TECH COLUMN 技術コラム

5章:最先端プロセス技術
5-5. 3D構造化技術(TSV / 3D NAND / 3D DRAM)

材料・加工技術

公開日:

【1】3D構造化技術とは何か

半導体性能を上げる手段は大きく2つある。

① 微細化(スケーリング)
② 三次元化(3D化)

微細化が物理限界に近づく中、「3D化」は半導体技術の新しい成長軸となっている。

3D構造化技術には以下の代表例がある:

 ● TSV(Through-Silicon Via)による3Dパッケージ

 ● 3D DRAMの積層構造

 ● 3D NANDの垂直積層(数百層 → 1000層時代)

【2】TSV(Through-Silicon Via)の基礎と応用

TSVとは シリコン貫通電極 のこと。

従来、チップ同士の接続はパッケージ基板を介していたが、
TSVでは チップを垂直方向に貫通する電極で直接接続できる。

効果:

 ・ 信号遅延の劇的低減

 ・ 消費電力の削減

 ・ 高帯域の通信が可能(HBMの基盤技術)

●TSVの典型工程

 ・ 高アスペクト比エッチング(深い穴をまっすぐ掘る)

 ・ 絶縁膜形成(SiO₂)

 ・ バリアメタル

 ・ Cu埋め込み(ダマシン技術)

 ・ CMPで平坦化

いずれも難易度が高く、歩留まりを左右する最重要プロセスの1つ

●TSVの主な用途

 ・ HBM(High Bandwidth Memory)

 ・ 2.5D / 3Dパッケージ(CoWoSなど)

 ・ イメージセンサー

特にHBMは、AIサーバー需要により爆発的に市場が成長している。

【3】3D DRAM(積層DRAM)のトレンド

従来のDRAMは平面構造だったが、容量増加の要求により
垂直方向にセルを積み上げる研究が進んでいる。

●課題

 ・ DRAMはキャパシタ(蓄電)構造が複雑

 ・ リーク電流の抑制が難しい

 ・ 高アスペクト比のトレンチ形成が技術的に極めて難しい

3D DRAMはまだ実用段階ではないが、AI・HPC向けに将来の本命技術と言われている。

【4】3D NANDの進化(300層 → 1000層へ)

3D NANDは最も成功している“3D化”技術。

平面NANDの微細化が限界に達したため、
メモリセルを縦方向に積み上げる方式に切り替わった。

現在:

 ・ 300層〜400層:量産中

 ・ 500〜600層:試作段階

 ・ 1000層:2030年前後の目標

層数増加の課題

 ・ 高アスペクト比穴加工(AR=50〜100以上)

 ・ 均一なエッチング深さ

 ・ 成膜の側壁被覆性

 ・ 歪みの蓄積による欠陥増加

層数が増えるほど、エッチングと成膜の技術が限界に近づく

3D NANDはまさに 巨大な高層ビルを作るような技術 と言われる。

【5】3D化が半導体にもたらすインパクト

●(1)性能向上(帯域・速度)

TSVで短距離高速通信が可能となり、
HBMがGPUの性能を根本的に引き上げた。

●(2)小型化

3D積層により、フットプリントを変えずに容量や性能を増やせる。

●(3)省電力化

配線長が短くなることで消費電力が低減。

●(4)新しいアーキテクチャの実現

Chipletや異種混載(Logic + Memory)が容易になり、システム全体の構造が変わる。

【6】3D化の課題

3Dはメリットだけではなく、以下の課題も重大:

 ・ 熱問題(縦方向に熱がこもりやすい)

 ・ 層間応力・歪み(Warpage)

 ・ TSVによるシリコン弱体化(ストレス)

 ・ 歩留まり低下(積層数が多いほど難しい)

 ・ 設計ルールが複雑化

特に熱問題はAIチップで深刻となり、3Dをどう冷やすか が業界の最大テーマの1つ。

【7】まとめ(5-5)

 ・ 微細化の限界を補う手段として3D化が重要性を増している

 ・ TSVはHBMや2.5D/3Dパッケージの中核技術

 ・ 3D NANDは層数で性能向上(300層→1000層へ)

 ・ 3D DRAMは将来の本命技術として研究中

 ・ 3D化は性能向上をもたらす一方、熱・応力・歩留まりが課題

【理解チェック】

1.なぜ3D化が必要とされているのでしょうか?

2.TSVがDRAMやGPUの性能向上に貢献する理由は?

3.3D NANDで層数増加が難しくなる理由を2つ挙げてください。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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