TECH COLUMN 技術コラム

5章:最先端プロセス技術
5-12. AIチッププロセスの特徴(高電流・高密度・高熱)

材料・加工技術

公開日:

【1】なぜAIチップはプロセス要件が異常に厳しいのか

GPU・TPU・AIアクセラレータは、
従来のロジックとは桁違いの負荷がかかる。

求められる要件:

 ・大量の演算ユニット(MAC)を同時動作

 ・超高電流密度(10 MA/cm²級)

 ・配線の過密化(層数増加)

 ・電力密度(W/mm²)の急上昇

 ・巨大ダイサイズ(H100は814mm²)

その結果、熱・電流・信頼性 がプロセスの最重要テーマになる。

AIチップは「微細化技術 × 電力制御技術 × パッケージ技術」の総合格闘技。

【2】配線密度の限界に挑む(BEOL:多層配線)

AIチップはロジック回路よりも、
配線の方がボトルネック になりやすい。

● 課題

 ・配線抵抗の増大(Cu → Ru/Coなど新材料へ移行)

 ・RC遅延の増加(Low-kの限界、Ultra Low-kの脆弱化)

 ・多層化の限界(12層 → 15層 → 20層)

 ・熱による配線の劣化(Electromigration)

● 最新の対応策

 ・バリアレス金属(Ru、Mo、Co)

 ・ハイブリッドLow-k材料

 ・高アスペクト比対応のALDバリア

 ・BEOLでの新ALD技術の採用加速

AI時代は配線材料の時代と言われるほど重要になっている。

【3】電力密度(Power Density)の急上昇

AIチップはサーバー1枚で数百Wを使う。その電力が 数百mm²のダイに集中 する。

● 課題

 ・局所ホットスポット

 ・Thermo-mechanical stress(熱応力)

 ・パッケージから外部への放熱経路の限界

 ・電力供給(PDN)の容量不足

● プロセス側の対策

 ・Metal Stackの最適化

 ・厚銅配線(Top Metal)

 ・TSV・Micro-bumpによる3D放熱

 ・バックサイド電力供給(Backside Power Delivery Network)

特にIntel・TSMCは Backside PDN を導入し、
電源ラインを裏面から供給して抵抗低減を図っている。

【4】動作電流の増大と信頼性(EM / TDDB)

AIチップは巨大な電流を扱うため、信頼性故障が顕著になる。

代表的な信頼性問題:

● Electromigration(EM)

 ・電流によって金属原子が移動し、断線・空洞化を引き起こす現象

 ・特に配線が細く、電流が大きいAIチップでは深刻

● TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)

 ・絶縁膜に電界がかかり続けることで絶縁性が徐々に劣化

 ・High-k使用領域で顕著

● BTI(Bias Temperature Instability)

 ・高温下でのトランジスタのVthシフト

 ・AIチップの高発熱と組み合わせて問題が増加

AIチップは信頼性と戦うデバイスといえる。

【5】巨大ダイサイズによる歩留まり問題

AIチップは800mm²級の「巨大ダイ」を製造する。
しかし、ウェハ上の欠陥が1つでも当たると不良になる。

歩留まりが非常に悪くなる

そのため、

 ・チップレット化

 ・マルチダイパッケージ

 ・HBMとのStack構造(CoWoS、InFO、FO-PLP)

が必須になっている。

TSMC・NVIDIAが共に成長したのは、先端プロセス × パッケージ(CoWoS) の組み合わせによるもの。

【6】AIチップ × 先端パッケージングの関係性

AIチップはパッケージなしでは成立しない。

● チップレット化の利点

 ・不良時の廃棄物が減る(歩留まり改善)

 ・大規模チップを小分割して製造可能

 ・熱密度を分散

 ・HBM(高帯域メモリ)を近接配置できる

● 代表的技術

 ・TSMC CoWoS

 ・Samsung I-Cube

 ・Intel EMIB / Foveros

 ・FO-WLP(Fan-out)

AIチップは プロセスだけでなくパッケージ技術が性能を決める時代

【7】最新トレンド(AIチッププロセスの未来)

● Backside Power Delivery(BSPDN)
→ 電源を裏面から供給し、配線抵抗を大幅に削減

● PowerVia(Intel)
→ 配線混雑を解消しクロック周波数を向上

● 3Dロジック × HBM統合
→ メモリ帯域のボトルネックを解消

● AIアクセラレータ向け専用プロセス
→ 特定領域のみ高耐熱化、局所材料変更

● 先端放熱材料(グラファイト、TIM進化、マイクロ液冷)
→ 熱問題解決が最大テーマ

AIチップ製造は、「微細化 × 電力供給 × 熱管理」の三位一体が鍵。

【8】まとめ(5-12)

 ・AIチップは高電流・高密度・高熱という過酷な条件で動作

 ・配線抵抗の増大、RC遅延、EMが大きな課題

 ・熱密度増大によりロジックより熱設計が重要

 ・巨大ダイの歩留まり低下 → チップレット化が必須

 ・Backside PDNや先端パッケージが性能を決める

 ・AIプロセスはプロセス・配線・パッケージが融合した領域

【理解チェック】

1.AIチップで配線がボトルネックになる理由は?

2.Backside Power Deliveryが重要な理由を説明せよ。

3.EM(エレクトロマイグレーション)がAIチップで深刻な理由は?

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

 

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