■ロボットでは軽量化が非常に重要になる
ロボットにとって重量は大きな問題である。
腕が1kg重くなれば、その重量を支えるモーターも大きくする必要がある。
モーターが大きくなる。
電力が増える。
バッテリーが大きくなる。
さらに重量が増える。
つまり、
重量増加が連鎖する。
そのため熱対策でも、
大きな銅板。
厚いヒートシンク。
を簡単に追加できない。
■軽量化と放熱は衝突する
熱対策では、一般に金属量を増やせば熱を広げやすくなる。
しかしロボットでは、
金属を増やすと重くなる。
そこで、
●薄い金属箔
●グラファイト
●アルミ
●構造体との一体化
などによって、重量増加を抑えながら熱を逃がす必要がある。
つまり、
W当たりの冷却性能だけでなく、
g当たりの熱性能という考え方も重要になる。
■人と接するロボットでは表面温度も重要になる
協働ロボット。
サービスロボット。
ヒューマノイド。
これらは人の近くで動く。
そのため筐体表面が高温になると、
●不快
●やけど
●安全性
の問題につながる。
つまり金属フレームへ熱を逃がせばよいわけではない。
人が触る場所へ熱を集中させてはいけない。
■熱を逃がす場所を選ぶ必要がある
例えば、
モーターの熱をフレームへ逃がす。
しかしそのフレームを人が握る。
これでは問題になる。
そこで、
●人が触らない面
●大きな金属面
●背面
●内部放熱部
へ熱を誘導する。
つまりロボットでは、
熱をどこへ逃がすか
まで設計する必要がある。
■防水・防塵と空冷は相性が悪い
工場。
屋外。
物流。
清掃。
こうした環境で使うロボットには、
防水・防塵
が必要になる。
しかし強制空冷では、外気を取り込む必要がある。
外気を入れれば、
●ホコリ
●水
●油
●ミスト
が侵入する可能性がある。
つまり、
密閉したい。
でも熱は逃がしたい。
という矛盾が生まれる。
■密閉型ロボットでは筐体放熱が重要になる
筐体を密閉する場合、
内部の熱を筐体へ伝え、
筐体表面から外へ逃がす必要がある。
例えば、
発熱部品
↓
TIM
↓
内部フレーム
↓
外装
という熱経路を作る。
ここでは、
●TIM
●グラファイト
●金属箔
●熱伝導性粘着材
などが重要になる。
■防水ではシール材も必要になる
ロボットには、
関節。
カバー。
コネクター。
センサー窓。
など多くの開口部がある。
ここには、
●ガスケット
●発泡シール
●防水テープ
などが使われる。
つまりロボットでは、熱+防水という複合課題が生まれる。
■シール材が熱を閉じ込める場合もある
防水性能を高めるために、筐体を完全に密閉するとする。
すると内部で発生した熱が外へ逃げにくくなる。
つまり、
防水性を上げるほど熱対策が難しくなる
場合がある。
そのため、
●シール
●筐体放熱
●熱拡散
を一体で考える必要がある。
■ロボットでは振動も大きい
モーター。
減速機。
歩行。
走行。
これらによって振動が発生する。
熱対策部材は、
●振動
●温度変化
●繰り返し動作
を同時に受ける。
そのため、
TIMがずれる。
粘着材が剥がれる。
薄膜が疲労する。
可能性がある。
つまりロボット向け部材には、熱性能+機械耐久性が必要になる。
■粘着材は固定と振動吸収を兼ねる
ロボット内部では、
- センサー
- フィルム
- 放熱材
- 絶縁材
を固定するために粘着材が使われる。
柔軟な粘着層なら、振動を吸収できる場合もある。
一方、高温になるとクリープする可能性がある。
つまり、
固定できるだけではなく、高温・振動下でも位置を維持できることが重要になる。
■絶縁も重要になる
ロボットでは、
●高電圧バッテリー
●モータードライバー
●電源
●金属フレーム
が近接する。
そのため、
●絶縁フィルム
●絶縁シート
●絶縁性TIM
が必要になる。
ここでも、
熱は通したい。
電気は止めたい。
という課題がある。
■高電圧化すると絶縁要求も上がる
ロボットの高出力化が進めば、電源電圧を上げる可能性もある。
電圧を上げれば、同じ電力でも電流を減らせる。
一方で、
絶縁距離
や、
絶縁耐力
への要求が高くなる。
つまりロボットの高性能化は、熱だけでなく絶縁設計も難しくする。
■熱とEMIも同時に存在する
ロボットでは、
モーター。
インバーター。
高速通信。
AI基板。
が同じ筐体に入る。
そのためEMI対策も重要になる。
例えば銅箔をEMIシールドとして使う。
しかし銅箔は熱も伝える。
つまり一つの金属箔が、
ノイズ対策と、熱対策の両方へ関係する可能性がある。
■EMI材を追加すると熱経路も変わる
シールド材。
導電テープ。
金属箔。
これらを追加すると、
熱が別の場所へ流れる場合がある。
逆に放熱用の金属箔が、電気的な結合を作る可能性もある。
つまり、熱とノイズは別々に設計できない 場合がある。
■ロボットでは複合機能部材との相性がよい
ロボット内部のスペースは限られている。
そのため、
絶縁フィルム。
放熱材。
EMI材。
粘着材。
を別々に配置すると、部品点数が増える。
用途によっては、
一部材へ複数機能を持たせる
価値が大きい。
例えば、
グラファイト
+
絶縁フィルム
+
粘着材
という構造である。
■一体化すると組立工程を減らせる
顧客が、
絶縁材を貼る。
グラファイトを貼る。
固定テープを貼る。
という3工程を行っている場合、
あらかじめ一体化すれば、
一回の貼付
へ減らせる可能性がある。
ロボットは部品点数が多いため、工程削減の価値が大きい。
■ただし柔軟性を失わないことが重要
ロボットの可動部に使う場合、
積層しすぎると部材が硬くなる。
すると、
●曲がらない
●剥がれる
●応力が集中する
可能性がある。
つまり、
多機能化 と、 柔軟性 のバランスが必要になる。
■自動化機器自身も自動化して作られる
ロボット・自動化機器の生産数量が増えれば、その組立も自動化したくなる。
そこで、
●絶縁フィルム
●TIM
●EMI材
●粘着部材
●シール材
をリール供給し、
自動剥離。
自動吸着。
自動貼付。 する。
つまりロボット市場は、
自動化される側であると同時に、
自動化で作られる側 でもある。
■リール供給との相性がよい部材が多い
ロボット内部には、小型・異形のフィルム部材が多い。
これらを、
キャリア上へ一定ピッチで配置し、
リール状態で供給する。
そうすれば、設備へ直接投入しやすい。
つまり加工会社の価値は、部材を切るだけでなく、
顧客の自動設備へそのまま投入できる形にすることへ広がる。
■画像認識しやすい形状も必要になる
自動貼付では、カメラが部材を認識する。
しかし、
透明フィルム。
黒いグラファイト。
光沢金属。
などは、画像認識が難しい場合がある。
そのため、
●切り欠き
●認識穴
●非対称形状
●マーク
を設けることもある。
つまり、
自動化しやすい形状そのものが製品設計の一部になる。
■ロボットは温度によって位置精度も変わる
精密ロボットでは、
熱による寸法変化が位置精度へ影響する可能性がある。
アーム。
フレーム。
モーター。
減速機。
これらが温まれば、わずかに寸法が変わる。
工作機械や半導体製造装置ほど極端でなくても、
高精度用途では無視できない場合がある。
つまり、
ロボットの熱問題は、故障防止だけではなく位置精度の問題でもある。
■暖機運転が必要になる場合がある
起動直後と、長時間運転後で機体温度が違う。
すると、
●摩擦
●寸法
●センサー状態
も変わる可能性がある。
そのため精密用途では、
一定時間運転して温度を安定させてから使用する考え方もある。
将来的には、
AIによって温度状態を予測し、補正することも考えられる。
■AI制御による熱管理
ロボットは、自分がこれから何をするかを知っている。
例えば、
重い荷物を持つ。
高速歩行する。
長時間停止する。
急速充電する。
これらの動作予定が分かれば、
発熱もある程度予測できる。
そこで、
高負荷動作の前に冷却する。
負荷を別モーターへ分散する。
AI演算負荷を下げる。
といった制御ができる可能性がある。
■冷却電力は稼働時間にも影響する
バッテリー駆動ロボットでは、
ファン。
ポンプ。
冷却装置。
もバッテリーを消費する。
つまり冷却電力が増えれば、
動ける時間が短くなる。
そのためロボットでは、冷却能力だけでなく、冷却に何W使うかも重要になる。
■熱を抑えればバッテリーを小さくできる可能性もある
冷却電力を減らす。
モーター効率を上げる。
AI演算効率を上げる。
これらによって総消費電力を減らせれば、
必要なバッテリー容量も小さくできる可能性がある。
つまり熱設計は、バッテリー重量にも間接的に影響する。
■人型ロボットでは熱問題がさらに難しくなる
ヒューマノイドでは、
頭。
胴体。
腕。
脚。
関節。
それぞれに、
●モーター
●センサー
●配線
が存在する。
さらに胴体には、
●AIコンピューター
●バッテリー
●電源
が集中しやすい。
つまり、
人間サイズの限られた空間に多数の熱源が入る。
しかも人間と同じ空間で使う。
静かにしたい。
軽くしたい。
表面を熱くしたくない。
これは非常に厳しい熱条件である。
■将来は「熱設計された骨格」が重要になる可能性がある
ロボットのフレームや骨格を、
単に荷重を支える構造としてだけでなく、
熱を運ぶ構造
として設計する。
例えば、
モーターの熱をアームへ流す。
AI基板の熱を背面フレームへ流す。
バッテリー熱を人が触らない部分へ逃がす。
つまり、構造設計と熱設計を一体化する 方向である。
■研究者視点 : ロボットの熱問題は「複数熱源・移動・重量」の問題
AIサーバーは基本的に固定されている。
ロボットは動く。
しかも、
●発熱量が時間で変わる
●姿勢が変わる
●熱源が分散している
●重量制約がある
●バッテリー制約がある
という特徴がある。
そのため、
最大発熱量だけを見るのではなく、
動作シナリオ全体で熱を考える必要がある。
■現場視点 : 熱い場所を見つけるだけでは足りない
モーターが熱い。
GPUが熱い。
バッテリーが熱い。
それぞれ個別に冷却部材を追加すると、
重量が増える。
部品が増える。
配線が複雑になる。
そのためロボットでは、熱源ごとの対策だけでなく、
機体全体で熱をどう分散するかを考える必要がある。
■設計時に確認すべきこと
ロボット・自動化機器の熱対策では、少なくとも次を確認する必要がある。
モーター・駆動部
●最大トルク時の発熱はどの程度か
●保持時にも発熱するか
●フレームへ熱を逃がせるか
●センサーや減速機へ熱が影響しないか
AI・電子回路
●GPU・CPUの発熱量はどの程度か
●ホットスポットはどこか
●空冷で成立するか
●グラファイトやベイパーチャンバーが必要か
●金属フレームを活用できるか
バッテリー
●高負荷時の発熱はどの程度か
●AI基板やモーター熱との干渉はないか
●急速充電時の温度はどうか
●必要な絶縁・断熱は何か
軽量化
●冷却部品の重量は許容できるか
●構造部材を熱経路へ使えるか
●金属板を薄膜材へ置き換えられるか
●グラファイトを利用できるか
可動部
●曲げを繰り返すか
●熱伝導材は屈曲に耐えられるか
●粘着材は振動でずれないか
●配線発熱は問題ないか
絶縁・EMI
●高電圧部はどこか
●金属フレームとの絶縁は十分か
●EMIシールドと熱経路が干渉しないか
●金属箔を複数機能へ利用できるか
防水・防塵
●密閉が必要か
●密閉後の熱をどこへ逃がすか
●シール材は高温・振動に耐えられるか
●外装表面温度は安全か
量産・自動化
●小型部材をリール供給できるか
●自動剥離・自動貼付できるか
●画像認識しやすい形状か
●複数機能材を一体化できるか
つまりロボットでは、
熱・軽量・絶縁・防水・振動・自動化 を同時に考える必要がある。
■OTIS視点 : ロボットはOTISの加工技術と非常に相性がよい
OTISは、
ロボット本体メーカーではない。
モーターメーカーでもない。
AIチップメーカーでもない。
バッテリーメーカーでもない。
しかしロボットの内部には、
●TIM
●放熱シート
●グラファイト
●銅箔
●アルミ箔
●絶縁フィルム
●EMI材
●発泡体
●粘着材
●シール材
●センサー固定材
など、多数の薄膜機能部材が存在する。
しかもロボットでは、
熱+軽量
熱+絶縁
熱+EMI
熱+防水
熱+振動
熱+自動化 という複合課題が多い。
ここはOTISの強みと合いやすい。
■OTISが狙うべき場所
完成したロボットそのものではない。
AIチップそのものでもない。
モーターそのものでもない。
狙うべきなのは、
熱源と構造体の間
電子部品と金属筐体の間
センサーと固定部の間
に存在する機能部材である。
例えば、
●モーターと金属フレーム間のTIM
●AI基板周辺のグラファイト
●パワー半導体向け絶縁放熱部材
●カメラ・LiDAR周辺放熱部材
●EMI+放熱用金属箔
●バッテリー周辺絶縁部材
●防水シール材
●センサー固定用薄膜粘着材
●可動部向け薄膜機能材 である。
■「部材を追加する」のではなく、「一つの部材に複数機能を持たせる」
ロボットは軽量化が重要である。
部材を増やせば、
重量。
厚み。
組立工程。
も増える。
そこで、
グラファイト
+
絶縁材
+
粘着材
あるいは、
銅箔
+
EMI機能
+
放熱機能
など、
一つの部材に複数機能を持たせる
考え方と相性がよい。
これはOTISが材料メーカーと協業することで提案できる領域である。
■ロボット向けでは「軽い加工提案」が価値になる
熱性能だけなら、厚い銅板を使えばよい場面もある。
しかしロボットでは、
何g増えるか
が重要になる。
そこで、
●必要部分だけ金属箔を配置する
●部分ラミネートする
●グラファイトを必要形状へ加工する
●粘着材を必要部分だけ配置する
ことで、不要な材料を減らす。
つまり精密加工は、
小型化だけでなく、
軽量化にも貢献できる。
■自動化設備メーカーとの連携も重要になる
ロボットメーカーへ部材を納入するとき、
単なるバラ部品ではなく、
自動機で貼れるリール部材
として提案できれば価値が高くなる。
OTISが部材を作る。
設備メーカーが貼付設備を作る。
顧客へ、
部材+設備
として提案する。
これはロボット・自動化市場と非常に相性のよい考え方である。
■OTISでできること
OTISでは、
●TIM加工
●放熱シート加工
●グラファイト加工
●銅箔加工
●アルミ箔加工
●絶縁フィルム加工
●EMI材加工
●発泡体加工
●粘着材加工
●シール材加工
●センサー固定部材加工
●高精度打ち抜き
●微細加工
●薄膜加工
●高精度ラミネート
●異種材料積層
●部分ラミネート
●ハーフカット
●リール・ツー・リール加工
●自動貼付向け供給形態
●複数機能材の一体化
●画像検査
●量産安定化
などを通じて、
ロボット内部の機能材料を、軽量・薄型・自動組立可能な部材へ変える
ことに貢献できる。
■OTISの専門外
OTISは、
●ロボット本体設計
●モーター設計
●減速機設計
●AIアルゴリズム開発
●GPU設計
●バッテリーセル開発
●ロボット全体の熱解析
●CFD専業解析
を専門とする会社ではない。
ただし、
●ロボットメーカー
●モーターメーカー
●半導体メーカー
●材料メーカー
●バッテリーメーカー
●自動化設備メーカー
と連携し、
熱・絶縁・固定・EMI・シールを担う薄膜部材を量産成立させる
領域では貢献できる。
■この技術が重要になる市場
★★★★★ ヒューマノイドロボット
★★★★★ 産業用ロボット
★★★★★ 協働ロボット
★★★★★ 自律搬送ロボット・AMR
★★★★★ AIロボット
★★★★☆ 医療・介護ロボット
★★★★☆ ドローン
★★★★☆ 自動化設備
★★★★☆ エッジAI機器
■まとめ
ロボットの熱対策は、「冷却部品を追加する」だけでは成立しない
次世代ロボットでは、
モーター。
AI演算。
バッテリー。
電源。
センサー。
通信。
多数の熱源が狭い機体へ入る。
しかも、
軽くしたい。
小さくしたい。
静かにしたい。
防水したい。
長時間動かしたい。
人が触っても熱くしたくない。
という要求がある。
だからロボットの熱対策では、
大きなヒートシンクを追加すればよい とはならない。
既存のフレームを熱経路として使う。
グラファイトで熱を広げる。
金属箔で熱を必要な方向へ導く。
TIMで界面をつなぐ。
絶縁材で電気を止める。
シール材で防水する。
EMI材でノイズを抑える。
そして必要なら、複数機能を一つの薄い部材へまとめる。
つまりロボットでは、熱対策部品を増やす のではなく、
機体そのものを熱対策構造へ変える という発想が重要になる。
そして量産では、その部材を、
薄く。
軽く。
精度よく。
リールで供給し。
自動で貼れる。
状態へする必要がある。
OTISが狙うべきなのは、ロボットそのものではない。
その内部に大量に存在する、
熱・絶縁・EMI・固定・防水・薄膜・軽量化・自動化
という共通課題である。
ロボットが人間に近づくほど、
AI性能は高くなる。
モーター数は増える。
センサーも増える。
バッテリーも大きくなる。
しかし身体は大きくしたくない。
だから最後に残る課題の一つが、
「この小さな身体の中で、熱をどこへ逃がすのか」なのである。
そして、その答えを支えるのは、巨大な冷却装置だけではない。
わずか数十μmから数mmの薄い機能部材 なのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません


