【1】電気の流れとは何か
電気とは、電子の流れです。
電子が動くときに「電流」が生まれます。
電池や発電機は、電子を動かす押し出す力(電圧)を与えています。
【2】物質による違い
物質によって、電子がどのくらい自由に動けるかが異なります。
・導体:電子が自由に動ける。例:銅、銀、アルミニウム
・絶縁体:電子がほとんど動けない。例:ガラス、ゴム、紙
・半導体:条件によって電子の動き方が変わる。例:シリコン、ゲルマニウム
【3】エネルギーバンドの考え方
物質の中では、電子は「エネルギーの段(バンド)」を持っています。
電子がどのバンドにいるかで、電気が流れるかどうかが決まります。
・価電子帯(Valence Band):電子が通常いる場所
・伝導帯(Conduction Band):電子が自由に動ける場所
価電子帯と伝導帯の間には「バンドギャップ」という壁があります。
この壁が小さいほど、電子は動きやすくなります。
【4】導体・半導体・絶縁体の違い(バンドギャップの大きさ)
・導体:価電子帯と伝導帯が重なっている → 電子が自由に動ける
・半導体:小さなバンドギャップがある → 条件により電子が飛び越えられる
・絶縁体:大きなバンドギャップ → 電子が動けない
つまり、半導体は「温度や光によって電子がジャンプできる壁の高さ」を持つ物質です。
【5】電子と正孔の動き
電気の流れは、電子(マイナス)だけでなく「正孔(プラスの穴)」も関係します。
電子が右に動けば、左側に空席ができます。
この空席をプラスの粒子のように考えるのが「正孔(hole)」です。
・電子の流れ → 電流のマイナス方向
・正孔の流れ → 電流のプラス方向
この2つの動きが、半導体内の電流を形づくります。
【6】温度と導電性の関係
金属(導体)では、温度が上がると電子が邪魔され、電気が流れにくくなります。
一方、半導体では温度が上がると電子が励起されて動きやすくなり、電気が流れやすくなります。
つまり、導体と半導体では「温度と電気の関係」が逆になります。
【7】光と導電性の関係
光を当てると、電子が光エネルギーを受けて価電子帯から伝導帯へジャンプします。
これにより電流が流れる現象を「光導電効果」といいます。
この性質はカメラの撮像素子や光センサーなどに応用されています。
【8】電圧と導電性の関係
電圧を加えることで、電子や正孔の移動が加速され、電流が生まれます。
特定方向にしか流れないように設計したのが「ダイオード」です。
この制御性こそが、半導体の最大の価値です。
【9】まとめ
・電気は電子の流れ。
・導体・半導体・絶縁体は電子の動きやすさで分類される。
・半導体では温度・光・電圧によって電子の動きが変化する。
・この特性を利用して、スイッチ・センサー・トランジスタが作られている。
【理解チェック(3問)】
1.電気が流れるとはどういうことか?
2.半導体の導電性が変化する主な要因は?
3.半導体と導体の違いとして正しいものは?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



