【1】2nm以降、微細化は物理限界との戦いへ
半導体の微細化は、
「寸法を縮めれば性能が上がる時代」→「物理を騙しながら進む時代」 に突入している。
2nm以降で顕著になる問題は:
・量子トンネル電流の急増
・ゲート制御の弱体化(Electrostaticsの限界)
・配線抵抗の急上昇(R増加→RC遅延悪化)
・材料の信頼性低下(ULKの脆化、CuのEM劣化)
・EUV解像限界(波長13.5nmの壁)
つまり、スケーリングの限界が現実的な制約として立ちはだかる。
【2】EUVの物理限界とHigh-NAのゆくえ
EUVは半導体を支える最重要技術だが、限界が見えてきている。
主なボトルネック:
・マスクブラー(Mask Blur)
・反射ミラーの多層膜損失
・露光時の確率ノイズ(Stochastic Defects)
・ショットノイズによる寸法揺らぎ
High-NA(NA=0.55)は解像度を押し上げるが、
これが事実上の最後の伸びしろと言われている。
EUVを超える候補は:
・短波長EUV(6.x nm)
・EUV+電子ビーム併用(ハイブリッド)
・次世代マスク技術(Phase Shift EUV)
ただし、どれも実用化までは距離がある。
【3】微細化に代わる“3つの新パラダイム”
■(1)バックサイド配線(Backside Power Delivery)
配線遅延が限界に近い今、電源配線を裏側に移すという根本的構造改革が進む。
メリット:
・電源IR dropの大幅削減
・電源ノイズの減少
・表側配線の自由度向上
Intel(PowerVia)、TSMC、Samsungが覇権争い中。
■(2)トランジスタの3D化(CFET / 3D Sequential)
GAAの次は CFET(Complementary FET)。
・NMOSとPMOSを縦に積む
・トランジスタ間距離ゼロ
・面積削減と性能向上が同時に進む
さらにその先は:
・Monolithic 3D
・3D sequential integration
・Wafer-to-wafer bonding
平面の限界 → 垂直方向に逃げる時代へ。
■(3)チップレット × 高度パッケージ
微細化に頼らず性能を高める最有力解。
・CoWoS
・SoIC
・Foveros
・EMIB
・HBM4/5
従来の「巨大SoC」から、分割して積み合わせる構造(レゴモデル) が主流になる。
【4】材料の限界と“ポストSi材料”の台頭
寸法を縮めても物理が許さない領域に入ったため、
材料そのものをアップグレードする動き が加速。
主な候補:
・2D材料(MoS₂、WS₂、グラフェン)
・CNT(カーボンナノチューブFET)
・強誘電体トランジスタ(FeFET)
・次世代Low-k(エアギャップ、ナノポーラス)
・Cu→Ru/Co/Moへの置換
但し、最大の壁は:
・量産安定性
・信頼性(特にULK材料)
・既存装置との整合性
・コスト
材料工学が再び半導体進化の主役になっている。
【5】熱の壁(Thermal Wall)
AIチップ・GPUは電力密度が急上昇し、
熱によって性能が制限される時代 に突入。
必要となる技術:
・高熱伝導材料(グラファイト、ダイヤモンド)
・Direct Liquid Cooling
・Backside Cooling
・TSVによる熱逃がし
・TIMの進化(界面材の高性能化)
熱問題が解決しない限り、どれだけトランジスタを増やしても性能は伸びない。
【6】量子効果(Quantum Effects)の顕在化
原子スケール近くでは、
トランジスタが“統計の世界”になる。
例:
・トンネル電流
・Variability(ランダム性の急増)
・RTN(Random Telegraph Noise)
・デバイス寿命の揺らぎ
このため、物理シミュレーション × AI × 統計モデル を融合した設計が必須に。
【7】量子・光・脳型デバイスの並走
●(1)量子デバイス
誤り訂正が鍵。用途はまだ限定的。
●(2)シリコンフォトニクス
銅配線の限界を超える、光インターコネクトの本命。
AIデータセンターで急拡大。
●(3)ニューロモーフィック
脳型アーキテクチャ。
演算と記憶を同じ場所で行うため、低電力化が可能。
【8】まとめ:限界突破の時代へ
・微細化は物理限界と正面衝突
・EUVも数世代で限界に到達
・課題は「配線抵抗・電流密度・熱」
・解決手段は「3D化・チップレット化・材料進化」
・新パラダイム(量子・光・脳型)が同時進行
・半導体は縮める技術→積む・分ける・物理を変える技術へシフト
【理解チェック】
1.2nm以降で最も顕著になる物理的制約は?
2.High-NA EUVは何を解決し、何が限界となる?
3.CFET構造の利点を説明してください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



