【1】なぜAIチップはプロセス要件が異常に厳しいのか
GPU・TPU・AIアクセラレータは、
従来のロジックとは桁違いの負荷がかかる。
求められる要件:
・大量の演算ユニット(MAC)を同時動作
・超高電流密度(10 MA/cm²級)
・配線の過密化(層数増加)
・電力密度(W/mm²)の急上昇
・巨大ダイサイズ(H100は814mm²)
その結果、熱・電流・信頼性 がプロセスの最重要テーマになる。
AIチップは「微細化技術 × 電力制御技術 × パッケージ技術」の総合格闘技。
【2】配線密度の限界に挑む(BEOL:多層配線)
AIチップはロジック回路よりも、
配線の方がボトルネック になりやすい。
● 課題
・配線抵抗の増大(Cu → Ru/Coなど新材料へ移行)
・RC遅延の増加(Low-kの限界、Ultra Low-kの脆弱化)
・多層化の限界(12層 → 15層 → 20層)
・熱による配線の劣化(Electromigration)
● 最新の対応策
・バリアレス金属(Ru、Mo、Co)
・ハイブリッドLow-k材料
・高アスペクト比対応のALDバリア
・BEOLでの新ALD技術の採用加速
AI時代は配線材料の時代と言われるほど重要になっている。
【3】電力密度(Power Density)の急上昇
AIチップはサーバー1枚で数百Wを使う。その電力が 数百mm²のダイに集中 する。
● 課題
・局所ホットスポット
・Thermo-mechanical stress(熱応力)
・パッケージから外部への放熱経路の限界
・電力供給(PDN)の容量不足
● プロセス側の対策
・Metal Stackの最適化
・厚銅配線(Top Metal)
・TSV・Micro-bumpによる3D放熱
・バックサイド電力供給(Backside Power Delivery Network)
特にIntel・TSMCは Backside PDN を導入し、
電源ラインを裏面から供給して抵抗低減を図っている。
【4】動作電流の増大と信頼性(EM / TDDB)
AIチップは巨大な電流を扱うため、信頼性故障が顕著になる。
代表的な信頼性問題:
● Electromigration(EM)
・電流によって金属原子が移動し、断線・空洞化を引き起こす現象
・特に配線が細く、電流が大きいAIチップでは深刻
● TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)
・絶縁膜に電界がかかり続けることで絶縁性が徐々に劣化
・High-k使用領域で顕著
● BTI(Bias Temperature Instability)
・高温下でのトランジスタのVthシフト
・AIチップの高発熱と組み合わせて問題が増加
AIチップは信頼性と戦うデバイスといえる。
【5】巨大ダイサイズによる歩留まり問題
AIチップは800mm²級の「巨大ダイ」を製造する。
しかし、ウェハ上の欠陥が1つでも当たると不良になる。
→ 歩留まりが非常に悪くなる
そのため、
・チップレット化
・マルチダイパッケージ
・HBMとのStack構造(CoWoS、InFO、FO-PLP)
が必須になっている。
TSMC・NVIDIAが共に成長したのは、先端プロセス × パッケージ(CoWoS) の組み合わせによるもの。
【6】AIチップ × 先端パッケージングの関係性
AIチップはパッケージなしでは成立しない。
● チップレット化の利点
・不良時の廃棄物が減る(歩留まり改善)
・大規模チップを小分割して製造可能
・熱密度を分散
・HBM(高帯域メモリ)を近接配置できる
● 代表的技術
・TSMC CoWoS
・Samsung I-Cube
・Intel EMIB / Foveros
・FO-WLP(Fan-out)
AIチップは プロセスだけでなくパッケージ技術が性能を決める時代。
【7】最新トレンド(AIチッププロセスの未来)
● Backside Power Delivery(BSPDN)
→ 電源を裏面から供給し、配線抵抗を大幅に削減
● PowerVia(Intel)
→ 配線混雑を解消しクロック周波数を向上
● 3Dロジック × HBM統合
→ メモリ帯域のボトルネックを解消
● AIアクセラレータ向け専用プロセス
→ 特定領域のみ高耐熱化、局所材料変更
● 先端放熱材料(グラファイト、TIM進化、マイクロ液冷)
→ 熱問題解決が最大テーマ
AIチップ製造は、「微細化 × 電力供給 × 熱管理」の三位一体が鍵。
【8】まとめ(5-12)
・AIチップは高電流・高密度・高熱という過酷な条件で動作
・配線抵抗の増大、RC遅延、EMが大きな課題
・熱密度増大によりロジックより熱設計が重要
・巨大ダイの歩留まり低下 → チップレット化が必須
・Backside PDNや先端パッケージが性能を決める
・AIプロセスはプロセス・配線・パッケージが融合した領域
【理解チェック】
1.AIチップで配線がボトルネックになる理由は?
2.Backside Power Deliveryが重要な理由を説明せよ。
3.EM(エレクトロマイグレーション)がAIチップで深刻な理由は?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



