■CNTとは何か
CNTとは、Carbon Nanotubeの略である。
日本語では、カーボンナノチューブと呼ばれる。
炭素原子がチューブ状につながったナノ材料であり、非常に細く、軽く、高い熱伝導性や電気的特性を持つ可能性がある。
熱対策分野では、
● 高熱伝導材料
● 放熱シート
● 樹脂複合材
● TIM
● 軽量放熱材 などへの応用が期待されている。
■CNTの特徴
CNTの特徴は、
● 軽い
● 高熱伝導が期待できる
● 高強度
● 電気特性を持つ
● 樹脂に混ぜて複合化できる可能性がある ことである。
特に、軽量化が重要な分野では、CNTは魅力的な材料である。
AIサーバー、ロボット、航空宇宙、ウェアラブル機器などでは、
軽く、熱を逃がすという要求が増えていく。
その意味でCNTは、将来性のある材料である。
■CNTの課題
一方で、CNTには課題もある。
● 分散が難しい
● 均一化が難しい
● コストが高い場合がある
● 加工性に課題がある
● 量産安定性が難しい
● 粉体管理が必要になる
● 電気絶縁が必要な用途では注意が必要
特に重要なのが、分散である。
CNTは、単に混ぜれば性能が出るわけではない。
材料中で均一に分散し、熱が流れる経路を作る必要がある。
つまりCNTは、材料そのものの性能だけでなく、
どう分散させるかが重要になる。
■グラフェンとは何か
グラフェンとは、炭素原子が一層のシート状に並んだ材料である。
非常に薄く、高い熱伝導性や電気特性を持つ材料として注目されている。
熱対策分野では、
● 高熱伝導シート
● 放熱フィルム
● 樹脂複合材
● TIM
● 熱拡散材料 などへの応用が期待されている。
■グラフェンの特徴
グラフェンの特徴は、
● 非常に薄い
● 軽い
● 高熱伝導が期待できる
● 面方向の熱拡散に強い
● 柔軟材料との複合化が期待される ことである。
特に、スマートフォン、ウェアラブル機器、薄型電子機器では、
薄く、軽く、熱を広げる 材料が求められる。
その意味で、グラフェンは次世代熱拡散材料として期待されている。
■グラフェンの課題
グラフェンにも課題がある。
● 大面積化が難しい
● 均一品質が難しい
● コストが高い場合がある
● 積層状態で性能が変わる
● 樹脂や粘着材との相性が重要
● 実装時の取り扱いが難しい
また、単層グラフェンとしての理想性能と、実際の製品材料として使う場合の性能には差が出ることがある。
つまりグラフェンは、研究上の性能と、
量産部材としての性能を分けて考える必要がある。
■エアロゲルとは何か
エアロゲルは、非常に多孔質な材料である。
内部に大量の空気を含み、非常に低い熱伝導性を持つ。
そのため、断熱材として注目されている。
熱対策材料として見ると、エアロゲルは、熱を逃がす材料ではなく、
熱を遮る材料である。
EV、ESS、航空宇宙、建築、産業機器などで活用が期待される。
■エアロゲルの特徴
エアロゲルの特徴は、
● 断熱性が非常に高い
● 軽い
● 薄型断熱に使える可能性がある
● 高温部材の保護に使える
● 熱暴走対策への応用が期待される ことである。
特にEVやESSでは、電池セル間の熱伝播を抑える材料として注目される。
つまりエアロゲルは、熱を逃がすのではなく、
危険な熱を広げないための材料である。
■エアロゲルの課題
一方で、エアロゲルにも課題がある。
● 脆い
● 粉落ちしやすい
● 加工が難しい
● コストが高い場合がある
● 粉塵管理が必要になる
● ラミネートや保護材が必要になる
● 量産工程での取り扱いが難しい
特に重要なのは、高性能だが、扱いにくいという点である。
断熱性能が高くても、量産工程で粉が出る、割れる、形状が安定しない、貼れない、搬送できないとなると、採用は難しくなる。
つまりエアロゲルは、材料性能と、実装性のギャップが大きい材料である。
■次世代材料は万能材料ではない
CNT、グラフェン、エアロゲルは、どれも魅力的な材料である。
しかし、万能ではない。
CNTは分散が難しい。
グラフェンは大面積・均一化が難しい。
エアロゲルは脆く、粉落ちしやすい。
つまり次世代材料は、すごい性能を持つ一方で、使いこなすのが難しい材料でもある。
■材料性能と製品性能は違う
次世代材料で特に重要なのは、
材料単体の性能と、製品に組み込んだ時の性能は違うという点である。
例えば、研究室では高い熱伝導性を示しても、実際の製品では、
● 厚み
● 接触状態
● 粘着層
● 保護フィルム
● 加工ダメージ
● 量産ばらつき
● 経年劣化 によって性能が変わる。
つまり次世代材料では、
研究値よりも、
実装後の安定性能が重要になる。
■AIサーバーでの次世代材料
AIサーバーでは、GPU、HBM、電源部品などが高発熱化している。
そのため、次世代材料には、
● 高熱伝導
● 低熱抵抗
● 長期信頼性
● 液冷部材との適合
● 高密度実装対応 が求められる。
CNTやグラフェンは、熱拡散や高熱伝導材料として期待される。
ただし、AIサーバーでは連続稼働と高信頼性が必要なため、単なる初期性能だけでは採用されにくい。
重要なのは、長時間安定して使えることである。
■EV・ESSでの次世代材料
EVやESSでは、電池の熱管理が重要になる。
CNTやグラフェンは、放熱材や複合材料として期待される。
一方、エアロゲルは断熱材として期待される。
特に熱暴走対策では、熱を逃がす材料と、
熱を広げない材料を使い分ける必要がある。
EV・ESSでは、安全性、難燃性、絶縁性、長期耐久性も重要になる。
つまり次世代材料は、熱性能だけでなく、
安全性
信頼性
量産性 まで問われる。
■ウェアラブル・スマートデバイスでの次世代材料
ウェアラブル機器やスマートデバイスでは、
● 薄い
● 軽い
● 柔らかい
● 曲面に追従する
● 人体に近い
● 長時間使える ことが重要になる。
CNTやグラフェンは、薄型・軽量の熱拡散材料として期待される。
ただし人体に近い製品では、熱性能だけでなく、安全性、皮膚への影響、耐久性、柔軟性も重要になる。
つまりウェアラブル向け次世代材料では、
高性能と、人体近接での安心感の両立が必要になる。
■航空宇宙での次世代材料
航空宇宙では、軽量化が非常に重要になる。
そのため、CNT、グラフェン、エアロゲルには大きな期待がある。
● 軽く放熱する
● 軽く断熱する
● 極端な温度差に対応する
● 真空環境で使う
● 長期信頼性を確保する などの要求がある。
特にエアロゲルは、断熱材として注目される。
ただし航空宇宙用途では、信頼性要求が非常に高いため、材料性能だけでなく、長期使用時の安定性が重要になる。
■研究者視点 : 次世代材料は可能性の材料である
研究開発では、次世代材料に対して以下のような期待がある。
● 高熱伝導
● 超軽量
● 超薄型
● 高断熱
● 柔軟性
● 複合化
● 低熱抵抗
● 高信頼性
● 省スペース化
CNT、グラフェン、エアロゲルは、従来材料では難しかった熱課題を解決する可能性を持つ。
しかし研究者視点でも重要なのは、材料性能を実装性能へ変換できるかである。
■現場視点 : 次世代材料は量産の壁で止まりやすい
現場では、次世代材料に対して次のような課題が出ることがある。
● 割れる
● 粉が出る
● 伸びる
● 反る
● 貼れない
● 剥がれる
● 自動機で流せない
● コストが合わない
● 保管条件が難しい
● 品質ばらつきが大きい
つまり次世代材料は、研究室では魅力的でも、量産現場では簡単ではない。
材料が優れていても、
加工できない
貼れない
運べない
自動化できない となれば、量産採用は難しくなる。
■次世代材料の量産で起きやすい問題
量産工程では、次世代材料に関して以下のような問題が起きることがある。
● 打ち抜き時の割れ
● 粉落ち
● 端面崩れ
● 層間剥離
● ラミネート不良
● 粘着材との相性不良
● 搬送中の破損
● 巻き取り時の変形
● 自動機供給時の詰まり
● ロット間ばらつき
これらは、熱性能だけでなく、歩留まり、組立性、品質保証にも影響する。
つまり次世代材料では、材料をどう加工し、どう供給するかが非常に重要になる。
■OTIS視点
OTISは、CNT、グラフェン、エアロゲルそのものを開発する会社ではない。
しかし、次世代熱対策材料を量産工程で使える形にする領域では貢献できる可能性がある。
OTIS視点で重要なのは、
● 狙った形状に加工する
● 粉落ちや割れを考慮する
● 保護フィルムと積層する
● 粘着材と貼り合わせる
● 異種材料とラミネートする
● 自動化工程で扱いやすい供給形態にする
● 量産時のばらつきを抑える
● 顧客工程で使いやすい形へ変換する ことである。
次世代材料は、材料性能が高いほど、加工や実装が難しくなることがある。
だからこそ、材料性能を量産価値へ変換する技術が重要になる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 次世代熱対策シート材料の加工検討
● CNT・グラフェン系シート材料の加工検討
● エアロゲル系断熱材の加工検討
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● 保護フィルムとの積層
● 粘着材との貼り合わせ
● 異種材料積層
● リール供給
● 自動化工程向け供給形態設計
などを通じて、次世代熱対策材料を量産で使える状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。
特にAIサーバー、EV、ESS、ウェアラブル機器、航空宇宙では、材料性能だけでなく、軽量化、薄型化、安全性、量産性が重要になる。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● CNT材料そのものの開発
● グラフェン材料そのものの開発
● エアロゲル製造
● ナノ材料合成
● 粉体設計
● 樹脂配合設計
● 熱シミュレーション専業解析 を専門とする会社ではない。
しかし、次世代材料を量産工程で使える形にする
という領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ AIサーバー
★★★★★ EV・電池
★★★★★ ESS・蓄電システム
★★★★☆ ウェアラブル機器
★★★★☆ 航空宇宙
★★★★☆ スマートフォン
★★★★☆ ロボット
■まとめ
次世代材料は、“使える形”になって初めて価値になる
CNT、グラフェン、エアロゲルは、熱対策材料として大きな可能性を持つ。
CNTやグラフェンは、軽量・高熱伝導・薄型化の可能性を持つ。
エアロゲルは、軽量・高断熱の可能性を持つ。
しかし、次世代材料は高性能であれば採用されるわけではない。
実際には、
● 加工できるか
● 貼れるか
● 割れないか
● 粉が出ないか
● 自動化できるか
● コストが合うか
● 量産で安定するか が問われる。
つまり次世代材料の本当の課題は、材料性能を、量産で使える価値へ変換できるかである。
未来の熱対策では、新素材そのものだけでなく、その材料を狙った形状・厚み・精度・供給形態へ加工し、実際の製品に組み込める状態にする技術が重要になる。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



