【1】歩留まり(Yield)とは何か
歩留まりとは、生産されたデバイスのうち、良品として出荷できる割合を指す、半導体製造でもっとも重要な指標のひとつ。
たとえば歩留まり90% → 10%が不良
歩留まり50% → 半分が不良(致命的)
【2】歩留まりが重要な理由
半導体製造は超高コスト構造。
● EUV露光 → 数千億円の装置
● 材料 → 高価(フォトレジスト、ウェハ)
● プロセス → 長時間(数百工程)
● 設備稼働 → 24時間365日
このため たった数%の歩留まり変動が利益を大きく左右する。
特に先端プロセスでは:
● Defect density(欠陥密度)
● 微細化による歩留まり低下
● 設備の安定性 が企業の競争力を決める。
【3】歩留まりに影響する主な要因
●(1)物理的欠陥(Defect)
・ パーティクル(ゴミ)
・ スクラッチ(傷)
・ 異物混入
・ 欠け・クラック
1つの異物が数千個のチップを不良にすることもある。
●(2)プロセス異常
・ 膜厚ばらつき
・ エッチング深さの不均一
・ イオン注入量の偏り
・ リソグラフィの焦点ズレ
微細化が進むほど許容範囲が狭まり、nm単位のばらつきで不良が発生。
●(3)設計(Design)の問題
・ レイアウトのばらつきに弱い構造
・ 電流集中
・ 熱がこもりやすい配置
Design for Manufacturability(DFM)が必須になっている。
●(4)材料起因
・ フォトレジスト特性の変動
・ ガス純度の違い
・ CMPスラリーの劣化
・ ウェハ結晶欠陥
材料メーカーとは密接な連携が必要。
●(5)装置の状態
・ 劣化
・ 部品摩耗
・ クリーニング周期
・ 校正(Calibration)ずれ
装置メンテナンスは歩留まりの生命線。
【4】歩留まり改善のアプローチ
歩留まり改善は「正しい観察+正しい解析」が全て。
代表的なアプローチ:
●(1)SPC(統計的プロセス管理)
装置データ(温度、圧力、膜厚など)を継続監視し、異常傾向を早期検出する手法。
・ Control Chart
・ 工程能力指数(Cp/Cpk)
先端工場はSPCを自動化している。
●(2)FDC(Fault Detection & Classification)
装置のパラメータ(数千点)をリアルタイム解析し、異常兆候を検出する技術。
例:
・ プラズマの発光スペクトル
・ モーター電流
・ 温度波形など
AIと相性が良く、急速に普及している。
●(3)欠陥解析(Defect Inspection)
・ 光学顕微鏡
・ SEM
・ AFM
・ 電子線検査
・ X-ray
欠陥分布をマップ化し、原因プロセスを突き止める。
●(4)DOE(実験計画法)
複雑なプロセス条件を効率よく最適化する手法。
例:
・ 成膜温度 × ガス流量 × 圧力 → どの組み合わせが最適?
・ CMPの圧力 × パッド × スラリー → 歩留まりへの影響
●(5)フィードバックループ(Feed-forward / Feed-back)
前工程のデータを後工程へ活用。
例:
リソグラフィの寸法 → エッチング補正
CMPの平坦度 → パターニング条件調整
【5】歩留まり改善チームの役割
歩留まり改善は 部門横断のチーム戦。
・ 設計(DFM)
・ プロセス技術
・ 装置エンジニア
・ 品質(QA)
・ 材料メーカー
・ データサイエンティスト
工場の中で最も難易度が高く、かつ企業の収益に最も貢献する領域のひとつ。
【6】最新トレンド
・ AI分析による欠陥原因推定(Root Cause Extraction)
・ デジタルツインでのプロセス予測
・ ウェハ全体のリアルタイムモニタリング
・ Advanced FDC(Deep Learning × 装置データ)
・ EUV特有の欠陥(Mask Defect、Stochastic Defect)対策
・ チップレット化による「複数ダイ歩留まり」問題
特にEUV世代では確率的欠陥が増え、従来手法では分析が困難。
ここが世界の半導体工場が直面する最大課題。
【7】まとめ
・ 歩留まりは工場の利益を左右する最重要KPI
・ プロセス、材料、装置、設計がすべて影響
・ SPC、FDC、DOE、欠陥解析が基本手法
・ AI・データ分析が必須の時代
・ EUV・Chiplet時代には歩留まり改善の難易度がさらに増す
【理解チェック】
1.歩留まりが数%変動するだけで利益に大きく影響する理由を説明してください。
2.SPCとFDCの違いを簡潔に説明してください。
3.歩留まり改善で材料メーカーとの連携が重要な理由は?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



