には摩擦熱や剥離速度・角度などの条件を
より細かく最適化する必要がある。
また、再生PETは、リサイクル工程での熱履歴や分子鎖の短縮により、
バージン材に比べて粘度や結晶性が不均一になる傾向がある。
そのため、微細加工時には「エッジ安定性」や「反り挙動」に
注意が必要となる場合がある。
オーティスでは、新素材を導入する際に、
まず加工時の反応を観察し、条件を最適化するところから始める。
つまり、素材の変化に追随する技術こそが、オーティスの強さの根幹にある。
第2章 PFASフリー時代に求められる精密制御
環境規制の高まりにより、PFAS(フッ素化合物)を含まない
粘着材・撥水材・通気膜が世界的に求められている。
しかしPFASフリー素材は、
表面滑り性・離型性・耐熱性などが従来より不安定で、
加工時の摩擦熱や剥離応力の影響を受けやすい。
オーティスでは、これに対応するために:
● ロール表面のコーティング変更(低摩擦化)
● 剥離角度・剥離速度の最適化
● ラミネート時の熱履歴制御(熱蓄積の分散)
といった微細な条件設計を積み上げている。
PFASフリー素材の扱いにくさを、加工の工夫で克服する。
これが、環境対応と高精度を両立させるオーティスの解である。
第3章 耐熱・導電・絶縁 ― 次世代機能フィルムの挑戦
電子・車載・医療分野では、耐熱・導電・絶縁などの機能が
1枚の多層フィルムに求められている。
PI(ポリイミド)やLCP(液晶ポリマー)、
導電性カーボンや銅箔・グラファイトの積層構成、
これらは熱による伸縮や反りを起こしやすく、
加工時には温度・応力・粘着・タイミングの全てを制御する必要がある。
オーティスでは、フィルムごとの特性を数値化し、
「伸び率・反り傾向・粘着残留力」を材料データベース化している。
そのデータを金型設計やラミネート条件にフィードバックすることで、
異素材間の寸法整合を取っている。
異なる素材を組み合わせる技術こそ、オーティスの材料対応力の象徴である。
第4章 再生素材・バイオ素材との向き合い方
循環型社会に向け、再生PETやバイオ由来フィルムの採用も進むが、
これらの素材は生産ロットごとに特性のばらつきが大きい。
そのため、従来の「設定条件を固定する管理」では対応しきれない。
オーティスは、各ロットの特性データを試験で取得し、
加工条件を素材に合わせて毎回最適化する。
つまり、量産でありながら、
実質的には現場で一品一様の制御を行っているのだ。
それは効率化とは逆行するようでいて、
安定した品質という結果を最も確実に生み出す方法でもある。
第5章 材料データを加工技術に還元する仕組み
オーティスでは、材料ごとの加工結果・条件・問題点を
社内でデータベース化している。
新素材を試すときは、過去の類似特性データを参照し、
初期条件を推定。試作結果をフィードバックして更新。
この繰り返しにより、社内で学習する加工知識が蓄積されている。
将来的には、このデータをAIが解析し、
素材ごとに最適な加工条件を自動提案するシステム化を目指さなければならない。
まとめ
フィルムは、日々進化している。
新しい素材が登場するたび、加工現場は試される。
オーティスは、その挑戦を恐れず、素材を変えても、精度は変えないという信念で取り組んでいる。
環境が変わり、素材が変わっても、
精度を守る技術がある。
それが、オーティスのものづくりの原点であり、未来への約束である。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。



