【1】High NA EUVとは何か
EUV(Extreme Ultraviolet)露光は、7nm世代以降の微細化を支える核心技術だが、
さらなる高解像度を得るために導入されるのが High NA EUV(開口数NA=0.55) である。
従来EUV(NA=0.33)に比べて、
● 解像度の向上(約1.7倍)
● パターニング回数削減
● 2nm世代以降のラインエッジ粗さの低減 など、大きな改善効果が期待されている。
High NA EUVは、EUV 2.0 とも呼ばれる次世代露光技術である。
【2】なぜHigh NAが必要なのか
微細化における最大の課題は以下:
● それ以上の線幅が物理的に描けない
● ラインエッジ粗さ(LER)が影響して特性が不安定になる
● Multi-patterningによる工程増加・コスト増
● 光学限界(解像度 = λ / (2 NA))
EUVの波長は 13.5nm のまま変えられないため、
解像度を改善する唯一の手段が「NAを上げる」ことになる。
【3】High NA EUVの特徴
●(1)解像度の向上
従来NA=0.33 → High NA=0.55 により
約1.7倍の解像度向上 が得られる。
これにより、2nm / 1.4nm世代で必要なライン幅を1回の露光で描画できる可能性が高まる。
●(2)Multi-patterningの削減
従来EUVでは、2回・3回のEUV露光が必要な場合があった。
High NA EUVでは 1回で描けるパターンの範囲が拡大 するため、
・ 工程削減(コスト・時間改善)
・ マスク枚数減
・ 歩留まり改善 に直結する。
●(3)アナモルフィック光学系の採用
High NA EUVは大口径光学系の制約により、
・ 垂直方向と水平方向の縮尺が異なる「アナモルフィック写像」 を採用している。
これにより、
・ 解像度を最大化
・ 露光範囲は縦長に
・ マスクデザインに新ルールが必要 という特徴がある。
【4】High NA EUV固有の課題
High NAは性能向上の反面、以下の技術課題が存在する。
●(1)マスクブラー(Mask Blur)
解像度向上に伴い、
・ マスク層の吸収
・ 多層反射の広がり
・ 散乱光 などによる パターンのにじみ(ブラー) が顕著になる。
特に微細パターンの安定性に影響するため、マスク材料の改善が求められている。
●(2)スループット(生産性)の低下
解像度は上がるが、露光範囲が小さくなるため、
・ 1ショットで描ける領域が狭い
・ スキャン速度が制約される
→ 装置1台あたりの処理枚数が低下する。
これを補うため、ASMLは
・ レーザー出力向上
・ 光源安定化
・ スキャナー高速化 などの対策を進めている。
●(3)レジストの要求性能がさらに厳しくなる
ラインエッジ粗さ(LER)を抑えるため、
・ 感度
・ 毒性
・ 低揮発性
・ パターン安定性 といった条件を満たす新レジストが必要となる。
特に 2nm世代では 「確率的欠陥(Stochastic Defect)」 が無視できなくなり、
EUVプロセスの最大課題となっている。
【5】主要メーカーのHigh NA EUV導入状況
● Intel
2025年頃に世界初のHigh NA EUV導入を予定。
Intel 18A以降で本格採用。
● TSMC
初期採用は慎重。N2世代は従来EUV主体、N2Pで部分採用の可能性。
● Samsung
GAA × High NAの組み合わせを積極推進。
ただし量産導入スケジュールは未公表。
導入スピードは以下の優先順位になる見込みか:
Intel > Samsung > TSMC
【6】High NA EUVが半導体業界に与えるインパクト
・ 2nm / 1.4nm世代以降の生産性を確保
・ Multi-patterning削減によるコスト低減
・ パターンの精度向上により電気特性が安定
・ FinFET→GAA移行を支える光学基盤
つまり ポストFinFET時代の露光技術の核といえる。
【7】まとめ(5-4)
・ High NA EUVはNA=0.55の次世代露光技術
・ 解像度が大幅向上し、微細化の継続に不可欠
・ 露光回数を減らし、工程・マスク・コストを削減
・ ただしマスクブラー・スループット・レジストなど課題も多い
【理解チェック】
1.High NA EUVが必要とされる理由は何ですか?
2.アナモルフィック光学系とはどのような特徴を持つか説明してください。
3.High NA EUV特有の課題を2つ挙げてください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



