TECH COLUMN 技術コラム

5-13. 信頼性技術(Reliability Engineering)

材料・加工技術

公開日:

【1】なぜ信頼性が先端プロセスで最重要になっているのか

2nm・GAA・多層配線・AIチップ時代では、
性能よりも信頼性が設計制約の中心になると言われている。

 

理由は:

 ・微細化で膜厚・配線幅が極薄化

 ・電流密度・電界強度が急上昇

 ・材料の限界が近づいている

 ・高温環境(AIチップ内温度100℃超)での動作

 ・車載・産業用途の需要増

特に「故障しない」「パラメータ変動が小さい」ことが、
最終製品メーカー(EV/データセンター/自動運転)の必須要件。

【2】半導体における主な信頼性劣化メカニズム

●(1)TDDB(Time-Dependent Dielectric Breakdown)

絶縁膜(SiO₂/High-k)が、
時間をかけて徐々に劣化し、絶縁破壊に至る現象。

特徴:

 ・電界が高いほど加速

 ・High-k採用で重要性が増した

 ・ゲート酸化膜が薄い先端ノードほど深刻

 ・ゆっくり劣化 → 最後に急激破壊

特にGAAのような「ゲート密閉構造」では要注意。

 

●(2)BTI(Bias Temperature Instability)

ゲートに電圧をかけ続けると、しきい値電圧(Vth)が変動する現象。

種類:

 ・NBTI:pMOSで多い

 ・PBTI:nMOSで発生

現象:

 ・長時間ストレス → Vthシフト

 ・回路の遅延増加

 ・AIチップの高速動作では致命的

要因:

 ・High-k膜の欠陥

 ・トラップ捕獲・脱離

BTIは「2nm時代の最大の敵」のひとつ。

 

●(3)HCI(Hot Carrier Injection)

チャネル中の高エネルギー電子が、
ゲート絶縁膜にダメージを与えて劣化させる現象。

特徴:

 ・高電圧・高速スイッチングで増加

 ・RF・AI用途で深刻

 ・トランジスタのgm低下・Vthシフト

GAAでも引き続き重要。

 

●(4)EM(Electromigration)

金属配線を流れる巨大な電流によって金属原子が移動し、
断線・空洞化(void)・ヒロック(hillock) が発生する現象。

特にAIチップでは:

 ・電流密度が非常に高い

 ・配線幅が極細

 ・温度上昇が大きい

→ EMの影響が大きく、配線材料が限界に近づいている。

配線材料は Cu → Co / Ru へシフト中。

 

●(5)車載向け特有の信頼性要求(AEC-Q100)

車載は過酷な条件で動作するため要求が別次元。

例:

 ・-40℃〜150℃温度サイクル

 ・高湿度環境

 ・高電流・ノイズ

 ・長寿命(10〜15年)

そのため、

 ・パワーデバイス(SiC)

 ・ADASチップ

 ・安全性チップ

では信頼性試験が極めて重い。

【3】信頼性評価の代表的試験

● TDDB試験

絶縁膜が破壊するまで高電圧を印加して測定。

● BTI試験

温度と電圧ストレス下でVth変動を評価。

● EM試験

高温・大電流で配線の断線までの時間を測定。

● HTOL(High Temperature Operating Life)

高温での連続稼働試験。

● TCT(Temperature Cycling Test)

温度変化による劣化を評価。

これらは信頼性工学を体系的に理解する必要がある。

【4】先端ノードでの信頼性改善アプローチ

●(1)材料の最適化

 ・High-k膜の欠陥低減

 ・金属ゲートのWork-function調整

 ・Co/Ru配線の採用

 ・ULK材料のダメージ低減

 

●(2)プロセス制御

 ・成膜・エッチングのダメージ低減

 ・アニール条件改善

 ・酸素・水分の低減

 

●(3)デバイス設計最適化

 ・電界分散構造

 ・ゲート形状改善

 ・EM耐性配線レイアウト

 ・過度な応力集中の排除

 

●(4)回路レベル対策

 ・適切なマージン設計

 ・誤差吸収のデジタル補正

 ・高温補償

【5】AIチップ・車載チップで信頼性が最重要化

AIチップ → 高熱 × 高電流 × 長時間動作 → EM/TDDB/BTIが増加
車載チップ → 温度サイクル × 長寿命 → 材料疲労・界面劣化

 

現在は、
性能より信頼性 を優先する設計思想が再び強くなっている。

微細化が進むほど、信頼性は本質的課題になる。

【6】未来の信頼性技術トレンド

● 材料の基礎物性を再定義(ULK、High-k、金属材料の刷新)

● 機械学習による劣化予測>

● DFM × 信頼性の統合解析

● Backside Power DeliveryによるEM根絶への挑戦

● 3D stackedデバイスの熱・応力モデル強化

 

特に、AI × 信頼性解析 はすでに量産導入が始まっており、プロセス制御の要となりつつある。

【7】まとめ(5-13)

 ・信頼性は2nm以降の中心課題

 ・TDDB / BTI / HCI / EM など複数の劣化機構が存在

 ・High-kや極細配線で問題が顕著化

 ・AIチップは熱 × 電流で信頼性負荷が最大

 ・車載は温度・寿命要件が別次元

 ・材料 × プロセス × 設計 × 回路の総合最適化が必須

【理解チェック|5-13】

1.なぜ微細化すると信頼性問題が増えるのか?

2.BTIがAIチップで重要になる理由を説明せよ。

3.EM(エレクトロマイグレーション)が起きるメカニズムは?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

最新記事

  • 8-7. 装置メーカーの役割

    半導体は「設計」と「材料」だけでは作れない。 それを実際のチップに変えるのが半導体製造装置である。... 続きを読む
  • 8-6. 材料メーカーの役割

    半導体はシリコンだけで作られているわけではない。 実際には、 ・数百種類の材料 ・数千工程の化... 続きを読む
  • 8-5. OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)

    半導体は、ウェハ上で回路が完成しただけではまだ製品ではない。 チップを切り出し、外部と電気的に接続... 続きを読む

関連記事

  • 8-7. 装置メーカーの役割

    半導体は「設計」と「材料」だけでは作れない。 それを実際のチップに変えるのが半導体製造装置である。... 続きを読む
  • 8-6. 材料メーカーの役割

    半導体はシリコンだけで作られているわけではない。 実際には、 ・数百種類の材料 ・数千工程の化... 続きを読む
  • 8-5. OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)

    半導体は、ウェハ上で回路が完成しただけではまだ製品ではない。 チップを切り出し、外部と電気的に接続... 続きを読む

CONTACT お問い合わせ

岡山 / Okayama

0867-42-3690

東京 / Tokyo

03-6810-4830

お問い合わせはこちら