第1章 検査の目的は合否ではなく、理解
一般的に検査は、OK/NGを判断するための最終工程とされている。
しかし、オーティスではそれを「理解のための観察」と捉えている。
測定値のズレは単なるエラーではなく、
なぜそうなったのかという工程の声である。
例えば同じ型でも、ロットや時間帯で微妙に傾向が変化する。
その変化を異常ではなく情報として読み解くことが、オーティスの品質文化の特徴だ。
第2章 重要寸法を中心に測定設計する
全数検査をすれば品質は上がるとは限らない。
重要なのは、「どの寸法をどの条件で測るか」を設計段階から定義することだ。
オーティスでは、
・製品機能を支える要素寸法
・打ち抜き・積層・貼合で影響しやすい位置
・顧客が重視する評価点
を整理し、測定設計表(重点項目)として事前に設定している。
これにより、検査が後追いではなく、顧客の使えるを意識した製品設計の一部として機能する。
第3章 検査データは「品質の履歴書」
すべての測定結果は、ロットごとにデータベース化されている。
測定値の平均やばらつき、使用金型番号、測定日時を記録し、
過去との比較や傾向分析がいつでも可能な状態を保っている。
この履歴管理により、製品の品質が「偶然の良品」ではなく「再現できる良品」へと変わる。
検査データは、製造の裏づけであり、お客様に提供する見えない品質保証書でもある。
第4章 人が見る・人が感じる検査力
オーティスの検査員は、単に異常を探すのではなく、
いつもと違うという微細な違和感を読み取る力を持っている。
それはマニュアル化できない経験値の集合であり、
同じ測定値でも「この値の出方は少し違う」と察知する。
この感覚的判断が、重大なトラブルの未然防止につながっている。
将来的には、この人の感覚をデジタルで再現し、データとして残していく仕組みを目指している。
第5章 AI検査は「置き換え」ではなく「共育」へ
AIによる自動検査は、まだ一部試行段階にある。
しかしオーティスでは、AIを人の代わりにするのではなく、
「人と共に学ぶ検査」を理想像として描いている。
AIが検査員の判断履歴を学び、
「どんな条件でOKと判断したのか」を学習できれば、
経験を継承するデジタル検査員が実現できる。
現在はその基礎となるデータ整備と環境づくりを進めている段階だが、
将来はAIが品質変化の兆候を事前に検知できる仕組みを目指している。
第6章 測るが創るに変わる循環へ
オーティスの品質管理は、測る→学ぶ→創る→また測るという循環構造。
検査を終点ではなく始点として扱うことで、
常に次の改善が動き出す。
測定値は、設計者の考えと現場の感覚をつなぐ共通言語。
そこから生まれる対話と改善の積み重ねが、
±0.05mmという精度を現実のものにし、±0.01㎜の実現させている。
まとめ
オーティスにとって検査とは、
合否を決める行為ではなく、精度を学び続ける文化そのものだ。
そして近い将来、AIがその文化を共に学び、人とともに精度を育てていく時代がやってくるだろう。
測ることで終わらず、測ることで創る。
オーティスの品質は、常にその一歩先を見る文化であって欲しい。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。



