ムーアの法則は「トランジスタ数は約2年ごとに倍増する」という経験則であり、この予測は半世紀以上にわたり半導体産業の指針となってきた。
トランジスタの微細化が進むことで、コンピュータはより速く、より小さく、より安くなり、スマートフォン、インターネット、AIといった新しい産業を生み出してきた。
しかし現在、この微細化の進化は物理的な限界に近づきつつある。
トランジスタのサイズはすでに数ナノメートルの領域に達し、電子の漏れや発熱、製造コストの急増といった問題が顕在化している。
これまでのように「小さくするだけ」で性能を向上させる時代は終わりに近づいていると言われている。
では、半導体の進化はここで止まるのだろうか。
答えは No である。
世界中の研究者や企業は、微細化の限界を超えるために、新しい材料、新しい構造、そして新しい計算原理の研究を進めている。
脳の仕組みを模倣したニューロモルフィック半導体、光を使って情報を伝えるフォトニクス、量子力学を利用した量子コンピュータなど、次世代の半導体技術はすでに動き始めている。
これからの半導体は、単なる微細化競争ではなく、構造・材料・システム全体の革新によって進化していく。
つまり半導体の未来は、「小さくする技術」から「新しい計算を生み出す技術」へと移りつつある。
この章では、ムーアの法則の限界を出発点に、次世代トランジスタ構造、新材料デバイス、ニューロモルフィック計算、光コンピューティング、量子コンピュータなど、半導体研究の最前線を概観する。未来のコンピュータはどのように進化するのか。そしてその技術が社会にどのような影響を与えるのかを見ていこう。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。


