【1】なぜHBM / Chipletが必要になったのか
① メモリ帯域がボトルネックになった
AIチップでは、
・演算性能(FLOPS)は指数関数的に向上
・メモリ帯域は相対的に伸びにくい
結果として計算できるのにデータが来ない 状態が発生。
→ CPU/GPUの近くにメモリを置く必要が生じた。
② モノリシックSoCの限界
1チップ化(モノリシック)では、
・チップサイズ肥大
・歩留まり悪化
・コスト急増 が避けられない。
→ 機能ごとに分割し、後工程でつなぐ という発想へ。
【2】HBM(High Bandwidth Memory)とは何か
HBMとは、DRAMを垂直方向に積層し、TSVで接続した超高速メモリ。
特徴:
・非常に広いI/O幅(数千bit)
・低クロック・低消費電力
・GPU / AIアクセラレータと近接配置
結果として:
・帯域:数TB/sクラス
・電力効率:従来DDRより大幅改善
AIチップでは事実上の必須部品。
【3】Chipletアーキテクチャの考え方
Chipletとは、機能ごとに分割した小さなダイ(チップ)を、
高密度パッケージで接続して1システムとして動かす設計思想。
分割例:
・演算ダイ
・I/Oダイ
・メモリダイ
・アクセラレータダイ
Chipletのメリット
・歩留まり向上(小ダイ化)
・プロセス最適化(演算は先端、I/Oは成熟)
・設計の再利用性
・開発期間短縮
Chipletの課題
・接続遅延
・電力消費
・パッケージ難易度
・テスト複雑化
→ パッケージ技術が性能を左右。
【4】2.5D パッケージ(Interposer技術)
2.5Dは、複数チップをシリコンインターポーザ上に並べて接続する構造。
代表例:
・CoWoS(TSMC)
・EMIB(Intel)
・I-Cube(Samsung)
特徴:
・超微細配線
・高速・低遅延
・HBMとの親和性が高い
AIチップの主流構造。
【5】3D パッケージ(TSV積層)
3Dは、チップ同士を垂直方向に積層し、TSVで直接接続する方式。
特徴:
・最短配線
・最高帯域
・最小レイテンシ
一方で:
・放熱が極めて難しい
・信頼性評価が厳しい
・歩留まりリスクが高い
→ 限定用途・研究段階が多い。
【6】HBM / Chiplet時代の最大課題
●(1)歩留まりとコスト
・複数ダイを1パッケージに集約
・どれか1つ不良 → 全体不良
Known Good Die(KGD)が必須。
●(2)熱設計
・HBM+演算ダイで高熱密度
・局所ホットスポット発生
→ 放熱構造と配置設計が性能を決める。
●(3)SI / PI / EMIの複雑化
・チップ間インターフェース高速化
・電源電流増大
→ パッケージCo-designが前提。
【7】最新トレンド
・HBM3 / HBM3E / HBM4 への進化
・インターポーザ大型化
・有機インターポーザの研究
・Chiplet標準化(UCIe)
・光I/Oとの融合(将来)
【8】まとめ(6-7)
・AI時代は「演算」より「接続」が重要
・HBMは帯域ボトルネックを解消する鍵
・Chipletはコストと歩留まりの現実解
・2.5Dが主流、3Dは高難度
・パッケージ技術がシステム性能を決める
【理解チェック】
1.なぜAIチップでHBMが必須になったのか?
2.Chiplet化が歩留まり改善につながる理由は?
3.2.5Dと3Dパッケージの最大の違いは何か?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。
