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4. 熱 × 複合課題編:熱は単独では存在しない
4-2. 熱 × 絶縁 〜熱を逃がしたい。でも電気は流したくない〜

材料・加工技術

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4. 熱 × 複合課題編:熱は単独では存在しない<br>4-2. 熱 × 絶縁 〜熱を逃がしたい。でも電気は流したくない〜

熱対策を考えるとき、多くの人は熱伝導率に注目する。
しかし実際の製品設計では、熱を逃がすだけでは足りない。
同時に、電気を止める必要がある。
この矛盾した要求が、熱 × 絶縁という課題である。

■熱を逃がす材料は電気も通しやすい

熱対策材料として有名なものには、

 ● 銅

 ● アルミ

 ● グラファイト

 ● 金属プレート などがある。

これらは熱をよく伝える。

しかし同時に、電気も通すことが多い。

つまり、熱には有利。

電気には不利、という特徴を持つ。

■絶縁材料は熱を止めやすい

一方、

 ● PET

 ● PI

 ● 発泡体

 ● 一般樹脂

などは、電気を通しにくい。

つまり絶縁には有利である。

しかし、熱も伝えにくい。

つまり、絶縁には有利。

熱には不利、という特徴になる。

■熱と絶縁は本質的に相反する

ここが熱設計の難しいところである。

熱を逃がそうとすると、導電材料を使いたくなる。

しかし導電材料を使うと、絶縁が難しくなる。

逆に、絶縁を重視すると、熱が逃げなくなる。

つまり、絶縁は本質的にトレードオフになりやすい。

■AIサーバーで起きていること

AIサーバーでは、GPUやCPUが大量の熱を発生する。

そのため、できるだけ効率よく熱を冷却装置へ逃がしたい。

しかし同時に、サーバー内部には高密度配線が存在する。

もし放熱材料が導通すれば、重大な故障につながる可能性がある。

そのため、AIサーバーでは

高放熱

高絶縁 を同時に満たす材料が求められる。

■EVで起きていること

EVではさらに厳しい。

バッテリーは数百Vクラスの電圧を扱う。

一方で、発熱も大きい。

つまり、熱は逃がしたい。

しかし漏電は絶対に許されない。

ここで求められるのが、絶縁放熱である。

■ESSでも同じ課題が発生する

ESSは大型化が進んでいる。

蓄えるエネルギー量が増えるほど、発熱量も増える。

そして、電圧も高くなる。

つまり、EVと同じく放熱絶縁の両立が必要になる。

近年のESS火災対策でも、熱設計と絶縁設計は切り離せなくなっている。

■セラミックが注目される理由

この課題を解決する代表的な材料が、

セラミック系材料である。

例えば、

 ● アルミナ

 ● 窒化アルミニウム

 ● 窒化ホウ素 などである。

これらは、熱をある程度伝えながら、電気は通しにくい。

つまり、熱を流し電気を止めるという特性を持つ。

■しかし材料だけでは解決しない

ここで重要な誤解がある。

セラミックを使えば終わりではない。

実際には、

発熱体

 ↓

放熱材

 ↓

絶縁層

 ↓

冷却部材 という構造になる。

このとき、接触状態が悪いと、熱は流れない。

つまり、絶縁性能だけでなく、接触熱抵抗も重要になる。

■絶縁破壊は突然起きる

熱問題は徐々に悪化することが多い。

しかし絶縁破壊は違う。

ある瞬間、突然起きる。

そのため、絶縁設計では、余裕を持った設計が必要になる。

特に、

AIサーバー

EV

ESS では、長期信頼性が重要になる。

■熱膨張が絶縁を壊すこともある

発熱すると材料は膨張する。

しかし、

金属

樹脂

セラミック では膨張量が違う。

すると、界面に応力が発生する。

長期間繰り返すと、

 ● クラック

 ● 剥離

 ● 絶縁劣化 が発生することがある。

つまり、熱問題が絶縁問題を引き起こす。

■3D半導体でさらに難しくなる

3D半導体では、チップが縦方向に積層される。

すると、熱密度が上がる。

しかし、絶縁距離は短くなる。

つまり、より高い放熱性能

より高い絶縁性能を同時に求められる。

ここが3D半導体の大きな課題の一つである。

■ロボットでも重要になる

人と接触するロボットでは、

モーター

バッテリー

制御基板が発熱する。

しかし、感電リスクは避けなければならない。

つまり、熱を逃がしながら人を守る必要がある。

今後ロボットが増えるほど、熱×絶縁の重要性は高まる。

■ウェアラブル機器でも同じ

人体に近い機器では、

発熱だけでなく、安全性も重要になる。

ウェアラブル機器では、熱と絶縁は切り離せない。

人体との距離が近いほど、両立の難易度は上がる。

■研究者視点 : 絶縁放熱は未来材料の中心テーマ

近年の材料開発では、

単純な高熱伝導材料より、

絶縁放熱材料への投資が増えている。

なぜなら、

AIサーバー

EV

ESS

3D半導体 のすべてが求めているからである。

■現場視点 : 絶縁性能は加工で壊れる

現場では、材料性能より怖いものがある。

それは、加工不良である。

例えば、

 ● バリ

 ● 異物

 ● ピンホール

 ● ラミネートズレ

 ● 端面露出 である。

カタログ上は絶縁でも、加工状態によって性能が変わる。

つまり、絶縁は材料だけでは決まらない。

■熱 × 絶縁の量産で起きやすい問題

量産工程では、

 ● 絶縁フィルムのズレ

 ● 金属箔露出

 ● 異物混入

 ● 圧縮ムラ

 ● 厚みばらつき

 ● 剥離

 ● クラック などが発生することがある。

これらは、熱性能だけでなく、安全性そのものに影響する。

■OTIS視点

OTISは絶縁材料メーカーではない。

放熱材料メーカーでもない。

しかし、

放熱材

絶縁材

粘着材

金属箔

を組み合わせ、量産で成立する構造へ加工する領域では貢献できる可能性がある。

特に、

 ● 高精度ラミネート

 ● 微細加工

 ● 異種材料積層

 ● 絶縁層付き放熱構造

 ● 自動化供給 では価値を発揮できる可能性がある。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 絶縁材加工

 ● 放熱材加工

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料積層

 ● 微細打ち抜き

 ● リール供給

 ● 自動化対応設計

などを通じて、熱と絶縁を両立する部材づくりに貢献できる可能性がある。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 絶縁材料そのものの開発

 ● セラミック開発

 ● 高電圧設計

 ● 電源設計

 ● 絶縁解析専業 を専門とする会社ではない。

しかし、熱と絶縁を両立する構造を量産で成立させる

という領域では重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ AIサーバー

★★★★★ EV・電池

★★★★★ ESS・蓄電システム

★★★★★ 3D半導体

★★★★☆ ロボット

★★★★☆ ウェアラブル機器

★★★★☆ 通信機器

■まとめ

熱を逃がしたい。でも電気は流したくない

これが熱×絶縁の本質である。

未来産業では、熱を逃がすだけでは足りない。

同時に、絶縁し、安全を守り、長期信頼性を確保する必要がある。

 

そのため、熱対策は材料選びだけでは終わらない。

構造、接触、加工、量産まで含めて成立して初めて、真の絶縁放熱設計になるのである。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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