TECH COLUMN 技術コラム

5章:最先端プロセス技術
5-15. 先端プロセスの未来予測と課題

材料・加工技術

公開日:

【1】2nm以降、微細化は物理限界との戦いへ

半導体の微細化は、
「寸法を縮めれば性能が上がる時代」→「物理を騙しながら進む時代」 に突入している。

 

2nm以降で顕著になる問題は:

 ・量子トンネル電流の急増

 ・ゲート制御の弱体化(Electrostaticsの限界)

 ・配線抵抗の急上昇(R増加→RC遅延悪化)

 ・材料の信頼性低下(ULKの脆化、CuのEM劣化)

 ・EUV解像限界(波長13.5nmの壁)

つまり、スケーリングの限界が現実的な制約として立ちはだかる。

【2】EUVの物理限界とHigh-NAのゆくえ

EUVは半導体を支える最重要技術だが、限界が見えてきている。

 

主なボトルネック:

 ・マスクブラー(Mask Blur)

 ・反射ミラーの多層膜損失

 ・露光時の確率ノイズ(Stochastic Defects)

 ・ショットノイズによる寸法揺らぎ

High-NA(NA=0.55)は解像度を押し上げるが、
これが事実上の最後の伸びしろと言われている。

 

EUVを超える候補は:

 ・短波長EUV(6.x nm)

 ・EUV+電子ビーム併用(ハイブリッド)

 ・次世代マスク技術(Phase Shift EUV)

ただし、どれも実用化までは距離がある。

【3】微細化に代わる“3つの新パラダイム”

■(1)バックサイド配線(Backside Power Delivery)

配線遅延が限界に近い今、電源配線を裏側に移すという根本的構造改革が進む。

メリット:

 ・電源IR dropの大幅削減

 ・電源ノイズの減少

 ・表側配線の自由度向上

Intel(PowerVia)、TSMC、Samsungが覇権争い中。

 

■(2)トランジスタの3D化(CFET / 3D Sequential)

GAAの次は CFET(Complementary FET)

 ・NMOSとPMOSを縦に積む

 ・トランジスタ間距離ゼロ

 ・面積削減と性能向上が同時に進む

さらにその先は:

 ・Monolithic 3D

 ・3D sequential integration

 ・Wafer-to-wafer bonding

平面の限界 → 垂直方向に逃げる時代へ。

 

■(3)チップレット × 高度パッケージ

微細化に頼らず性能を高める最有力解。

 ・CoWoS

 ・SoIC

 ・Foveros

 ・EMIB

 ・HBM4/5

従来の「巨大SoC」から、分割して積み合わせる構造(レゴモデル) が主流になる。

【4】材料の限界と“ポストSi材料”の台頭

寸法を縮めても物理が許さない領域に入ったため、
材料そのものをアップグレードする動き が加速。

主な候補:

 ・2D材料(MoS₂、WS₂、グラフェン)

 ・CNT(カーボンナノチューブFET)

 ・強誘電体トランジスタ(FeFET)

 ・次世代Low-k(エアギャップ、ナノポーラス)

 ・Cu→Ru/Co/Moへの置換

 

但し、最大の壁は:

 ・量産安定性

 ・信頼性(特にULK材料)

 ・既存装置との整合性

 ・コスト

材料工学が再び半導体進化の主役になっている。

【5】熱の壁(Thermal Wall)

AIチップ・GPUは電力密度が急上昇し、
熱によって性能が制限される時代 に突入。

 

必要となる技術:

 ・高熱伝導材料(グラファイト、ダイヤモンド)

 ・Direct Liquid Cooling

 ・Backside Cooling

 ・TSVによる熱逃がし

 ・TIMの進化(界面材の高性能化)

熱問題が解決しない限り、どれだけトランジスタを増やしても性能は伸びない。

【6】量子効果(Quantum Effects)の顕在化

原子スケール近くでは、
トランジスタが“統計の世界”になる。

例:

 ・トンネル電流

 ・Variability(ランダム性の急増)

 ・RTN(Random Telegraph Noise)

 ・デバイス寿命の揺らぎ

このため、物理シミュレーション × AI × 統計モデル を融合した設計が必須に。

【7】量子・光・脳型デバイスの並走

●(1)量子デバイス

誤り訂正が鍵。用途はまだ限定的。

 

●(2)シリコンフォトニクス

銅配線の限界を超える、光インターコネクトの本命
AIデータセンターで急拡大。

 

●(3)ニューロモーフィック

脳型アーキテクチャ。
演算と記憶を同じ場所で行うため、低電力化が可能。

【8】まとめ:限界突破の時代へ

・微細化は物理限界と正面衝突

・EUVも数世代で限界に到達

・課題は「配線抵抗・電流密度・熱」

・解決手段は「3D化・チップレット化・材料進化」

・新パラダイム(量子・光・脳型)が同時進行

・半導体は縮める技術→積む・分ける・物理を変える技術へシフト

【理解チェック】

1.2nm以降で最も顕著になる物理的制約は?

2.High-NA EUVは何を解決し、何が限界となる?

3.CFET構造の利点を説明してください。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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