【1】配線技術が微細化のボトルネックになった理由
半導体は「トランジスタの微細化」で性能向上してきたが、
近年は 配線(Interconnect)が性能劣化の主因となっている。
その理由は以下:
● 金属配線(Cu)の抵抗が微細化で上昇
● 配線間の寄生容量が増加
● RC delay(抵抗 × 容量)が支配的に
● 多層配線化(10層→15層以上)による複雑化
特に AI / GPU / CPU では、トランジスタよりも
配線の遅延がチップ全体の性能を決める時代になっている。
【2】Low-k / Ultra Low-k 材料の導入理由
配線遅延(RC delay)を改善するには、容量(C)を減らす必要がある。
容量は以下で決まる:
C = ε × A / d (ε:誘電率)
つまり、
誘電率が小さい(Low-k)材料を使う → 容量が減る → 遅延が減る という流れ。
従来 SiO₂(k≈4)
Low-k(k≈2.7)
Ultra Low-k(k≈2.2〜2.4)と進化している。
【3】Low-k材料の課題と対策
Low-kは誘電率を下げるため 多孔質(空気の入り込んだ構造)が多い。
その結果、以下の課題が発生する:
● 機械強度の低下
● ダマシンCMPでの膜崩壊
● 水分吸収による劣化
● 熱・ストレスによるクラック
● 金属との界面剥離
→ 信頼性が大幅に低下しやすい。
そのため最新プロセスでは、
・ SiCNなどの保護膜との組み合わせ
・ プラズマ処理による膜強化
・ Pore Sealing(孔塞ぎ)技術
・ ALDによるコンフォーマルコーティング
など多数の工夫が必要。
【4】多層配線(10層→15層→20層)の進化
微細化に伴い、配線層は増え続けている。
Intel・TSMCの先端ロジックでは:
● 10〜12層:従来
● 15層:一般化
● 20層:AIチップで検討中
配線密度と配線距離の短縮が性能向上に直結するため、
多層化は不可避になっている。
●多層配線の課題
・ スタック構造のストレス蓄積
・ 熱膨張差による層間剥離
・ 層間絶縁膜の強度不足
・ ビア抵抗の増加(コンタクト抵抗問題)
特にビアは微細化で太さが限界に近づき、
コンタクト抵抗がトランジスタ性能を支配する時代になっている。
【5】ダマシンプロセスの進化
多層配線の形成には Dual Damascene(デュアルダマシン) が使われる。
ステップ:
1.Low-kに溝とビアを加工
2.Ta/TaNバリア膜
3.Cu埋め込み
4.CMPで平坦化
課題:
・ Low-kのダメージ・崩壊
・ Cuのディフュージョン(拡散)
・ バリア膜の薄膜化限界
先端ノードでは、
・ RuやCoなどのバリアレス材料
・ Cu再結晶化技術
・ ALDバリア膜 など新材料研究が進む。
【6】今後の方向性(Post Low-k時代)
Low-k材料の信頼性が限界に近づき、
以下の新アプローチが検討されている。
● Air-gap構造(空気を絶縁体として使う)
● Hybrid Bondingで配線そのものを短縮
● Cu以外の新材料(金属間化合物、グラフェン)
● Backside Power Delivery(背面給電)
特に 背面給電(BS-PDN) では、電源配線を裏側に分離することで
前面配線の密度を大幅に減らすことができ、配線抵抗問題への決定打になりつつある。
【7】まとめ(5-7)
● 配線遅延(RC delay)は先端プロセスの最大ボトルネック
● Low-kで容量を減らし、配線速度を改善
● しかしLow-kは強度が低く、信頼性課題が多い
● 多層配線(10→15→20層)はAIチップで必須
● ダマシン技術は材料・工程の限界に挑んでいる
● 背面給電やHybrid Bondingなど新構造が登場
【理解チェック】
1.Low-k材料を使うと配線遅延が減る理由を説明してください。
2.Low-k材料の代表的な弱点を2つ挙げてください。
3.多層配線が増えるとどのような課題が生じるでしょうか?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



